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2024年10月の読書メーターまとめ

かす実
読んだ本
8
読んだページ
1956ページ
感想・レビュー
8
ナイス
72ナイス

2024年10月に読んだ本
8

2024年10月にナイスが最も多かった感想・レビュー

かす実
図書室で流行っていたあの頃には読めなくて、今更になって出会い直した。想像以上に面白くて深みのある物語に、なぜあの頃出会えなかったのだろうと後悔。まず主人公がかっこいい中年女性の武人で、その師匠である世界最強の呪術師も老婆、神的なものに取り憑かれて身体を変容させる宿命に選ばれるのは少年で、彼らを優しく暖かくケアしサポートする賢い薬草使いは男性。意図的に男女が反転させられているような気がする。世界のディテールも豊かで想像を膨らませる余地があるし、強者と弱者、歴史を語り継ぐことが持つ意味について考える。
かす実
2024/10/26 16:42

作者自身は10年ぐらい前に「フェミニズム等を意識して書いていない」みたいなことを明言しているらしいが...

が「ナイス!」と言っています。

2024年10月の感想・レビュー一覧
8

かす実
社会の中で生きづらさを抱えた人がそのままの自分で、生きづらさを抱えた女性たちと出会い、心身での対話を通して背中を押す、そんな仕事を見つけるまでの話。大学でのジェンダー・セクシュアリティについての学びとか、物事への洞察力とか、夜遊びで培った知らない人との距離の詰め方とか、躁鬱で普通に生きられない自身の実感とか、女性向け商売をするのに向いた細かな気配りやキラキラした感性とか、この人の持つ要素すべてがこの仕事に向いていたのだなとわかる。コミュニケーションが好きな人の会話中の脳内が言語化されているのも興味深い。
かす実
2024/10/30 00:10

2丁目の店子さんが池袋近辺の風俗を利用するという描写はなんかリアルだった。今は「風俗」という看板がやりたいこととそぐわなくなってきたとのことで、サービス内容はそのままに「対話サロン」として運営しているらしい。誠実なスタンスだと感じる。

かす実
2024/10/30 01:29

人とは共有しづらい性や愛の領域において、また女性の置かれる性的欲望からの阻害の状況下で、「普通」になれない=規範通りに女をやれないことによって、自信を失った女性たちが、ヘテロ女性の中にもたくさんいる。おそらくだからこそ、著者が取り上げるお客さんはヘテロ女性が多く、店のコンセプト自体、セクシュアリティの確立していない孤独な人を対象にしているのだと思う。彼女たちはきっと、理論を知るだけでは救われない。密室での感覚を伴う接触や固有の他者との体験を必要としている。

が「ナイス!」と言っています。
かす実
図書室で流行っていたあの頃には読めなくて、今更になって出会い直した。想像以上に面白くて深みのある物語に、なぜあの頃出会えなかったのだろうと後悔。まず主人公がかっこいい中年女性の武人で、その師匠である世界最強の呪術師も老婆、神的なものに取り憑かれて身体を変容させる宿命に選ばれるのは少年で、彼らを優しく暖かくケアしサポートする賢い薬草使いは男性。意図的に男女が反転させられているような気がする。世界のディテールも豊かで想像を膨らませる余地があるし、強者と弱者、歴史を語り継ぐことが持つ意味について考える。
かす実
2024/10/26 16:42

作者自身は10年ぐらい前に「フェミニズム等を意識して書いていない」みたいなことを明言しているらしいが...

が「ナイス!」と言っています。
かす実
苦境をユーモラスに落としてあたたかに聞かせる語り口が巧みで、この人は芸人だなあと思った。認知症の母親が老いてもなお威勢よくエネルギッシュな人で、とても魅力的。ダウン症の娘に水泳を習わせ、心配だからと自分も入会するような寄り添い方を選ぶ人。悪い人じゃないんだけど、どこか的外れで頼りない父親の感じも相まって、きっとこの家族はこの母の活力を原動力にして回ってきたのだと想像できる。そんな精神的大黒柱の母が衰えていく様を目の当たりにするのは、さぞかし辛かろうと思う。
かす実
2024/10/26 15:33

かなり理不尽な状況に陥っても家族と向き合い続ける著者が立派だなと思うが、これができるのは根本的に愛情深い家庭だったからだろう。それでも一人で全部背負うのが限界になったとき、「なんでもいい。あったかいところに座りたい。」と逃げ込んだのが年末の映画館だったこと、心に迫るものがあった。映画そのものには全然集中できなかったとしても、暗闇の中で2時間ひとりきりになれる場所として、映画館は存在している。

かす実
2024/10/26 15:36

女家族で込み入った話をしている時に何も知らない父親が乱入してきて、余計に話をややこしくする感じ、かなりわかる、と思って笑ってしまった。ダウン症の姉と母の間のやり取りには、二人の間だけで重ねられてきた濃密な48年の時間が伺えて、ここに知らない物語があるなと感じる。

