少し寂れた公園に昔からある（居る）カバのカバヒコ。人から人へ伝わる都市伝説の温かい魔法。幾つになっても人は大なり小なりつまづいてしまうものだから。カバヒコにそっと触れて自分に願うのだ、自分の回復を。真夏の炎天下には火傷してしまうような温度になり、真冬には深々と雪を積もらせ、カバヒコはそこに居てくれる。落書きも涙も全部受け止めて。遠い昔遊んだ公園の動物たちの触り心地まで思い出していた読書。わたしもカバヒコに抱きつきたい。

言葉を生業とする人の発する言葉はすごい。二十代の終わりに山本文緒という作家に出会えてウワーッと読み漁って、その先の人生のカタチを変えることになるくらい影響されたりした。一冊の本を手に取り読むことの必然さ、たくさんの本が並ぶ棚からその一冊に光を感じる不思議さを感じさせてくれた作家さんだ。装丁がとても素敵。生きなくちゃ。

少し寂れた公園に昔からある（居る）カバのカバヒコ。人から人へ伝わる都市伝説の温かい魔法。幾つになっても人は大なり小なりつまづいてしまうものだから。カバヒコにそっと触れて自分に願うのだ、自分の回復を。真夏の炎天下には火傷してしまうような温度になり、真冬には深々と雪を積もらせ、カバヒコはそこに居てくれる。落書きも涙も全部受け止めて。遠い昔遊んだ公園の動物たちの触り心地まで思い出していた読書。わたしもカバヒコに抱きつきたい。

東京のあらゆる場所で生きている人々の息遣いや感情の色が切り取られ、その人々が混ざり合い絡み合って東京という街を作り上げている、そんな印象を持った。短い文章でも濃い関係性であったり、ムズムズする余韻が面白く不思議な一冊に思えた。若く、文字通り若気の至りを読んだり、時が経ちその後を知れたり、遡って背景がわかったり。人を描きその人の内側まで滲ませてしまう描き方に引き込まれた。

エンディングノートなる物が書店で平積みされているのを横目で気にしながら、この一冊を手に取った私は心の中でこのテーマをかなり気にしているのだろう。終活を気にし出すにはまだ早いよと家族に諌められたが、常々断捨離もしているし、結局は身軽に生きたいのだ。物だけではなく頭の中や心の中も。すっきりとこの先を歩いて行きたいのだ。終活に関わる人たちが立ち止まって今一度自分を振り返り、また歩き出す。人は一度しか死ねない、から。色んな人生、様々な考え方感じ方を読んだ。

寂しいなあ、ダメだなあ、と独言。誰もが輝いて見えるそれに比べて自分は。鼓動が早くなり冷や汗をかく。食べられない眠れない。あれ、おかしいぞ、わたしうつかも。メンタルクリニックのドアを叩いた人たちのそれぞれの人生との向き合い方の短編集。誰にでも起こり得る心の不調、心の風邪とも表現されるうつ。適切な治療と周囲の理解が大切。決して弱いからではなく真面目に頑張ってしまうからこその症状。これは昔かかりつけの内科医から言われた温かい言葉のお守り。新しい環境に居る今こそ読めて良かった一冊。今日一日、明日一日、頑張ろう。

ひとりの女性の輪郭を読む。遺された夫、息子やその妻、兄姉、そして母の目線で。苦しい時も穏やかな時も生きて来た痕跡。静かに懐かしい文章が染み渡る。私自身も妻であり母であり、若かった娘であり幼子でもあった。それを淡々と通り過ぎて来た。何度も分岐点があり迷い選び流れて来た。同じ女性として道子さんを身近に感じ、つい感傷に耽る読書時間だった。