この小説の語り手は、語りに語っていて気持ちいいほど。語り手が言うように、人間が本源的に持っているものも、人間が作り上げた社会の諸々の構造に糊塗されて見えなくなっている。そのような社会のありようを当然のことと思いこまされて窮屈に生きている。しかし、この語り手のような本源的な視点に立てば、いろいろなことが傲慢で滑稽に見えてくる。そんな中、この語り手が担当しているオス個体・尚成は、生殖にまつわる社会の意識のありようにはじかれながら生き延びるすべを模索してきたが、最新の生殖医療を知ることで活路を見出そうとする。

銀座を往来する人たちの、様々な人生の物語。その街を通り抜けてゆく王子。逃げた人魚を追い求めているらしいことからアンデルセンの童話『人魚姫』の王子という設定らしい。各短篇の主人公たちは、王子と接してその物語に思いをはせ、それぞれの人生の現在を振り替えつつ刺激を受け、それまでとは違った気づきに至る。

この小説の語り手は、語りに語っていて気持ちいいほど。語り手が言うように、人間が本源的に持っているものも、人間が作り上げた社会の諸々の構造に糊塗されて見えなくなっている。そのような社会のありようを当然のことと思いこまされて窮屈に生きている。しかし、この語り手のような本源的な視点に立てば、いろいろなことが傲慢で滑稽に見えてくる。そんな中、この語り手が担当しているオス個体・尚成は、生殖にまつわる社会の意識のありようにはじかれながら生き延びるすべを模索してきたが、最新の生殖医療を知ることで活路を見出そうとする。