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2024年9月の読書メーターまとめ

roughfractus02
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感想・レビュー
30
ナイス
259ナイス

2024年9月に読んだ本
30

2024年9月のお気に入られ登録
5

  • 山川欣伸(やまかわよしのぶ)
  • sakesage
  • Sota Suzuki
  • mil
  • Caribou

2024年9月にナイスが最も多かった感想・レビュー

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ヒポクラテスは四つの体液がバランスよく循環すると笑いが起こるとし、身体を巡る体液(humor)全体のどれか(血液、粘液、胆汁、黒胆汁)優位になると心身に偏りが出る(気質や不健康)と考えた。身体の運動から哲学を刷新する著者は、笑いが純粋過去に偏る弛緩したイマージュが純粋知覚の緊張(強張り)に向かう際に起こると捉える。石に躓き、スムースに動くはずの身体がギクシャクして見える時、データに溺れる意識は、身体の動く現在に引き戻されて笑いが起こる。笑いが苦味を伴うのは、自己を「回心させる力」があるからだと著者はいう。
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2024年9月にナイスが最も多かったつぶやき

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早朝ウォーキングを終えて、コーヒー淹れてから窓外を見たら自宅を囲むように南北に虹がかかって、厳しい残暑の週末にちょっと清々しい朝、、さて、ミッシェル・セール祭りも今日で終了、、セールが参照していた人類学者フィリップ・デスコラを読んだら、セールが批判的に読んでいたベルクソンとバシュラールを通読してみたくなった、、科学との付き合い方が、技術がウェアラブルすぎて距離が取れないと安易に対立して排除する言葉に身を委ねてしまいそうな自分をなんとかしたい、、プチ断食が明けるまであと1時間、、マインドフルネスするかな、、

早朝ウォーキングを終えて、コーヒー淹れてから窓外を見たら自宅を囲むように南北に虹がかかって、厳しい残暑の週末にちょっと清々しい朝、、さて、ミッシェル・セール祭りも今日で終了、、セールが参照していた人類学者フィリップ・デスコラを読んだら、セールが批判的に読んでいたベルクソンとバシュラールを通読してみたくなった、、科学との付き合い方が、技術がウェアラブルすぎて距離が取れないと安易に対立して排除する言葉に身を委ねてしまいそうな自分をなんとかしたい、、プチ断食が明けるまであと1時間、、マインドフルネスするかな、、
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2024年9月の感想・レビュー一覧
30

