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2024年3月の読書メーターまとめ

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2024年3月に読んだ本
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2024年3月のお気に入られ登録
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  • ホフちゃん
  • holiday2501

2024年3月にナイスが最も多かった感想・レビュー

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第二次大戦末期、戦争情報局日本班チーフとして日本の戦後統治ために国情調査を任された著者は、現地調査が不能な状況で、主に公開情報(オシント)から、文字(シギント)、映像(イミント)、在米日本人と対面(ヒュミント)を通して日米の文化を「恥の文化」と「罪の文化」に類型化した。本書は、単純な図式や文化相対主義的態度の中に自国の優越を仄めかす場面もあり批判も多い。が、情報の制限の中で言説分析を試み、「Aだが反面B」(菊<だが反面>刀)を繰り返す自らの調査記述に日本文化の二面性を見出す手順は参考になる(1946刊)。
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2024年3月にナイスが最も多かったつぶやき

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ル=グウィンの人類学的SFやファンタジーを堪能したあとは、彼女の父母が身を投じた人類学の基本に立ち戻る読書に移った先月だった。正月の帰省中に読んだデヴィッド・グレーバー『万物の黎明』が背中を押してくれたので、ブラッドベリ方面へのSF読書は後回し、、 2024年2月の読書メーター 読んだ本の数:29冊 読んだページ数:10446ページ ナイス数:373ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/743402/summary/monthly/2024/2

ル=グウィンの人類学的SFやファンタジーを堪能したあとは、彼女の父母が身を投じた人類学の基本に立ち戻る読書に移った先月だった。正月の帰省中に読んだデヴィッド・グレーバー『万物の黎明』が背中を押してくれたので、ブラッドベリ方面へのSF読書は後回し、、
2024年2月の読書メーター 読んだ本の数:29冊 読んだページ数:10446ページ ナイス数:373ナイス  ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/743402/summary/monthly/2024/2
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2024年3月の感想・レビュー一覧
31

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語り手と読み手が織りなす物語要素が広範で深い信仰を作り出してきた聖書には、人間が作り出す線状の時間意識や語り手が背負う歴史と世界観の共有が含まれる。が、他の宗教の語り手の世界観を複数知る人類学者が聖書を読むと、語り手と読み手が作り出す物語のエピソード的要素や時間系列、語り手の生きた世界の背景を超えた構造を通して、多数のパターンが夢のように蠢いていることがわかる。歴史と構造を背反させ、人間の認識を前提とした物語の排除が批判される本書だが、人間の認識次元では見えない宗教を生み出すヒトなる生き物の無意識に迫る。
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20章からなる構造人類学の大学教科書である本書は、未開社会を調査する学が現代西欧社会に生きる人々に自らの生活基盤である文化とコミュニケーションがどのように作られているのか、それは未開社会とどこが異なりどこが共通なのかという点を、文字や言葉だけでなく非言語事象を例に概説する。一方、ソシュール由来の二項関係にこだわる構造主義人類学を批判する著者は、その中間の不分明状態にコミュニケーションと文化の創出の鍵があると考え、パース記号論の3項関係を導入して他者を対象化し対立する人間中心の考えをヒト生命体から捉え直す。
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著者は本書でマリノフスキーとラドクリフ=ブラウンが創始したイギリス人類学を機能から構造へ転回する。エンジニア教育を受けた著者は、機能主義が疑似科学であり、英語という言語に染みつく思考習慣を未開社会に押し付けていると批判した。本書の議論の中心は時間概念であり、繰り返す時間と戻らない時間という西洋の時間概念を未開社会に適用して円環や直線に置き換えることは困難であると主張する。著者は祭祀や儀式の時間の扱いを構造化し、繰り返す「逆転」と連続する「対極間の振動」と捉え直して西洋のように同方向に向かわない時間を示す。
