手紙形式の異色小説ということで、昭和臭をたっぷり楽しみつつも、キャラ設定が流石の三島なので、令和版ＳＮＳ教室にしても、それはそれなりに成立しそう。パパ活だのチー牛だの意識高い系だのに置き換えたらば。(P193)もちろん、同封写真の男に比べて、僕の男前がそんなに下がるというわけではないのですが、アラン・ドロンにラブレターを出しているつもりの女性が会ってみたら加山雄三だったとしたら、やっぱり怒るのではないでしょうか。

これぞ三島な極上エンタメ小説。人物造形といい、話の落とし所といい、見事という他ないんだわ。ヒロイン絢子に、夫の俊男、そして曲者の姑・滝川夫人。どれも三島作品あるある人物で、既視感ありまくりだけど、それだけに、こなれた描写が流石なのよね。絢子は三島の理想の奥さん像？って感じのカシコ妻。俊男はあまりに完璧マンすぎて、途中まで何時『禁色』の悠一のようにカミングアウトするんじゃないかと要らぬハラハラしてみたり。そして何と云っても滝川夫人。彼女のラスボス感って、ひょっとしてモデルは祖母の夏子かもしれん。ホラー風味？

手紙形式の異色小説ということで、昭和臭をたっぷり楽しみつつも、キャラ設定が流石の三島なので、令和版ＳＮＳ教室にしても、それはそれなりに成立しそう。パパ活だのチー牛だの意識高い系だのに置き換えたらば。(P193)もちろん、同封写真の男に比べて、僕の男前がそんなに下がるというわけではないのですが、アラン・ドロンにラブレターを出しているつもりの女性が会ってみたら加山雄三だったとしたら、やっぱり怒るのではないでしょうか。

何という名著。図書館本だけど、あまりの図版の豊富さに、家の外で読むことがためらわれる位。背後に十分ご注意を。隠語の「大悦」「天悦」の由来だったり、「後庭華」とか含みのある言葉が素敵だなあと感心するも、番頭丁稚の関係とか、芸の世界の裏(陰間のゆえん)だったりとか、現代に通じるパワハラ、セクハラな闇もあるけど、基本的には、江戸時代の色道って、男色女色どっちも嗜む、いわゆる両刀、バイセクシャルが多そうなイメージかも。

もはやコレ三島文学の副読本であり必読本。三島と澁澤って、ツインソウルなんじゃないかってレベルで、お互い理解し合ってるよな。わかりみ尊い。インテリ星人たちの知的会話に憧れてるんだ私は。

映画化された三島文学は数あれど、私が観た中で最高傑作だと思うのが市川雷蔵主演の『剣』だ。雷蔵主演作だと『炎上』（『金閣寺』）のほうが有名だし、『潮騒』はアイドル主演で何度も映画化されてるし、それでもこの時の雷蔵が、あまりに三島文学を体現していて感動したのを覚えている。こんな青二才をよくぞ表現したものだと。雷蔵が生きながらえれば、豊穣の海も『春の雪』だけでなく『奔馬』の勲役までこなせただろうし、脚本演出監督までこなせたかもしれない。とにかく三島文学と市川雷蔵という不世出の役者の親和性の高さを延々と語りたい。