飲食品業界で飯を食む人間には耐え難かった3巻と比べ、1、2巻のミステリとしての美点（著者の得意技？）を活かしたアイデアストーリーが集められた短編集。冒頭があの話で、書き下ろしのおまけ的なあれで締める構成もいい。こうしてみると、短編の方が持ち味を活かしやすい作風なのかもしれない。登場人物の身に危険が迫る話がない日常ミステリで一貫性があって、個人的には、ここまでの4冊では一番好きかもしれない。

飲食品業界で飯を食む人間には耐え難かった3巻と比べ、1、2巻のミステリとしての美点（著者の得意技？）を活かしたアイデアストーリーが集められた短編集。冒頭があの話で、書き下ろしのおまけ的なあれで締める構成もいい。こうしてみると、短編の方が持ち味を活かしやすい作風なのかもしれない。登場人物の身に危険が迫る話がない日常ミステリで一貫性があって、個人的には、ここまでの4冊では一番好きかもしれない。

トクマの特選！　として復刊。表紙は過去ハードカバー、文庫では未収録の印象的なシーンのイラストで、これまでの表紙でベストと言っていいくらいだが、これをセレクトして帯に「昭和の恋愛」と書く編集さんには猛省を促したい。当初は連載当時の1990-1991年想定、文庫版は1999年ごろの物語として読める改稿が施されている。ともあれ、今読むと、出てくる地名が足を踏み入れたことのあるものになっていてリアリティがまた違った。歳による読みの違いは個人的なところだが、いろいろ感慨深い。

大学時代に一度は読んでいたはずなのだが、綺麗さっぱり忘却の彼方。ほぼ初読のように新鮮に読めた。とはいえ、この衒学的な内容は大学時代の自分にはちと荷が重かったであろう（だからここまで綺麗さっぱり（笑））。ともあれ、今読むと、火星の砂で覚醒しちゃった科学者の語る「すべてがわかるぞ」的なヴィジョンが松本零士『ミライザーバン』か、石川賢『ゲッターロボサーガ』か、という感じで、なかなか楽しめた。

平凡社の一連の『作家の◯◯』（ムック）『作家と◯◯』（エッセイアンソロジー）のシリーズの『と酒』。いつもながら、意外な作家のセレクションとほとんどは読んだことないエッセイが楽しい（今回は新井素子と夢野久作のエッセイは別で読んでた）。星新一はご本人ではなく筒井康隆視点のエッセイで、作品以上に破天荒だったキャラクターが炸裂している。

2巻目はグリム。有名どころから、ねむりひめ、おかしのいえ、あかずきん、きんのがちょう、しちひきのこやぎ、の5作を翻案。ねむりひめは王子が見つめただけで目覚めるし、あかずきんはおばあさんもあかずきんもオオカミに食べられなかったので（こやぎのほうは丸呑みされたのを救出するいつものお話なんだけど）読んでびっくりした。残酷な展開をなくすため、らしいが、その中では、兄を助けるためとはいえ、魔女のおばあさんをかまどに閉じ込めて焼き殺すグレーテルの行為の残虐さが際立つ。きんのがちょうくらいの話が安心して読めるかな。

実家には数冊しかなかったので、これを読むのは初めて。見開きか4ページの短いお話がたくさん、挿絵も11人で分担していて楽しい。

自分はサイバーパンクの運動には興味が持てなかったが、ギブスンの短編集『クローム襲撃』は「明るくない未来」の片隅で生きる人間を手を変え品を変え描いた点でエポックメイキングな作品集だったと思っていた。この短編集にはそれ以来の衝撃を受けた。あと、前半の収録作からはウィンダムが描いた終末感への変奏も感じられる気がする。個々の作品のアイデアと語り口のうまさ。なかなかないことだけど、自分の中のオールタイムベストを更新する候補になるくらいの短編集。ロックや音楽がモチーフの作品が多いのもポイント。