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欧米の人類学者が未開社会を調査する際、学としての客観性を担保するために数学由来の構造を方法として導入する一方、自らに根付くユダヤキリスト教的イデオロギーを相対化する課題を負ってきた。本書は聖書を長い年月をかけて編纂された文書と文献学的に捉え(改竄箇所の存在も指摘)、その内容について、創世記を神話と捉え、ソロモンの業績を歴史と神話両面で検討し、処女懐胎説を他の宗教の神話と比較して、その呪術的な側面を前景化する。林檎の木を「知識の木」と呼んだ創世記を読む著者は、生命の木への道を断つ「死の木」であると解釈する。
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社会人類学者の著者がレヴィ=ストロースの構造人類学を主にロジック面から明快に概説し批判する本書は、同じ構造人類学者である両者の姿勢の違いの方が際立つ構成になっている。著者はレヴィ=ストロースの業績を1「原始的分類論」、2「神話論」、3「親族組織論」に分類し、1では色や母音や料理に対する未開人の思考を三角形構造として概説し、2ではレヴィ=ストロース風に神話分析を試みる。が、3では交叉イトコ婚の婚姻体系で外婚制とインセスト・タブーをセットと捉える基本構造説に、タブーを単独テーマとして捉える著者の批判が際立つ。
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複数の構造間の関係による変化に注目すると、共時的な構造と通時的な歴史との排他的関係が統合できると考えた著者は、その舞台に複数の構造を持ちつつ構造間のコミュニケーションにおいて変化も記述可能な未開社会の島々を選んだ。本書は、性と婚姻に関わる多様な習俗や儀礼の資料が存在するポリネシア諸島について、船長らの記録から白人と異文化接触した18世紀の歴史記述を試みる。その際、ハワイで首を刈られたクックがハワイの外来神神話を通して神格化されたとする記述は、後に白人記述者の一神教概念の押し付けである批判され、論争になる。
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人類学者に根付く合理的な人間という考えと客観性を担保する理性主義を、マルクス主義の生産手段と生産関係に潜む合理的経済人という概念と構造主義的アプローチに見出す著者は、経済人類学の立場から、人類学者が属する社会でも合理的経済人概念は成立せず、自らも含む研究姿勢を客観的理性から実践理性にシフトすべきである、と主張した。本書はマリノフスキに始まる人類学研究の前提である諸概念をプラクシス領域に移す試みである。著者は人間の活動を物質的制約を超えようと意味や象徴を生み出す文化の形成過程として記号論的に捉えようとする。
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人類学者が自らの貧富のフィルタで石器時代の狩猟採集民を評価することに対し、1日2000kcalの食物摂取や4-7時間の労働時間等という調査データから反駁した「始原のあふれる社会」の章が本書冒頭にある。ここから著者は、非定住的で家族単位の家族制生産様式から労働や蓄積を強化する首長制への転換を辿る。その際「相互性」(reciprocity=互酬性)概念に注目し、喜んで行う肯定的互酬と戦略的に行う否定的互酬に区別してモースの贈与論を否定の側に置き、ヒエラルキーや貧富の発生を定住共同体同士の緊張した相互性に見る。
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F・ボアズに始まる文化相対主義が未開文化との文明の共時的差異を強調しその要因を環境に見出した点を、著者は環境決定論として疑問視し、差異は通時的にも存在し、環境を作る自然と社会の適応の度合とその変化に目を向ける。多様な差異を総合する際、フランス人類学は数学由来の構造を導入したが、アメリカの人類学者である著者は、生物学由来のシステムを導入し、進化論を通して通時的差異を説明しようとした。その科学的な姿勢から著者の多系進化は平行進化に留まったというが、その近代化論も含む本書は、人類学を地球大の生態系へ差し向けた。
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『菊と刀』で日本人の倫理体系をプロファイルし欧米のそれと比較した著者は、菊の優美さの奥に偽装された自由意志を、刀の残酷さの奥に自己責任の倫理を見た。その未刊行資料を邦訳した本書では、著者が日本人の倫理を責務体系として捉え、天皇中心の「義務」の縦軸と親族中心の「義理」の横軸の中に戦前日本人の行動パターンを見出したことがわかる。興味深いのは、戦時は天皇制が義務の中心だが江戸期は将軍中心で可動性があり、現行は戦後も天皇制を維持する統治を勧めている点と、アジア各地にこの責務体系に似たものの存在を指摘した点である。
