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2024年3月の読書メーターまとめ

カノープス
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2024年3月に読んだ本
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2024年3月のお気に入られ登録
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2024年3月にナイスが最も多かった感想・レビュー

カノープス
勝負に負け続けた囲碁侍は最後に天を掴む。満を持しての関孝和登場など見せ場もあり、碁と算術と改暦を絡めた物語の糸はなんとか得心のいく形になる。ビルドゥングスロマンである以上は一定の面白さは担保されるはず。それを書いてつまらないならどうしようもない。えんとのわざとらしいやり取りには食傷気味。春海がなぜそこまで惚れたかもよくわからない。爽やか、とも評することが可能な明るい重々しくない読後感を感じつつ、渋川が乗り越えた数々の死についての記述を思い出す。軽やかというのか何というか、不思議な悲愴感の無さだった。
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2024年3月にナイスが最も多かったつぶやき

カノープス

鳥山明死去 ポップでクールな氏のイラストが好きだった 偉大な才能を日本のサブカルチャーに傾け 幸せな子供時代を彩ってくれたことに感謝しかない 鳥山先生 ありがとうございました

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2024年3月の感想・レビュー一覧
18

カノープス
競馬シリーズの巨匠、フランシス作品初読み。著者自身の元騎手というバックボーンからくる競馬周りの記述の純粋なリアリティはもちろんだが、人生の陰の描写に並々ならぬ力量を感じた。孤独で不幸なザナ・マーティン…ハレーの心に勇気を呼び起こしたこの女性がハンディキャップを乗り越えて力強く歩き出す姿は感動的である。この2人の温かな交流を描いた一点のみでも、並のハードボイルド・ミステリとは一線を画すという印象を残す。私の不満は他の競馬シリーズを紙の本で買うのがAmazonを通じてさえ困難な事にある。全くもって不満である。
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カノープス
初読み作家。監督の采配を安易に「マジック」と持て囃す風潮は嫌いだ。しかし、本書に遺された木内野球のディテールの積み重ねの一端を知るにつけ、甲子園で勝つべくして勝っていたのだという事を思い知る。10年選手の高校球児はいない。どれだけ長くやっても3年の夏でほぼ終わる。結局は監督の力量の差。その木内にしても、自分のやっている事に疑問を持ちノーサイン野球で自立を促すが上手くいかない時期を過ごし、葛藤しながらまた監督のサインで試合を動かす野球に戻る。豪快さと同じ質量の繊細さ。不思議な魅力のある野球人である。
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カノープス
これは単なる回顧録ではない。昭和という時代を必死で駆け抜けた人達に送るレクイエムである。パワハラ当たり前、厳しい営業ノルマをコンプライアンスなど欠片もないブラックな労働環境で課せられる。これだけ負の要素が揃えばひたすら暗い方向に話は行きそうなものだが、根底にある不思議な陽気さが読み味を軽くする。昭和は良かった、と言うことを私は躊躇わない。そこにあるのは、現在の否定ではなく過去の再評価である。アメリカの言いなりに社会を作り変えたツケを払わされている今、つくづくそう思う。あらゆる事が懐かしい。涙が零れそうだ。
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カノープス
山間の村、紙を漉く静かな生活を望む女に起こる悲劇。土着的な世界に起こる生と死、そして禁忌に満ちたエロス。坂東文学の保守本流。坂東眞砂子が坂東眞砂子たる所以がここに凝縮されたような一冊である。坂東にジャパニーズホラーという売り文句は似合わない。民話、伝承の類いをバージョンアップさせたのが坂東、という認識である。未読の作品がまだまだあるのが何より嬉しい。
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カノープス
広瀬氏の落語本を初めて読むなら、志ん朝の死後以降の落語界について、非常に整理と分析が行き届いた素晴らしい内容だと思う。しかし、同氏の「この落語家を聴け!」を読んだ者からすると重複した記述が多く物足りない。重ならない部分にしても、「この落語家を……」出版以後に同書が及ぼした影響など、こちらが期待したものとは少し違うあたりに言及されているように感じたのだが。小三治好きとしては、もっと柳家にふれてもらいたと思ったが、それはしょうがない。自分としては大好きな三三、瀧川鯉昇をこれからも追っていこうと思う。
