久しぶりの伊良部シリーズです。本作では怒りなどの感情を上手く出せない人、真面目過ぎて追い込まれる人が多かったですね。マユミちゃんが大活躍です。

朝井さんの作品は、醒めた目で周りを見ているお前がダサいという展開が多いですが、今作ではそういった意識の反転は最後の一編のみです。徹底して、「変わらない日常を送る人」を書いたのだと思います。やり甲斐や正義のない仕事を続ける。子作りを避け続ける。逃れられない派遣切りの運命。作中では、死んで逃避する、という選択は登場しない。大人たちは、自分の「死にたい」という感情が嘘であることを知っている。子どもは読んでほしくないです。大人は共感して読めますが、子どもたちは将来への絶望を感じると思います。

江國さんの後書きが好きです。ひと袋のドロップという感じ。色や味は違っていても、成分はおなじで、大きさもまるさもだいたいおなじ。20ページ程度の短編たちは、濃密なようで、あっけなくて、不完全な人間もよう。

久しぶりの伊良部シリーズです。本作では怒りなどの感情を上手く出せない人、真面目過ぎて追い込まれる人が多かったですね。マユミちゃんが大活躍です。