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著書以外の出版を拒否したベルクソンの遺言に始まる冒頭には、20世紀哲学のベルクソニズムの興隆に面して(ハイデガー等)、遺言の禁を破り、ベルクソンのリセの講義録を刊行したとある。本書は心理学と形而上学に関する講義を収録するが、各講のテーマは哲学教育に沿った教科書的な区分であり、さらに受講生のノートの文字起こしである点が著作と大いに異なる。が、2つの間接的条件があるにせよ、ベルクソンの形而上学の批判が、科学として意識を扱う心理学から超知性的直観を注視する精神の形而上学への刷新へと徐々に向かう足取りが辿れる。
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本書は哲学史を自らの理論から捉え直したコレージュ・ド・フランス講義『時間観念の歴史』の次の講義にあたる。自らの哲学を公衆に概説しつつ、『創造的進化』(1907)の著述を進める著者は、連合心理学批判しつつ記憶を形成する「自動的再認」と「注意的再認」を検討した『物質と記憶』(1896)に、本講義で「個人的再認」を付け加えた。前2者は記憶の円錐の頂点と底面を念頭に置いた再認だが、本書にある「個人的再認」は円錐の途中で起こる再認であり、ダ・ヴィンチ『絵画論』の身振りの考察が取り上げられ、再認の発生が検討される。
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時間とは、永遠に面して収縮した知性が弛緩(堕落)した後で人間の言葉に載せようとすると、その来歴が言語化できないことを示す指標なのだろう。『物質と記憶』の記憶の円錐の収縮/弛緩の運動をイメージしつつプラトンからカントに至る哲学史を辿る本書を読むと、堕落(弛緩)した言葉で組み立てられた体系(システム)が自律することの困難を時間の痕跡を辿るように繙くことが歴史の役割のように思えてくる。著書以外の出版を禁じた著者の意に反して死後出版された本書だが、プロティノスの存在把握と著者のキー概念が重なる点が垣間見えてよい。
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繰り返さない生の最中で、機械的に繰り返される現象に出会うと、哲学者は滑稽さを、精神分析家は不気味さを見出す。本書はベルクソン「笑い」、フロイト「不気味なもの」、両者を検討した「不気味な笑い」(J=L・ジリボン)を収める。ベルクソンは身体の動きの側から機械的反復の滑稽さにデジタルな意識への苦味を伴う批評を見るが、フロイトは意識に隠された親密さ(Das Heimliche)としての不気味なもの(das Unheimliche)を無意識の兆候として見た。笑いの不気味さは生を錯覚する意識を突き放す力を持つようだ。
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自己の哲学を「人間の条件を超出するための努力」とした著者は、社会や世界から自己を規定する哲学に対して「自己による自己の創造」という課題を自らに課した。G・ドゥルーズの編集による本書は、持続概念の心理から記憶へ、生命から物質への拡張を背景とし、直観を方法として持続からの生の分岐を飛躍と運動によってを示しつつ、科学から哲学へ、さらに人間的条件の乗り越えへと、全6章・77項目を著者自身の言葉で描かれた新たな哲学地図作成の試みである。最後の77節「記憶と自由」には『物質と記憶』の最後にある言葉「自由」が置かれる。
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『持続と同時性』が未刊行なので『笑い』と共に収録された全集版で読む。アインシュタインの相対性理論批判を企図した本書は、20世紀物理学に対する哲学的な誤解として読まれてきたという。行き過ぎとされる著者の運動と静止の相対性の強調と量的な運動を度外視した点を数学史から見ると、著者が2つの系を相対的としたのは量化し得ない持続を含む幾何学を基点にこの理論を批判したからだろうかと思う。すると、幾何学から代数学への変換は量化し得ないものを示唆するが、代数学から幾何学への変換は量化された領域のみを扱うという批判が見える。
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『精神のエネルギー』同様著者の論文集だが、前著が著者の思想展開を巡る講演等を集めたのに対し、本書は従来の哲学と異なる自らの哲学を哲学史的に位置付け、その構想の基点をなす論文を収録する。社会や世界から自己を規定する人間言語中心の哲学と異なり、「自己による自己の創造」を主題とする著者の哲学は、生物としてのヒト生命体が言語では分割不能な持続としての生きた世界と共に生滅する動き自体をテーマとした。今ここにある、このもの、この感じという特異なものたちから多様な生と描くこの哲学は、自由freedomへと接近を続ける。
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生きている時に注意を払う活動として意識を捉える著者は、本書で意識が身体と生命に強く結びつく点を強調する一方、身体と生命がない死後に活動するものはあるのかという問いを立て、それを精神と名づける。そして生の弛緩した睡眠状態で見る夢に精神の自由で流れるような活動が現れるのではないかという仮説を立てる。著者は生の只中にも意識の中に希薄だが精神の兆候が現れうるとすれば、死と生は断絶しないと考える。心霊研究に踏み込む一方、脳と思考の働きを神経生理学的に検討する本書は、精神を人間概念を超える純粋持続として再定義する。
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2024/09/23 07:23

流れるような翻訳を読みながら、大学院時代ベルクソン、ポパー、ベイトソンをご教授くださった原章二先生の声が耳の奥に聞こえたように思ったとき、「生きている人のまぼろし」という本書の言葉が現れ、生自体が弛緩した状態では「記憶の円錐」も歪んで溶けて行くのだろう、というイメージが出てきた。