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第二次大戦末期、戦争情報局日本班チーフとして日本の戦後統治ために国情調査を任された著者は、現地調査が不能な状況で、主に公開情報(オシント)から、文字(シギント)、映像(イミント)、在米日本人と対面(ヒュミント)を通して日米の文化を「恥の文化」と「罪の文化」に類型化した。本書は、単純な図式や文化相対主義的態度の中に自国の優越を仄めかす場面もあり批判も多い。が、情報の制限の中で言説分析を試み、「Aだが反面B」(菊<だが反面>刀)を繰り返す自らの調査記述に日本文化の二面性を見出す手順は参考になる(1946刊)。
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原題はRace and Racism(1942)。第二次大戦下の人種主義(racism)を契機に検討した前著に比べ、本書はレイシズムを因習に根差しつつ出現する「選ばれし人間」なる非論理的「迷信」として歴史に沿って論駁していく。すると、所属集団(内集団)の利益の分配が滞ると格差が生じ、他者(外集団)を排除して不満を解消する社会構造が抽出される。著者はこの不満を「飛び道具」として用いる政治家のプロパガンダ戦略を告発する一方、集団内の福祉を充実させ、歴史を迫害の側から見直すことが「迷信」への処方箋となると説く。
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原題はRace: Science and Politics(1940)。F・ボアズの文化相対主義的立場から、混成や雑種を文明の前提と捉える著者は人種主義を、民族集団が先天的優越を権力行使するために生物的な種に優越の理由を求める本質主義、と捉えた。第二次大戦下のナチスのみならず各国家に蔓延するこの傾向に対する本書の分析は、本質主義が生じれば生物的種の外にも根拠を求めて差別を推し進める可能性も含意する。H・アーレントは人種主義を「帝国主義的政治のイデオロギー的武器」と政治学的に規定した(『全体主義の起原』)。
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主に3地域の調査(太平洋岸北西部のクワキウトル族、ニューメキシコ州のプエブロ族、ニューギニアのドブ文化)から、各共同体の文化をアポロン型とディオニュソス型という2つのパターンとして把握する本書は、異文化接触する人類学者自身の習慣や価値観も含めて、「文化」を共同体が独自に形成した道徳的要請と捉え、師F・ボアズの文化相対主義的態度を理論化したとされる。その際採用された「様式人格」なる考えが共同体の一部しか捉えないという批判も出るが、文化をシステムとして捉え、人類学を未開文化以外にも適用可能にした点は興味深い。
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F・ボアズの最初の弟子であり、アメリカ人類学の基礎を作り、考古学の業績も残した著者は、文明と文化の学的区別より、各文明間の違いに注意を向けたという。著者は文明を「人類内の一社会の所産がとる形態」とし、この形態(言語、宗教、芸術)の違いが織りなす「様式」styleの多様性が、人類の文明を構成していると捉えた。本書は、動的編成を続けながら「混成性」や「雑種性」を生み出す「超個人的、超有機体的」文明の例を、ファッションの様式の変容等で示す。(娘はSFファンタジー作家アーシュラ・K(クローバー)・ル=グヴィン)
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最晩年の著者と対話した本書は、インタビュアーD・エリボンの意向から神話学研究者より20世紀フランス思想の主要人物の人生として3部構成される。それゆえ著者の神話学を支える構造主義に対する思想的態度と戦時のナチスに対する政治的態度が読める。前者についてメイエ(ソシュールの弟子)から教えを受けた著者はバンヴェニストの印欧語族研究を参照しつつ各神話の音韻関係を比較したとし、後者について言語圏を限定した自身の比較神話学が王党派的態度に支えられる点を幅広い交友関係を語る中で仄めかす(本書は亡きフーコーに捧げられた)。
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ローマ創成期の3神を自身の神々の3機能説(統治と祭祀、戦闘、生産)で構造化した「ユピテル・マルス・クィリヌス」(1941)で3機能が対応していないという批判に対し、著者はその範囲を古代ローマの血縁部族全体から貴族階級に変更しても3機能説の理念化にこだわった。最晩年に書かれた本書は、3機能から演繹された他の印欧語族の慣習をローマの祭に重ね、オウィディウス『祭暦』に欠落した7-12月の祭日を調べあげて、古代ローマの宗教観を掘り起こす。一方、ローマの神々はギリシャ神話からの輸入とする通説を捉え直す契機も作る。
