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2024年6月の読書メーターまとめ

白いハエ
読んだ本
5
読んだページ
1528ページ
感想・レビュー
5
ナイス
26ナイス

2024年6月に読んだ本
5

2024年6月にナイスが最も多かった感想・レビュー

白いハエ
「判決」「火夫」「流刑地にて」等、王道の短編が並ぶ。新潮文庫にこの辺りを抑えた短編集はなかったらしい。カフカを読むのは何度目かわからないが、短編には無意識に拠って立つ何かが、ふと、底抜けになった時のような浮遊感を覚える。定式化したやり取りが逸脱し、転がり、どこへとも取れぬ方へと転がっていく。諦念か、意外か。中編・長編は、まさにその漏出の描写なのかとも思えるようになる。不条理そのものよりも、そのねっとりと糸を引くような人間のやり取りへ抱く不毛さが強い。この受け止めが正当かはともかく、今回はそう読んだ。
が「ナイス!」と言っています。

2024年6月の感想・レビュー一覧
5

白いハエ
仕事に詰まり、貧困に憂い、妻と喧嘩し、子供は泣き、風邪を引き、そんな呆れるほどの繰り返しの中、気がつけば「その」渦中にいる。病、死、名誉、転居、不和、などが、最初からあったかのようにそこにいる。それはやがて、作家の中で大きな不安の塊と凝って、生活と一体になっていく。日記という文学の形態の中からしか現れない、ドラスティックな語りだと思う。出版にあたって書き直された文章らしいが、サービスなどどこにもない。あるのは不安と憂慮ばかり。しかし、勇気づけられてやまないのはなぜなのか。
白いハエ
リアリスティックな文体で綴られる愛着のない結婚生活。緻密な語りゆえに、主人公のうみの人を好きになれない性向を自然のものと思えてしまう。周囲の恋愛事情は立派に見えて浮薄であり、人を愛さない・愛すことの恐怖を抱くふたりが逆説的に、誠実にすら見える。そこに生まれた息子アオの精神は、敷き詰められた時間の連なりの中に落ち込んでいく。災厄で区切られた成層。そこに刹那的な感傷を超えた、「家族」という形態を束ねる、新しい共生の姿があるのかも知れない。なにかわからないが、ラストの会食に感情を突き動かされながら、そう感じた。
白いハエ
通りすがるように置かれた断片たち、そういう印象を持った。例えば、道行く見知らぬ誰かにも、その道を往く自分と同じだけの文脈と時間が宿っている。歴史がある。だが、そんなことは何も知らず、何も言わずにすれ違う、その一点においてわれわれは断片的だ。それと似た呆気なさと、深みが潜んでいる。カフカの文章の断片における失望は昏い溜め息のようであり、紛れもなく孤独であるが、それを読むこちらの目を賦活してやまない。作家の没後百年にもなって名もなき読者が、彼の言葉に救われた気になっている。それもある意味、カフカ的だと思う。
が「ナイス!」と言っています。
白いハエ
「判決」「火夫」「流刑地にて」等、王道の短編が並ぶ。新潮文庫にこの辺りを抑えた短編集はなかったらしい。カフカを読むのは何度目かわからないが、短編には無意識に拠って立つ何かが、ふと、底抜けになった時のような浮遊感を覚える。定式化したやり取りが逸脱し、転がり、どこへとも取れぬ方へと転がっていく。諦念か、意外か。中編・長編は、まさにその漏出の描写なのかとも思えるようになる。不条理そのものよりも、そのねっとりと糸を引くような人間のやり取りへ抱く不毛さが強い。この受け止めが正当かはともかく、今回はそう読んだ。
が「ナイス!」と言っています。
白いハエ
温かな世界。人間社会に出ることを目的とした人外たちの集う学校、というコンセプトではあるが、ニンゲン礼賛というよりは、どうとでも傾く人間という自然のうちに、どう立つか、という側面にスポットがあたっているのだと今更思った。この巻では「立ち直り」が焦点にあり、そのプロセスの中で「人間嫌い」に一区切りがつくように読んだ。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2017/01/06(2734日経過)
記録初日
2017/01/06(2734日経過)
読んだ本
521冊(1日平均0.19冊)
読んだページ
158333ページ(1日平均57ページ)
感想・レビュー
495件(投稿率95.0%)
本棚
0棚
性別
現住所
埼玉県
外部サイト
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