人類未知のウイルスに怯えたコロナ禍。マスク一枚では防ぎきれない人の心に忍び寄る影、真っ暗な奈落の底へ堕ちて行く。 滅茶苦茶か破茶滅茶か。 全国で、全世界で、忘れ去られようとしているほんの少し前の出来事。 あの人とかあの子たちとか、一体どうなってしまったのだろうか。 描く程の事でもないというくらいの、ちっぽけなありふれた事件や事故。

芸能界から引退する事を決めた「藤圭子」へのインタビューだけで、不穏な幼少期、貧しさを恥じた子供時代が浮き彫りになる。 それは「・・・・・。」で、語られない事で読み手はその情景を思い浮かべてしまう。 なんと凄まじい暴力だったのか。なんといたたまれない気持ちであったのか。 「藤圭子」でなければ歌う事の出来ない曲であり、成功後の煌びやかな世界と、流し時代の侘しい世界が交差して行く。 真っ直ぐな深い夜の様な眼差しとあの歌声は、唯一無二。

理系の世界。理系と文系、学ぶ世界、進路云々ではなく脳からして違うのだなと読んだ。静かな世界をスイスイと泳ぐ先生の私生活、一体何があったのだろうか。文系の脳には不思議な余韻を残しました。

短編集。神さまという存在に囚われ、突き動かされる人の心。神さまが存在する、というその場所へ文字通り飛んで行く。呪文にしか聞こえない外国の言葉も、眩過ぎる装飾も、大きく奏でられる音楽も、心が何処かへぶっ飛んで行くに違いない。神さまにでも何かにでも縋りたい気持ちになることは多々あるだろう、そんな人の心の内側だった。育て辛い息子に苦労し疲弊する母親の絶望、もし知り合えたら「ちょっとわかるなあ」と言いたい。母親ならではの絶望。角田光代は長編で読みたいなと思った。

人類未知のウイルスに怯えたコロナ禍。マスク一枚では防ぎきれない人の心に忍び寄る影、真っ暗な奈落の底へ堕ちて行く。 滅茶苦茶か破茶滅茶か。 全国で、全世界で、忘れ去られようとしているほんの少し前の出来事。 あの人とかあの子たちとか、一体どうなってしまったのだろうか。 描く程の事でもないというくらいの、ちっぽけなありふれた事件や事故。