前半の一人語りは退屈でしたが、後半に話が一個人から社会の中の個人になってきて、その主義主張も含めて楽しんで読めた。そして「何のために？」ってキーワードで色々と考えさせられた。とんでもないヤツが語っている奇抜な設定も、社会批判というか人類批判も、著者らしい文体も、全て良かったんだけど、テンポが悪くて話が長すぎるのが欠点だと思う。　「マットに手を添える」って表現は、言いたいことがあまりにもわかりすぎて凄い。こういう接し方、大いに心当たりがあります。

著者が「冒頭の一文って絶対に大事だと思う」と語っていたのを読んだことがあるのだが、本書の冒頭の一文は群を抜いて衝撃的だった。まさに「初っ端から殴りつけてくる感じ」であった。 廃校が決まった小学校での祭りを舞台にした連作短編なのですが、どの話も著者らしく人間の弱いところとそれに対処する様が生々しく描かれている。地方で生まれ育ち、田舎ならではの閉塞感を体験した人と、そうでない人ではこの物語の感じ方はきっと違うのだろうと思う。私は前者でかつ田舎を捨てて外に出たほうなので、心に響くものが多かった。良い一冊でした。

椎名誠のエッセイを読むのは久しぶりだ。酒にまつわる話なのだが、酒そのものよりも飲むシチュエーションについての語りが多く、その多くを共感をもって受け止める。 昔読んでいた(探検隊とか)が現在進行形であったのと違い、本書は過去を振り返って語っているものが多い。著者の歳を考えれば仕方がないことであるが、少し寂しく思う。 連載をまとめたものとは言え、同じような話が繰り返し出てくるのはいただけない。

その方向の良し悪しはあれど、「すれ違い、食い違う」話でした。毒多めで読後感はあまり良くありません。ハッピー・エンドよりの「スター誕生」が最後だったのが救い。短編集の収録順は重要ですね。 「あんたのためじゃない」とは、思った結果が出なかった自分自身への詭弁なのか、善行に見せかけての復讐なのか。 もしかすると本書に勝手に期待していて、思ったのと少し違って残念だなと感じた私のような読者に向けての一言なのかもしれない。 「商店街のマダムショップ～」なかなか味わい深い話で、続編というか長編が読みたくなります。

前半の一人語りは退屈でしたが、後半に話が一個人から社会の中の個人になってきて、その主義主張も含めて楽しんで読めた。そして「何のために？」ってキーワードで色々と考えさせられた。とんでもないヤツが語っている奇抜な設定も、社会批判というか人類批判も、著者らしい文体も、全て良かったんだけど、テンポが悪くて話が長すぎるのが欠点だと思う。　「マットに手を添える」って表現は、言いたいことがあまりにもわかりすぎて凄い。こういう接し方、大いに心当たりがあります。

新年一冊目は期待外れに終わりました。こじれた人間関係をゆっくりと解く、良く言えば安心の成功譚、悪く言えばお涙頂戴でご都合主義ないつもと同じパターン。今回はマンネリ対策で「王子様と人魚姫」というファンタジーめいた設定のミスリードを加えて少し趣向を変えてあります。これが下手な小細工って感じで私の好みには合いませんでした。連作短編の形を取っているせいで、話の掘り下げが浅いのも面白く感じない理由だと思います。「お探しもの～」等好きな作品もある作者なんだけど、そろそろ飽きてきた感じかなあ。