形式:文庫
出版社:文藝春秋
形式:Kindle版
コジモ・デ・メディチは銀行を国際事業に発展させてヨーロッパ最高の富豪となった。複式簿記を理解して監査できたからだ。コジモは新プラトン主義にはまる。だがそれは商業を軽視する。長男に簿記を教えず簿記を習った二男が早死にしてメディチ家に簿記を理解する者がいなくなり、孫のロレンツォの時代に銀行は傾く。15世紀末に『スマム』という複式簿記の教科書が刊行されたが、時代の流れで軽視された。16世紀にアメリカ進出で栄えたスペインは、植民地のコストが把握できずに衰退する。複式簿記が盛んなオランダでは商業が盛んで富んでいく。
ルイ14世の会計顧問コルベール、英国初代首相のウォルポール、孫にダーウィンがいるウェッジウッド、ルイ16世のネッケルが、アメリカのハミルトンが会計を発展させる。19世紀に鉄道の時代、帝国主義と資本主義の時代となる。鉄道会社では粉飾決算が横行していた。政府に直接の監督を避ける方法として公認会計士が生まれた。だが大恐慌、エンロン事件・リーマンショックと大事件が起こるが、原因は粉飾決算だった。取得評価から時価評価と代わるとその隙を狙う者が出てくる。会計事務所のコンサルタント業の兼任は義務の対立を生んだのでは。
解説によれば「帳簿が乗っかっている貨幣」=ブロックチェーンは今後の帳簿の歴史を変えていくことになるかもしれないという。帳簿とはお金とは別々に記録するものという大前提が技術革新によって変わり得るということだが、それがどこまで現実的な話なのかは別としても、非常に興味深い指摘だと思った。
徴税人であった聖マタイを題材にした絵画や、ルネサンス期の画家とパトロンの関係、会計を風刺したオランダの風俗画など、美術作品についての言及が随所にあるのも嬉しい。カスティリオーネの『宮廷人』に代表されるような貴族主義的な価値観や、会計不正で私腹を肥やす有力者達からその都度激しい抵抗を受け、正確な監査に基づく透明な会計制度はなかなか生まれず、また長続きしないということが歴史から窺える。
だからアカウンタビリティって言うんですか!(詳細な説明)なんか目からウロコでした。ありがとうございます。
palukoさん、コメントありがとうございます。お役に立てたようで嬉しいです! 改めて今の感覚で考えると税金をとっておいて何一つ報告しない専制君主って不思議な存在だと思いました。当時の人々はどう使われているか興味がなかったかといえばそうではなくてルイ16世時代に発行されたネッケル財務大臣の財務報告はベストセラーになりフランス革命の発端の一つとも言えるそうです。
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