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生命の発生を物質と区別して生の跳躍(エラン・ヴィタール)と呼んだ著者は、本書で人間社会を生命同様に発生の場で検討する。その際カントの定言命法(しなければならぬものはしなければならぬ)に、道徳を本能的に習慣化する閉じた社会の特徴を捉え、ある個人が超知性的直観によって神と合一する愛の弾み(エラン・ダムール)とそれに感動する創造的情動が開かれた社会を作ると唱えた。システムとして社会を捉える道筋を示した本書だが、著者の宗教的神秘性の強調には、後に本能/知性の2項対立を主知的に用いているとのM・セールの指摘がある。
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物質から生命が生じると考える場合、進化論ならランダム世界からパターンが生じ(変異)、環境の中で継続する(適応)と捉える。著者はこの解釈に対し、熱力学を通して疑義を唱える。物質はエントロピーに従ってランダム世界(平衡状態)に不可逆的に向かうのに、エントロピーと逆方向に向かうことで生命は生じ持続するとして、この動きを「生の跳躍」(élan vital)と呼んだ。生命独自の組織化・個体化から科学的・機械論的解釈に傾く当時の進化論を批判する本書は、この「創造的」跳躍を中心に後のシステム論に開く生命理論を構想した。
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ヒポクラテスは四つの体液がバランスよく循環すると笑いが起こるとし、身体を巡る体液(humor)全体のどれか(血液、粘液、胆汁、黒胆汁)優位になると心身に偏りが出る(気質や不健康)と考えた。身体の運動から哲学を刷新する著者は、笑いが純粋過去に偏る弛緩したイマージュが純粋知覚の緊張(強張り)に向かう際に起こると捉える。石に躓き、スムースに動くはずの身体がギクシャクして見える時、データに溺れる意識は、身体の動く現在に引き戻されて笑いが起こる。笑いが苦味を伴うのは、自己を「回心させる力」があるからだと著者はいう。
が「ナイス!」と言っています。
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物を対象として扱う科学とも物自体を前に認識側に留まる哲学とも相容れない著者は、物と精神を繋ぐ記憶が状態を扱う点に着目する。前著で科学の時間概念に対象化不能な持続を見出した著者は、この未完了相に沿って運動する身体を物の中に置き、対象に留まる科学と哲学のドグマを感覚運動系から刷新した。本書中盤の「記憶の円錐」図を見ると、生命は精神の純粋状態(純粋過去)と物を感覚するだけの純粋状態(純粋知覚)の間を、想起と運動の2種の記憶によって弛緩/収縮しながらイマージュの中を彷徨うというビジョンが動き始める(1896刊)。
が「ナイス!」と言っています。
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科学化した「常識」は生きることを数量化する。著者はこの傾向の例を19世紀末の精神を物理学的に量化する精神物理学や観念連合心理学に見てとり、生きることの質の存在を強調する。本書は物理学や数学自身にもこの批判を向け、時間概念に数量化しえない持続を意識の深みに見る。著者はここから、量と質を含み込む意識の中に量化も空間化も不能な直観(意識に直接与えられたもの)に、数量化した「常識」からの出口(創造性)を見出す。「悲しみや苦しみの感情は比較可能か」という問いに始まる本書はデータに包囲された「常識」からの自由を語る。
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人間の持続的介入で自然が人間世界に猛威を振るうようになった人新世に、著者は人間中心の世界を作り、自然を対象化する科学技術を行使して人間の世界を拡張してきた対立的自然観を他の自然観の中に置いた。本書は4つの自然観を提示し、その特徴を内面性/肉体性に対する価値づけ(類似+/差異-)において区分する。アニミズム(+/-)、トーテミズム(+/+)、ナチュラリズム(-/+)、アナロジズム(-/-)の中で、西洋起源の対立的自然観はナチュラリズムとして相対化される。が、重要なのはこの4区分が存在論自身を多元化する点だ。
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世界の中に生命がいるのではなく生命の中に世界がある。この場合世界とは人間の文化を通して自然を把握する解釈であり、生命は動植物に限られている。が、地球上に分布するアニミズム的社会では、アニマ(スピリット)は動植物の枠を超えて実在する。秋道智彌と対話する本書で、アマゾン流域を調査した人類学者の著者は、人間中心的な世界把握を転倒し、アニミズムからのエコロジーを展開して断絶した自然と人間との関係を組み直しを図る(コモンズ論)。本書は、多元的存在論からレヴィ=ストロース以後の人類学を環境学にシフトさせる試みである。
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自然と人間の対称的関係を分類したフィリップ・デスコラの4類型(アニミズム、ナチュラリズム、トーテミズム、アナロジズム)は人間と自然を分断したシャーマニズム系統の非対称的自然観を採用し、自然を対象化して操作する近代的自然観とは異なる。この4類型に呼応する著者は、客観的法則によってよって形成された現代の「世界」から排除された大地を、物語によって対象化できない位相として掘り起こす。本書の旅は、著者自らに刻み込まれた「世界」にこれら位相を見出し、自らを人間からヒト生命体へと変容させる文体的試み(エセー)でもある。