が「ナイス!」と言っています。
かす実
コライトは、分業制にすることによって自分の得意なことだけを担当しコンペに勝つための仕組みであり、仕事を得るためのコネクション作りの場でもあり、作家を孤独な一人作業から解放する方法でもある。他者を介在させることにより、ひとつの曲で悩み過ぎず、集まったその場の一発で音楽の概形が決まってしまうという効果もあるのだと思う。コライトの際のスタンスとしては、ガンガンアイディアを出し、相手のアウトプットに対しても明確に反応することが大切。
かす実
2024/10/23 21:25

基本的には作曲は一人でするものだと思っているが、ポップスにおいてはジャンルや形式がある程度定式化されているし、それらを組み合わせてゲーム的に複数人でプレイすることもできる。コライトで年間150曲作っている人が「作りたくて作っている曲は1曲もない、作らなければならない曲が常に目の前にある」と言っていたのが印象的だった。岡嶋かな多のスウェーデンでの日々は憧れる。

が「ナイス!」と言っています。
かす実
10年以上前の本なのでボカロ、サブスク、ソシャゲなどへの認識は特に古い。作品を作り続けてコネを作って内部コンペに参加できるようになって実績を積み上げていく、というのがどのジャンルでも共通している。才能・熱意・人格・コネ・運が同じくらい大事。スピード重視でビジネスとして音楽をする前提で、音楽的社会的にどんな意味を見出すか。崎元仁のFF12の音楽(いわゆるオケ曲)はとても巧みなのだが、付け焼き刃的な独学の積み重ねで技術を習得してきたと話していて驚いた。
が「ナイス!」と言っています。
かす実
研究者が書いたビジネス本としての映画入門、という位置付け。映画という興行の歴史から、小津映画や黒澤映画の鑑賞法紹介から、感想の書き方まで。映画の娯楽的側面だけを楽しむに終始せず、分析・批評的な鑑賞の仕方にいかに繋げていくか、ということを平易な書き口でやりたかったのだと思う。「映画の日」が日本でキネトスコープが初めて上映された日(シネマトグラフではなく)にちなんでいるとは知らなかった。文章を入り口に、古典映画を見ようという気持ちにはなるかも。
かす実
2024/10/20 17:15

読んでいたら、おすすめTwitter映画アカウントとして急に自分のTwitterのTLみたいな研究者リストが出てきて面白かった。著者のツイッターアカウントを見に行こうとしたら、炎上のタイミングでアカウント削除されてた方だった!あのアイスの広告イラストのどこにセクシャルなコードが忍ばされているか、という分析、面白かったのに。

混沌
2024/10/31 01:05

小津安二郎監督って全然知らなくて、見てみたいって思いましたね。

が「ナイス!」と言っています。
かす実
余分が多すぎて内容が薄まっているがたまに光る言葉がある。自分に刺さった部分だけ拾ってノートに書きつけて、エッセンスを凝縮した自分だけの自己啓発本を作る、みたいな使い方をしている。ワークもできるだけ、著者の提示した方法ではなく自分にあった活かし方を自分で考えた方が良い。レシピ本みたいなもの。行動なき知識は価値がないらしい。ハウトゥー本的にはこの上ない真実。
が「ナイス!」と言っています。
かす実
性暴力について、または良いセックスについて、読みながら何度も考えた。「内部」に入り込む触覚の性質は、それ自体暴力になりうる。また、触覚がもたらすフレームの混乱や、リアリティを揺るがすような想起(フラッシュバック/タイムスリップ)は性暴力に特有の苦しみを論じる際に役立つと思う。介助やリハビリの際、患者とトレーナーの関係が被害-加害関係となりうることを論じた部分で「自分から体のパーツが切り離され、失われていく感覚」「自他の境界が自分の側に押し寄せられる」という表現があった。これは脳性麻痺当事者である熊谷が
かす実
2024/10/20 15:34

自身のリハビリの経験について語った言葉だが、驚くほど性暴力被害者の語りと共通している。いずれにせよ、ふれる側(接触のデザインの主導権を握る側)に自分の心身の声を拾ってもらえないことによる、身体を侵犯される屈辱なのだと思う。

かす実
2024/10/20 15:41

一方で、信頼と安心のもとで自身の身体を他者に委ね、自己の感覚を拡張していく感覚、自他の境界が曖昧になる感覚、そしてその感覚の帰属先よりも現在の応答の方が優先される状態は、良いセックスをしているときの感覚にとても近い。

が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2018/01/02(2517日経過)
記録初日
2018/01/12(2507日経過)
読んだ本
448冊(1日平均0.18冊)
読んだページ
106996ページ(1日平均42ページ)
感想・レビュー
446件(投稿率99.6%)
本棚
5棚
性別
年齢
24歳
職業
大学生
自己紹介

音楽と芸術と性と哲学
眼差しと欲望の解体

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