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「ゲルマン人の神話と神々」(1939)は、北欧神話に神々を3機能説に結びつけたことで当時ナチスのアーリア人優越主義に与すると批判された。1959年改訂の本書は、歴史家との論争から3機能を50年代に印欧語族圏のイデオロギー構造を表すモデルに純化した印象である。改めて読むと、フランス人の著者が3機能モデルを実証抜きで確信できたのは、キリスト教に排除されたギリシャ神話が再発見されるルネサンス前に、北欧、アングロサクソン、ゲルマンの神話が身近だった日常が、現代のキリスト教文化にも残存しているからか、と思えてくる。
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印欧語族の神話の神々の3機能(統治と祭祀、戦闘、生産)は、神話が社会を通して思惟を形作るという古代共同体の3区分に発し、その大元の神話を構造的に探究する試みだったという。当初のモチーフには唯物論や歴史主義への批判もあったようだ。1958年出版の本書では、歴史家との長年の応酬を経て、この3機能説を実証から切り離し、機能からイデオロギーにさらに理念化したかに見える。この純化された3区分が、歴史家と神話学者が文字のある社会を前提に議論する傍で、無文字社会や印欧語族外の社会に型として普及していくところが興味深い。
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神話を構造と見ると神々は関係項に、集団は階層ネットワークとなる。印欧語族の「伝承圏」に統治と支配、戦闘、生産の3機能から成る神話構造と捉えた著者は、「神話から物語へ」で、神々の関係で宇宙観を表す神話から神々の関係を因果関係に還元して時系列に変える物語へと転換する過程を、北欧神話「ハディングスのサガ」に見る(集団内の3項関係→恋愛の三角関係)。またインドとローマと北欧の戦闘神を比較した「戦士の幸と不幸」はP・クラストル「未開人戦士の不幸」と傍に置くとシャーマニズムとトーテミズムの戦士機能の違いを理解できる。
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古代社会の3項構造(神々、社会、思惟)の「神々」を3機能(統治と司祭、戦闘、生産)に分ける背景には、歴史と進化の時代でも神話は社会に生き続けているという著者の信念があるとされる。「ローマの誕生」では神話から歴史にシフトする古代ローマの創成期に歴史の中の神話を見出す一方、キリスト教に追いやられた神話の痕跡をキリスト教圏の周縁まで辿る著者は、イスラームの大天使やゾロアスター教の古層に神々の3機能を見出していく(「大天使の誕生」)。この機能は、印欧語族の神話の範囲にこだわる著者の意図を超え、批判も強まるようだ。
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「ゲルマン人の神話と神々」(1939)ではゲルマンの神々に、統治と祭祀はオーディン、戦闘はトール、生産はフレイと3機能を分担するが、第二次大戦時にゲルマンの神話を扱うのはナチスのアーリア人種優越主義に与すると批判された。確かに、オーディンは豊穣や飢饉をもたらすが祭司や統治は別の神々が担い、戦争神トールは雷と雨で豊穣も司り、豊穣神フレイは戦う神にもなる。北欧神話に3機能を割り振るのは無理だ。が、ナチスが古代ギリシアにゲルマン民族の起源を夢見るのに対し、著者がヴァイキング(海賊)の神話を強調した点は興味深い。
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印欧語族の古代共同体が神々、社会、思惟の3構造を成している(3区分イデオロギー)と捉える著者は、同時に神話の神々にも、例えばリグ・ヴェーダなら統治(ミトラ)と祭祀(ヴァルナ)、戦闘(インドラ)、生産(アシュヴィン双神)の3機能体系があるという仮説を立てた。本書は統治と祭祀をめぐる「ミトラ=ヴァルナ」と3機能を見渡す「ユピテル・マルス・クイリヌス」の2論文を収録する。現代に通ずる社会統治論としても読める本書だが、硬直する統治システムを法を超えて壊す役割を神話は戦闘の神、古代社会は戦士結社が担う点が興味深い。
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天地と人間の創造を説明する創世神話の中でもドゴン神話は神話を伝える言語の発生も伝える。アンマからユルグ(単性/不完全)とノンモ(両性/完全)が生まれるが、もう一方の性を求めるユルグは大地と交わり経血で大地を汚したという。この出来事でユルグは夜や不毛や死の言葉、ノンモは昼や浄化や豊穣の生の言葉という対立的かつ相補的な2項関係を担う存在となる。本書では22のカテゴリーに分けられ266の母記号からなる記号(トング)と絵(トンイ)を操る話者が、宇宙卵の異伝も含めた神話を自在に再生する様が、豊富な図版で紹介される。
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西洋の天文学知識が混入した可能性も指摘され、盲目の老賢者オゴテメリ1人からの聞書スタイルも調査手順として疑問視された本書だが、全4段階の半分だけ収録されたという。さらに多数ある他のドゴン神話を含めると複雑で遠大な神話体系が想像できる。一方それら神話に共通するのは、一(創造神アンマ)がニとなり(ユルグの誕生と母なる大地との近親相姦)、さらに偶数単位(対立と相補)で宇宙が展開する双極的な存在原理である。人間は宇宙から地球に来たという逸話が注目されるのも、世界中の神話に共通の原理がその基盤を支えるからだろうか。
