形式:単行本
出版社:講談社
形式:文庫
形式:Kindle版
出版社:情報なし
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(メモ)保坂氏は人間の記憶のありのままの姿、つまり脈絡なく飛び飛びする記憶、をモデルに小説を組み立てている。その目論みは、音楽や造形ならば可能だが言語では難しい、と普通に考えて予想できることを、わざわざやってみせてくれている、という意味では、興味深い小説である。あと、金に執着する人間を見て、その人間も金も疎ましくなるように、猫(や犬)にあまりに執着する姿に、猫(や犬)までなにか疎ましく感じられてしまったのが悲しいのですが、仕方ないのだろうか。
(歓喜の瞬間や悲しみにうちひしがれた瞬間が人生全体を駆動させるという遠い手触り、出逢うはずがなかった時間同士を擦り合わさせる接点、蝶番、あるいは──どれもドンピシャリでなくもどかしく・・・)503 (悲しむのは、ここにあたしがいるからだよ)480 (考えるとき人は自分の意志によって考えているのではなく、意志を離れたものによって考えさせられている)36 (この人はわかるためでなくわからなくなるために考えてるんじゃないか)336 (つうか、人間みたいなのが最初から最後まで一度も生まれない宇宙もあんだよ)451
(・・・最初は言葉によって形容する必要のない気分の中にいたはずだったのにそこにすぐに言葉が入ってきて私の気分を掠めとる。掠めとられたことに私は気づかず座を占めた言葉と揉み合い、もう私の気分でなくただの言葉なのにこの言葉が自分の気分だという錯覚にどんどん足を取られる)411頁
帯のコピーが、うまくこの小説を表していると思う。「やみくもに大切なものを抱きしめたり、ロッド・スチュワートが聴きたくなったり、眠ったり、子供の頃を思い出したり、セックスしたり、叫びたくなったり、何処か知らない所に行きたくなる、富士山と文学と音楽と猫と世界への愛にあふれた小説。」
確かにブンやピルルやアキちゃんや村中美雪といった固有名のかけがえのない世界が小説なんだろうな。
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