ウェーバーを(思想家と言うよりも)社会科学者として再評価し、具体例と経験的な証拠に基づいて研究内容を読解する。比較史や経済史、経営学などの社会科学の知見を豊富に取り入れていることが新鮮だった。 (a)非属人的な(合理的)組織と、(b)組織による変化への対応力を近代的な経済・政治システムの特徴とする見方はノース他『暴力と社会秩序』と重なり、制度派経済学の知見とも接続できるかもしれない。
以下のようにまとめられるだろうか… (生産年齢人口増加率の減速による資本過剰やTFP上昇率の低迷による資本収益率の低下を背景に)設備投資が落ち込んだことから70年代以降は貯蓄超過が大きくなり、需要不足を惹起した。企業特殊的な人的資本含む資本収益率の低下は、日本型雇用の重要性も低下させ、代わって非正規雇用が増加した(第1章)。非正規雇用は労働の質向上の減速(p19)のみならずOff-JT含む無形資産投資を減少を通して供給面のTFP上昇を抑制した可能性がある(p27)。
貯蓄超過は財政赤字のみならず、経常収支黒字としてある程度は吸収されたが、貿易摩擦を生む。貿易障壁への対応としての欧米での現地生産は、東アジア諸国への進出も合わさり産業空洞化を招く。大企業のサプライチェーンが国外に展開したことで、国内に取り残された中小企業は大企業からの技術のスピルオーバーが低下し、供給面のTFP上昇率の減退を招く要因となった(第5章)
この「合理的組織」のしくみ(水平的協働、決定の時間的分業)を把握するためにルーマンを引用する。このしくみが組織が環境変化に対応することを可能にし、業務処理の効率性が高いという意味での「合理性」を実現する(p224)。
ウェーバーを(思想家と言うよりも)社会科学者として再評価し、具体例と経験的な証拠に基づいて研究内容を読解する。比較史や経済史、経営学などの社会科学の知見を豊富に取り入れていることが新鮮だった。 (a)非属人的な(合理的)組織と、(b)組織による変化への対応力を近代的な経済・政治システムの特徴とする見方はノース他『暴力と社会秩序』と重なり、制度派経済学の知見とも接続できるかもしれない。
実際に求職している割合は就業希望率の半分から1/3となっているが、就業希望にも関わらず求職していない理由として、60代前半の男性では「病気・けが」(25%)が最多だった(仕事に関する理由も一定程度あり、「探したが見つからない」(15%)「希望する仕事がない」(9%)という回答が「病気・けが」に続く)。年齢が上がるにつれ「高齢」を理由に求職を断念する割合が増加し、70歳以上では約半数となる。女性の場合、男性と同様の理由に加えて「介護・看護」が男性の2倍前後で60代前半では1割を超えている。
(AIとロボットは自動化技術と一括りにされがちだが)「AI,ビックデータといった検知や予測のツールとしての価値が高い新技術と,生産現場での利用が中心のロボットとは補完的なスキルに違いがあることを示唆している.Agrawal, Gans, and Goldfard(2019)は工場の自動化に関する研究結果からAIの労働市場への影響について広範な含意を導くのは慎重にすべきことを指摘しており,ここでの結果は同様の含意を持っている」(p183)
AIやビッグデータ利用といった新しい自動化技術は、学歴として観察される認知スキルとの補完性が高い。こうした新技術を経済活動に利用するためにも、労働市場の格差拡大を抑えるためにも、人的資本投資を促す取り組みが重要になる。 高等教育は(単純なシグナリングというより)人的資本の蓄積を通して賃金を高める効果を持つことが先行研究で示唆されている(p260)。博士号保持者はプロダクト・イノベーションの実現率を高める効果を持つ(p275)という推定結果は、高等教育を通じた人的資本蓄積の有効性を示していると考えられる。
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この「合理的組織」のしくみ(水平的協働、決定の時間的分業)を把握するためにルーマンを引用する。このしくみが組織が環境変化に対応することを可能にし、業務処理の効率性が高いという意味での「合理性」を実現する(p224)。