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カノープス
初読み作家。現在の吉本興業隆盛をもたらした大﨑洋の話。目当てはダウンタウンに関するエピソードだったが、見聞きした既出のものが多く目新しいものは少ない。興味深かったのは、芸人のギャラ事情や印税の交渉の裏側。他に面白かったのは複雑な想いが交錯する木村政雄への記述である。ここには大﨑から見た真実があり、木村には木村の真実があるだろう。両者の言い分を並べ違いが浮かび上がった時に、もっと立体的な時代の証言となり吉本の強さの秘密が明らかになるかもしれない。
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カノープス
詩人が綴る日々の泡立ち。この気取りのなさはどうした事か。本当に谷川が飾らずに自分を晒しているのか、実際の心の根はわからない。しかし、そのように読める事が重要なのだ。【古いラジオの「のすたるぢあ」】は特に素晴らしい一篇として心に残る。少年時代に憧れたアメリカ製のラジオ。60年代以前にアメリカで売られたラジオの写真をまとめた本を夜毎ベッドで眺める事に対し「自分は一体何をやっているのか」とツッコミを入れる。そこはかとないユーモアは一種の照れであろう。この無為に過ごす時間…それが男には絶対に必要なのである。
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カノープス
大手紙に発表のものに留まらず、非常に幅広い雑誌等から選ばれたエッセイ。書き手も様々。エッセイストのようなプロから、主婦という肩書きのアマまで入り交じっている。今の気分として職業作家が書いたものより市井の人が書いたものの方を面白いと思った。これで飯を食っている者のテクニックより、在野の人だから出せる力強さというのか、そんなものに惹かれる自分がいた。
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カノープス
書かれた当時から13年。これだけの時間を経た現時点から著者2人の言い分を検証すると、予測の当たっている事はほとんど無い。それを主眼としているわけではないので問題ないとは思うが…。佐藤はロシア絡みの記述が具体的でその辺が面白い。西原は大して面白くもないし、取ってつけたように時々顔を出す良識派的展開にはシラケた。【世界人口70億人】のコラムでは、UNFPAが2024年に世界人口80億人になると予想しているが、その通りになっているのが流石というのか何というのか。この分だといずれ100億人に。恐ろしい事だ。
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カノープス
志ん朝・談志・小三治。名人3人の中では小三治派である。志ん朝の華も談志の毒も素晴らしいが、結局、自分が落語に求める味わいにぴったりくるものを提供してくれたのが小三治だった。それだけの話である。本書は落語家ではなく「噺家」を自認する小三治の隋談をたっぷり楽しめる。オチ、などという下らない下品な概念はここに存在しない。そこにいて思うままに喋る小三治を堪能すればいい。。滑稽噺をどう捉えているか、などさらりと披露される小三治の落語に対するフィロソフィー、落語の奥義にも注目。小三治亡き今、これは本当に貴重な記録だ。
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カノープス
猪木からUWFを経て連綿と続くプロレス大河ドラマの集大成。プロレスとレスラーに強さを求めた者達の悲願を成就させた2000年の桜庭が、そこに至るまでの道のりと柔術の本質を絡めて描く。著者の言によると、プロレス・格闘技関係の本はこれにて最後との事。猪木×アリ戦の再検証から始まった柳澤の日本マット界を舞台にした旅が、日本人が生み出したベストバウトである、桜庭×ホイスで終えるというのは出来すぎのようにも思うが、万感胸に迫るものがある。頂点の死闘…たしかにこれを書いてしまえば、もうこれ以上何も書くことはないだろう。
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カノープス
One more ピップ・フィッツ=アモービ…完璧な三部作を支持する多くのファンに向けて放たれた【自由研究には向かない殺人 エピソードZERO】。それは大満足のフルコースの最後に楽しむ小さなケーキである。しかし、このささやかなひと皿は料理人の確かな腕を証明する。小さいが緻密で重層的な楽しみに満ち、豊富なアイディアと旺盛なサービス精神に溢れる。順番を変えてもいい。本作を手始めにトリロジーを読むなら、その時は最高のアペリティフや前菜となる。シリーズは終わったが、いつかまたピップに会えるような気がしてならない。
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カノープス
