初老の夫婦、健一と智子。二十六歳で結婚の話が進む娘の真奈。この三人の視点で物語は進む。仲の良い家族のはずが、健一は役職定年を控え、施設にいる老母や自身の老後、娘の結婚費用などで鬱屈を抱える。不機嫌の度合いが増してゆくばかりの夫に、智子は心を開いてもらいたいが、思いの届かないことへストレスを募らせる。真奈もまた、婚約者・優吾の家庭の金銭感覚や生活スタイルの違いに戸惑いを感じ始めていた。描かれる三人の心情は、それぞれにすれ違ってゆき、家庭の形が壊れてゆくのがつらい。だからこそ引き込まれるように読み終えた。

まっすぐで生真面目な41歳の薫子と、ぶっきらぼうで口も悪いけれど料理の腕は確かで食を通して相手を思いやることが出来る29歳のせつな。薫子の弟・春彦が突然亡くなった。その少し前に薫子は夫から別れを切り出され離婚。どん底の精神状態にあった。弟は遺言書を残しており、そこには生前に付き合っていたせつなにも遺産分与することが記されていた。薫子は「カフネ」のボランティア活動を通してとせつなとの関係を深めていきながら、困難な状況を乗り越えてゆき、せつなもまた、その薫子に揺り動かさされ、孤独な心を解きほぐされてゆく。

高校2年生の山田が夏休みに交通事故で死んだ。同じクラスの二年E組の生徒は、クラスの中心だった人気者の山田の死に意気消沈していたが、担任が気分を変えるため席替えをしようと呼びかけると、スピーカーからは山田の声が聞こえはじめる。死んだ山田は教室のスピーカーに憑依したらしい。そこからクラスの仲間と死んだ山田の、声を通した交流が始まる。設定は突飛だけれど、生徒たちはこの状況を受け入れて、普通に山田との関係を深める。男子校らしいくだらない会話に興じ、青春小説らしい感動もある。その果てに山田の空虚な心境風景も現れる。

初老の夫婦、健一と智子。二十六歳で結婚の話が進む娘の真奈。この三人の視点で物語は進む。仲の良い家族のはずが、健一は役職定年を控え、施設にいる老母や自身の老後、娘の結婚費用などで鬱屈を抱える。不機嫌の度合いが増してゆくばかりの夫に、智子は心を開いてもらいたいが、思いの届かないことへストレスを募らせる。真奈もまた、婚約者・優吾の家庭の金銭感覚や生活スタイルの違いに戸惑いを感じ始めていた。描かれる三人の心情は、それぞれにすれ違ってゆき、家庭の形が壊れてゆくのがつらい。だからこそ引き込まれるように読み終えた。