自分が本当は何が好きで、何をしている時が幸せで、逆に何をするのが嫌で、何をされると悲しいのか。そういう心のセンサーは誰にでもあるのだけれど。子供の頃から色々なことを言い聞かされ、抑えつけられて生きているうちに、だんだん鈍ってしまって、本当の自分の気持ちがわからなくなる。でも、それは本当はなくしてはいけない大切なものだから。心の奥底で埃をかぶってしまっているそのセンサーをちゃんと綺麗にして感度良くしておかないといけないんだなってことに気付ける。素敵なエッセイでした。

少し不思議で少し怖い７つの短編集。ありふれた日常の中に、こっそり紛れ込んだ怪異とでも言うのか。現実離れしていながら、こんなことが起こっても不思議はないかも？と思わせる何かがある。平穏な毎日は退屈だけれど、不思議な現象は本で読むだけに限る、と思った。「沈黙」という作品が一番心に残った。誰かの悪意の標的にされて、ある日突然、爪はじきにあうかも知れない恐怖。人間とはこんなにも簡単に居場所をなくすものなんだと思うと、本当に恐ろしい。

魔法の鏡に向かうと、自分の思い描いた通りの美しい容姿になれる！そんな夢みたいなお話。色々条件があって、誰でもそうなれるわけではないし、なっても元に戻ってしまう人も多いらしい。コンプレックスは誰にでもあるけれど、見た目だけを綺麗にしても解決しない、という当たり前の結論に導かれる。最後は、心の美しさと顔の美しさ、どちらが上か？のような問題定義もあり、お伽噺のような設定でありながら、色々と考えさせられた。私はこの本をオーディブルで聞いたが、読む人が素晴らしくて引き込まれた。

義母だと思っていた人が、実は自分を産んでくれた母親だった。一体なぜ、母は、義母の振りをしていたのか？思いもよらぬ展開に、どんどん引き込まれていく。そういう理由だったのか…と最後は腑に落ちるが、まさかそんな話だったとは、と驚いてしまう。タイトルの意味も後でわかるが、まさに絶妙だなと感じる。この物語のテーマともいえる体外受精については私自身、偏見はなかったが、知らないことが多かったので、この本を読んで勉強になったなと思った。今までと見方が変わったような気がする。