登場人物や放送局の元ネタに思わずニヤリとする、ラジオ業界小説。著者がやっているテレビ番組「生さだ」をほぼラジオに持ってきたような形である。さだのラジオ愛やハガキ愛とともに、メディアに対して言いたい事がストレートに書かれている。この小さなメディアの真髄に触れる金言がいくつも出てくるのが良い。テレビにはテレビのスケールがあり、ラジオにもそれがある。小さな人生を生きる人達の叫びを救い上げろ、という番組の心棒が連呼されるのは、それこそがラジオという皿に盛る料理としてぴったりだからなのだ。
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カノープス
天藤真 初読み。千円出せばお釣りがくる豊かな読書体験。本こそが最強のコスパを誇るエンタメと信じる理由がここにある。とし子とくーちゃんの会話に見られる巧まざるユーモア、スペクタクルと外連味にあふれながら供述調書や新聞記事、テレビ中継などリアルドキュメント風な見せ方を導入する事で保つバランス感覚。そしてこの風刺的な内容は注意深く読めば、日本の制度と官僚的な態度に対する厳しい批判である事に気付く。厳格で「常識的」な警察の捜査との対決のレトリックを考察すると本書がいかに優れ、読者の常識を打破したかがわかる。
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カノープス
勝負に負け続けた囲碁侍は最後に天を掴む。満を持しての関孝和登場など見せ場もあり、碁と算術と改暦を絡めた物語の糸はなんとか得心のいく形になる。ビルドゥングスロマンである以上は一定の面白さは担保されるはず。それを書いてつまらないならどうしようもない。えんとのわざとらしいやり取りには食傷気味。春海がなぜそこまで惚れたかもよくわからない。爽やか、とも評することが可能な明るい重々しくない読後感を感じつつ、渋川が乗り越えた数々の死についての記述を思い出す。軽やかというのか何というか、不思議な悲愴感の無さだった。
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カノープス
初読み作家。勉強の成果を延々と読まされるような小説は苦手である。出足は快調。物語のスタートとしてベストな始まり方だったと思うが、その後の読みがなかなか進まなかった。目先が変わりすぎた事、次々と人が出てきて誰が誰やらわからなくなる等。そして、セリフも所作も「現代語訳」がすぎる、と感じた事。著者の紹介には「ゲーム、映像、コミックなどメディアを横断した執筆活動」云々とあるのを見て、なるほどなと思ったのは偏見だろうか?時代劇というには違和感のありすぎる若手俳優が出る画を容易に想像出来る、ライト時代小説という感じ。
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カノープス
戦争とサッカー。世界に散らばるフットボールファミリーの逆境を生き抜いたレポート。海外サッカーと言えば欧州三大リーグとCLについて書いていればいいんでしょ?という意識からは遠く離れている。こんなすごい物が書けるのは木村だけである。【戦火の中でも劣悪な環境でも爆撃の恐怖に怯えても、何があってもフットボールは手放さない】。何度も涙が出そうになるのは、登場する関係者のこんな気持ちが伝わるからだろう。美しくもやるせないその信念は、過去の話ではない。現在もその想いを抱いて蹴る群れがいる。今、ウクライナで。
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カノープス
初読み作家。焦燥と抑えの効かない血の滾りを攪拌して作りあげた絵。ギグワーカーとしてメリットを享受しながらもデメリットへの不安は尽きない。その時々の時代に生きる働く若者の焦燥の系譜があって、これはコロナ禍を受けての最新バージョンと言えるのかもしれない。自転車と一体になる感覚、ケイデンスを上げる動きの質に拘る事で弱者の残酷物語にフィジカルの色を持ち込んだ。が、この調子でいくのかと思ったところでの中盤以降の展開。正直、これがないと読むのが厳しかった。合わせ技で一本、という印象である。
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ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2019/01/07(1969日経過)
記録初日
2019/01/02(1974日経過)
読んだ本
678冊(1日平均0.34冊)
読んだページ
223359ページ(1日平均113ページ)
感想・レビュー
671件(投稿率99.0%)
本棚
1棚
自己紹介

山本周五郎より優れた作家がいるなら
教えてほしい

※ポリシーはつまらない物も含めて何でも読む事
図書館本、古本の類いは読まない・買わない事
※作品を読み解く事など不可能
自分は自分が感じた事を書くのみ
※積ん読3000冊(推定)消化中
※伏線がどうの、回収がどうの、という事で小説を読むような人は軽蔑する

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