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戦争概念を古代から辿る本書は、古代と異なり現代の戦争が地球自体に無差別テロを起こし、人類が自殺する傾向に進んでいる点に読者の注意を促す。その際世界を「方舟」に譬える著者は、「世界」を作る知を人間が住む陸地をモデルに条里化した地図の拡張(『アトラス』の増殖と包含の2概念)と解釈し、平滑的な位相空間としての地球=海と区別する。条里化する世界が排除される偶発性や不確実性をもたらすこの位相が、意味で条里化した散文に慣れた読者に海に浮かぶ「方舟」の揺れとして体感させる本書は、古代戦争詩を思わせる詩的文体で綴られる。
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何かが出現し、形を変え、時を経て伝わっていく。ギリシャ文字ができて書き記され多領域に分岐して伝わっていく。ある建築様式が出現し様々な領域(学校や刑務所)でも流用される。形式が形成され分岐して伝達される過程を著者はフォーマットと小枝と呼んだ。特異性が普遍性に変わり、普遍性を打ち破る特異性が出現するとさらに普遍性を形成する更新と再生の概念は、従来循環やフィードバックと表現された。一方著者はこのシステムの動きをアルゴリズムと捉え、それを破る偶発性の出現をアルゴリズム形成の際に排除した潜在性の開示として肯定する。
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東西冷戦後のグローバル化を国家が紡ぐ「大きな物語」(歴史)の終焉と「小さな物語」の始まりに喩えた前世紀末から10年を経て、著者は両者が人間中心の戦いの物語であり、物語自体を人間も含めた生命の物語として捉え直し、生命体から物語を紡ぐ「大いなる物語」を本書で取り上げる。現在この語はノア・ハラリら人類史や人類学領域で用いられる。が、この物語が科学の介入によって「白熱」していると捉える著者は、宇宙や生命の発生を探究し遺伝子を操作するこの学の動向を見据え、ヒトが人間となる際に生じる悪の問題を論じる(2003刊)。
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20世紀は科学技術の進展で平均寿命が伸びIT技術が世界を覆ったが、著者は農業人口は数%まで激減した点に注目し「農業の終焉」と呼んだ。農業は目的なき合目的性(自然)から合目的性(モノとして自然を所有)に変換する行為である。この行為の発明は文字に記録し暦を作り印刷技術からコンピュータまで続いてきた。その終焉は知を自然や生命を所有するための理解から生命として察知する行為に変えつつある。家畜化の際に言葉なく交流する動物たちを察知してきた人類は、IT技術の使い方によっては地球をビオゾームに変えうると著者は主張する。
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『アトラス』でことば/ロゴスが意味を再生産する際に排除する文字の物質性に着目し、時間tempsの直線性を気象tempsのランダム性にシフトさせ、基点としての身体が消失する仮想空間に文字の身体を多岐点として導入した著者は、本書で意味を再生産するラテン語圏を形成する大学システムの外に出て、ロマンス語またはフランス語で書いた思想家達の500年の軌跡を壮大な回り道(オルドネ)の方法で描く。この方法は歴史的回顧ではない。意味の再生産ツールとしてフランス語を扱う現代の教育システムに対して著者の文体が行う実践でもある。
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前著『幾何学の起源』で大地geoから脱領土化する幾何学geometryと再領土化する地理学geographyの誕生に古代ギリシャのロゴス注視主義の暴力を見た著者は、本書で境界を有しない大地と境界を引く地図との違いも消失した現代の仮想空間をテーマに選んだ。両者を区別する身体なる基準点のないこの空間で「〜すべきか」と倫理的問いを立てる著者は、この空間を作る抽象化されたロゴス/ことばの意味を揺れ動かす文字の身体(スペル)を語源学的に活用し、身近で遠い身体を辿る旅を「アトラス」(神話の巨神/地図帳)に二重に記す。
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『ローマ』『彫像』に続く「定礎の書」である本書は、古代ギリシャで発明された幾何学を普遍性概念と帝国的暴力の起源として扱う。定礎に保存されるのは悪としての「ことば/ロゴス」だ。本書はギリシャが発明したロゴスを「ある比から別の比へと進み、さらに置換されることによって後者か ら第三の比へ等々と移っていく比例中項」と捉え、比例こそ土地を離れた普遍性概念を生むとした。一方、抽象化に向かう幾何学と共に生まれた地理学は、土地を測る暴力としてロゴスを生きた世界に向ける。この暴力を取り去った知覚や観念を持つことは可能か。
