わたしの自在な語りで虚実がないまぜになる。作中作の主人公と作者がどうやって出会うのか楽しみにしていたが、後半は現実の会話が大半を占めオーエンブリックはフェイドアウト。それでも地球は回るという一種の諦念の中に芽生える希望、それは少し仏教に通ずるような気がする。

冒頭の石井光太事件の詳細がピークだった。ノンフィクションやルポの定義、そして問題点などを上げる。週刊誌について、分業制や新聞が母体にない自由さなどおもしろい部分はあったが、いかんせんだれがどの雑誌にうつってどうしたかがいっぱい書かれていて集中力が続かない。ケータイ小説や宮台真司までを持ち出して、まあたしかにノンフィクションっ気はあるけれど、それだったらぜんぶそうじゃん。

わたしの自在な語りで虚実がないまぜになる。作中作の主人公と作者がどうやって出会うのか楽しみにしていたが、後半は現実の会話が大半を占めオーエンブリックはフェイドアウト。それでも地球は回るという一種の諦念の中に芽生える希望、それは少し仏教に通ずるような気がする。

一人称小説をはじめて採用した人だとは知らなかった。冒頭から主人公の独白形式で、続きが気になってページを捲る手が止まらない。主人公の心理を細かく描写しているので臨場感があふれる。「こうした思案はほんの数秒のことであったから、わたしの返事は少しも遅れたわけではないと思う。」とか。ティータの駆け引きができない純朴さに奸智に長けた主人公も面食らう。手紙はどうなったのか最後の最後までひっぱるジェイムスはエンタメにも通じている。まったく難解ではなくおもしろかった。

続きが気になって一気読み。みんな怪しい。解説にもあるように、社会派としてのテーマが一番最後に出てくるのでそこは薄れてしまうがミステリ、エンタメとしてだけで一級品。

こんなもんを読んだせいで仕事を辞めてしまいました。脳天壊了！やるならいましかねえぜ！！さらば賃金奴隷。これからは自分の生活の主人になります。