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霊や動物たちと個人または集団を結びつけるヌアー族の宗教を観念と観念のシンボリックな関係として捉えた著者は、それら関係にも上位下位の序列があり、その最高位に、婚姻時の最重要財産でもある牛との関係が位置することを注視する。牛が最高位なのは神への捧げ物だからだが、その供犠にも社会的変化の確認と個人の安寧を願う贖罪の2種類あり、後者の供犠にヌアー族独特の神への姿勢が窺えると著者は考える。贖罪することで神に近づこうとする西洋と異なり、神を遠ざけようとするヌアー族の姿勢には災厄をもたらす神という神概念が見えるからだ。
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植民地支配の歴史も含め、一つの部族の宗教の動態的な把握を試みる本書は、「文化の翻訳」の難しさも記したとされる。調査資料からヌアー族の神概念の矛盾に苦闘する著者は、矛盾の少ない解釈をシンボリズム求めた。本巻では、ある出自集団の「霊」がワニであるという記述を、生き物のワニでなくワニの観念とし、霊の観念とワニの観念の関係の「同一視」というトーテム解釈を試みる。「双子は鳥である」なら双子と鳥の観念同士のつながり方としてこの部族の信仰の特徴が翻訳される。すると、悪いのは左手でなく、左性が悪であるという信仰が見える。
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ヌアー族では結婚の際に夫側から妻側に婚資として牛が支払われる習俗がある。財の移動や複合を婚姻の第一要件に据えるこの習俗は、血統の継承という西洋的な婚姻と異なる形態を創出すると本書は記す。1つは夫が死ぬと未亡人が夫の兄弟と結婚し、後に生まれる子を亡夫の子とする亡霊婚であり、さらに不妊の女性が夫となって妻を娶り、妻が他の男との間にできた子供を育てる女性婚である。血統重視のリネージ集団と血統が辿れないクラン集団からなるトーテミズム社会の複雑さから婚姻の背後に財の移動を見る著者は、家族概念の多様性も見出していく。
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戦前、東アフリカのヌアー族[現在は「ヌエル」表記]を調査した著者は機能構造分析を彼らの政治領域に援用し、自然のサイクル(生態学的環境)と儀式等を行う共同体のサイクル(構造的環境)を区別して、親族関係、年齢組関係を「距離」という概念で体系化した。牛を最重要資産と捉え、死霊や精霊も牛を通じて接触すると信じるヌアー族社会の価値観に注目した本書は、所有する牛の価値を共有する意識が各々の共同体の距離を配分し、共同体間に闘争が起こるには両者に適当な距離が必要であると記す。この社会を著者は「秩序ある無政府状態」と呼ぶ。
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男が建物に入ったら建物が崩れて死んだ。白蟻に柱が食われていたのはわかるが、なぜ男が入った時に崩れたのか?西洋の科学思考は因果関係(why)が複雑だと崩壊の仕方(how)で説明する。一方アフリカ中央部に住むアザンデ人は妖術で説明する。彼らには界や次元の裂け目を繋ぐ役割は神ではなく妖術なのだ。裂け目を作る出来事の単独性を避けるために託宣があり、その儀式を行う間は世界が一体化する至福が得られる。一方著者は、変化に対処するこのシステムが西洋人の侵入で拡大し、既成社会に反する秘密結社の結成を促している点も指摘する。
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彫刻、土器、織物、金属細工、かご細工などに見られるのは手わざarsとしてのartである。著者は視覚的な美しさという西洋の基準を身体技能へと移し、描かれる対象が3次元的な写実性を持たない点をトーテムの特徴を盛り込むためと捉える(鯨の頭に鰭が描かれ、体は前向きで脚が横向きに描かれる特徴を訳者は「分割表現」と呼ぶ)一方で、散見する写実表現から西洋芸術の優越を否定している。一つの形を安定させるために要する技巧の熟練した繰り返しと捉える本書は、諸部分が複雑に重なり合う「万華鏡」として、プリミティヴな文化全体を描く。
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ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2017/02/06(2701日経過)
記録初日
2017/02/06(2701日経過)
読んだ本
3334冊(1日平均1.23冊)
読んだページ
1279264ページ(1日平均473ページ)
感想・レビュー
3334件(投稿率100.0%)
本棚
13棚
自己紹介

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