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一見本書は神と人を媒介するメッセンジャーとしての天使がテーマに見える。が、空港での男女の会話という設定でキリスト教的天使観を日常の話と哲学議論を自在に動き回る話ぶりは、「薄明」から喧騒の昼と夜を経て静まり返る「真夜中」へと各章を巡りながら本書の頁を流体化し、多数収録された天使の図版の視覚イメージを文字と共に押し流すかのようだ。著者は子供にしか見えないと言われる天使を、コミュニケーションが成立すると排除されるホワイトノイズへと拡張する。An angel passes!(会話が途切れた際に発せされる常套句。)
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著者と弟子ラトゥールとの対話は、テーマと目的を持ち、相手と時には対立する議論と異なり、軽妙な話し手と生真面目な聞き手の長い間の関係を思い起こすような自由闊達な雰囲気の中でやり取りされる。対立の果てに自殺の兵器である原爆を生み出した人類はすでに関係の網の中にあると考える著者は、自己と他者の分離が不可能なこの網の中で戦争をゲームと見なす現代人に、子供たちの遊びを参考にしながら網の扱い方を語る。2人の対話は、対を固定し敵対させる確定的世界の向こうに、対を増やしながら網を移動する不確定世界に遊ぶ知恵を垣間見せる。
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知恵は育むのであり教えるのではない。一方で知恵は絞るものだが、解くために絞るのである。それゆえ教えることは危機に自らを立たせ、自らに相応しい新たな知恵を生み出す危機へ誘うことになるだろう。本書は、紀元前のギリシャの賢者たちが幾何学によって表現できない不合理(無理数)を背理法を駆使する過程で発見し、代数学が創設される契機を作った歴史を示しつつ、既知の知識を伝達可能な言葉で伝える教育とそのような知識でできた世界の狭隘さを批判する。教えることは、言い得ない何かを前に自らと世界を変容させようと共に踏み出すことだ。
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大洪水で肥沃な土地をもたらす神との契約、自然に寄生し一方的利益に走る人間を法と政治で制御する社会契約。2つの契約はコードとコード破りのゲームを生み戦争を世界化させる。コードとは契約における神の法と人間の法の両者に跨る法的用語だ。ラ・フォンテーヌの寓話「人間と蛇」を通して創世記の嫌われ者蛇に語らせ、戦う男たちが足元の泥に埋没する未来をゴヤの絵に見る本書は、オギュスタン・ベルクに「シャーマニズムへの退行」と批判された。が、自然の意味を解体する著者は、意味とコードで直線を進む歴史を「大団円」にかけて循環させる。
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彫像とは偶像であると著者はいう。キリスト教会の飾られる殉教者たちの彫像は、偶像を破壊しつつ死後彫像化され、後の人々に偶像として崇められる。ここで本書は一気にジュール・ヴェルヌ『月世界旅行』の宇宙空間に移って同じ彫像を見出す。それは数学言語で作られ真空の中を進宇宙船である。さらに宇宙船の中で死に宇宙空間に捨てられた犬のミイラ化した遺骸が宇宙船の推進力によって追尾してくる場面に注目する著者は、彫像とは生命が抜けたまま保存されるミイラであり、人間言語を抽象化した数学言語でできた宇宙船も同じミイラである、という。
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『北西航路』で不確定な世界に語り手を置くムージルと比較し、俯瞰的に確定された世界を描くバルザックに超越的なものを設定したプラトニズムを読んだ著者は、本書でバルザック作品で排除される不確定性を両性具有者を扱う作品に見てとる。二項対立的暴力が排除する第3項であるサラジーヌの生き方に男/女、男の中の女/女の中の男、生と死、死と芸術、芸術家における右利きと左利き(左利きを右利きに変えたバルザック説)と様々な対を見出す著者の筆致は、バルト『S/Z』を穏やかに批判しつつ、二元論的世界に対を増殖させ不確定さを生み出す。
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世界を目で区別し言葉で分類する第3項排除の論理を批判する著者は、排除される側(雑音、デモン、寄食者等)から排除の暴力に向かう方向とは別の方角に舵を切る。本書は視覚も含め五感全体を総合し、視覚から皮膚感覚へ、理性から感情・情動へと開いてその混合を経巡る。視覚で他と区別された「ヴェール」「ボックス」「テーブル」を他の4感覚に誘い、五感全体で世界を感じる身体の「探訪」が「歓喜」を生む、という本書の章立てを辿ると、混合体である私は世界を数で分割された距離空間ではなく、分割不能で連続的な位相空間にいると感じられる。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2017/02/06(2933日経過)
記録初日
2017/02/06(2933日経過)
読んだ本
3566冊(1日平均1.22冊)
読んだページ
1363195ページ(1日平均464ページ)
感想・レビュー
3566件(投稿率100.0%)
本棚
12棚
自己紹介

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