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道草 (角川文庫)

感想・レビュー
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ラーク
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ネタバレ「人間の運命はなかなか片付かない」三人目の娘が産まれた時に、健三が妻に言ったこの台詞は、結末の「世の中に片付くなんてものは殆んどありゃしない」という台詞に繋がっていく。これは勿論金の無心をしに来る親族たちが片付かないという意味合いの一方で、出産で死ぬかもしれないと言った細君が、新たな命を産んで猶生き延びているという経験から得た、健三なりの哲学でもあるのだろう。作中の健三は、若かりし頃の漱石であるが、それを書く漱石本人は人生の終盤に差し掛かっていた。あるいはこの言葉は、漱石自身の人生の教訓なのかもしれない。
0255文字
田中
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主人公健三は、イギリス帰りでプライドは高いが金がない。みんなが金をせびりに来るのでイライラして身重の妻に当たり散らし、全てやらせ、自分はひたすら何もしないし何もできない、やる気もなし感が好きだ。明治40年代から金金金の価値観。倦怠夫婦の痴話喧嘩が永遠続いて、知らんがな、としか言いようがない。
0255文字
優希
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漱石自身の半生を描いた自伝的小説になります。いかにして明治時代というエゴイズムの時代を生き抜いたかが理解できました。当時の日記を覗いている気分になるからでしょうね。代わり映えしない日々を鮮やかな筆で記録している名作と言えると思います。
リンキ

近ごろの冬は彼の身体に厳しくあたった。彼はただ筆の先に滴(したた)るおもしろい気分に駆られた。自分に対する注意の足りない点において細君とかわるところがなかった。彼の視力を濫費して顧みなかった。細君の涙を拭いてやった彼は、その涙で自分の考えを訂正することができなかった。申し出は黙って受け取られた。そうして黙って捨てられた。・・・軽やかな筆致ですよね、

01/16 08:59
0255文字
いもだ
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明治時代の、30代の社会人の日常を描いた小説です。 一般の男性の日記のようなものです。妻への不満と、金を借りに来る親戚にたかられて不満の続く描写が続きます。100年前も現代と同じようかことで悩んでいた事がわかります。代わり映えしない日常と、その日常で起こる些細な揉め事。これを鮮やかな日本語で表現している不思議な小説です。ドラマ性が少ないので、冗長に感じました。でも私はこれまで漱石先生の小説を最後まで読めたことはありませんでした。今回始めて読了できたので満足感はあります。
0255文字
きょうすけ
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『吾輩は猫である』執筆当時の生活を描いた自伝的小説。 金を無心しに訪ねてくる養父母とのしがらみ。口論の絶えない夫婦関係。 実は漱石は両親に喜ばれずに生まれ、幼少時代には養子に出されていた? 義理で結ばれた酷薄な人間関係に苦しむ、漱石の暗部の告白とは・・・ ブログにて考察記事を書いています! https://ks-novel.com/mitikusa/-/48251/.html
0255文字
チバ
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ホントだ。良い小説というのは書き出しが素晴らしい。それを含めた冒頭部分で話に引き込まれ、これは作者特有のつらつらした思いが語られていくのかと思うとワクワクした。勝手なイメージではこの時代で主人に言い返す奥様なんて随分進んでいるなと思った。だからか夫婦のやりとりがそれ程憂鬱さを感じなくこれから新しい時代の幕開けを予感させた。そしてその事を作者が礼賛してくれているように感じた。お産の大変さや病気の描写、作者の胃の痛みを感じながら医学の進歩にも思いをはせお金の問題だけは変わる事がないだろうなぁとぼんやり考えた
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ぽんな
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漱石の後期の名作かつ自身の過去を省みて描いた半自伝的小説。ここにも乃木希典の触れる一説があり、いかにして明治というエゴイズムの時代に影響を受けたのかということがよく理解出来た。道草を経てやがて則天去死へと至る漱石の思想の変遷がこの小説の一端に見受けられる。
0255文字
のほほん
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「女のくせに」「いくら女だって」とお互いに心で思いながらも、健三さんとお住さんは3人目の子供が産まれる日が近づく日々を過ごしています。そんなある日健三さんの前に昔あまりのひどい仕打ちに絶縁した男が現れます。会わない方がよいと言う忠告をききません。そして、会うたびに苦い思い出がよみがえります。やはり最後にひどい要求が出てきます。やっと片が付いてひと安心するお住さんに健三さんは言います。「お前は形式張った女だ。世の中に片付くなんてものは殆んどありゃしない」と。私も「君子は危きに近寄らず」だと思うのですが。
0255文字
アイ子
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とってもとってもよかった!!!小森陽一的には愛に溢れた小説らしい。私小説みたいだった。
0255文字
すなぴー
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夫婦と親子と金の話。親族の金をめぐる人間関係。健三は自分も裕福ではないのに、親族から次々と金をせびられる。完全な他人にはなりきれない親族という関係性の中で、自分のエゴを押し付けようとする人たち。自分を理解してもらえないことに不満をもつが、相手を理解しようとは考えない夫婦。すれ違いと矛盾が徹底的に描かれている。小説の感想だから他人事のように書けるけど、自分も同じような態度をとってしまうかもしれないと考えると少し怖い。これが漱石の自伝的小説らしい。漱石は苦労の多い人生を送ってきたんだな…
すなぴー

「その時細君は別に嬉しい顔もしなかった。しかしもし夫が優しい言葉に添えて、それを渡してくれたなら、きっと嬉しい顔をすることが出来たろうにと思った。健三はまたもし細君が嬉しそうにそれを受け取ってくれたら優しい声もかけられたろうにと考えた。それで物質的の要求に応ずべく工面されたこのお金は、二人の間に存在する精神上の要求を充たす方便として寧ろ失敗に帰してしまった。」

01/22 18:06
0255文字
このこねこ@年間500冊の乱読家
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⭐⭐⭐ 夏目漱石が自らの経験をかなり投影して書いた半自伝的小説。 養父から金をせびられ続け、何だかんだで最後まで渡してしまう主人公が痛ましい。 本当にこんな半生を過ごしてきたのであれば、ひねくれるのもわかる気がする。 それが他の小説にもあふれてきているのですね漱石さん。
0255文字
アトム
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なんかよくわからかった。健三の低空飛行のような話。題名はどうして「道草」なのか。丸谷才一氏の解説が良かった。
0255文字
churu
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主人公の生い立ちや親族の人間関係を背景に、かつての養父母からの金の無心とその顛末を淡々と描いているだけなのだが、それが不思議に面白い。東京の風景や癖のある登場人物を描き分ける筆は相変わらず冴えわたっている。混じり合わない冷え切った主人公と妻の夫婦関係…と思わせて物語の流れで普通に子供が誕生しているのが興味深い。かりそめじみた世界、鵜呑みにするなかれ、という漱石のシニカルな声を聞いた気がする。 ちなみに最初新潮で読んだ時は入り込めなかったけど、漢字や仮名遣いが現代仕様な角川だとすんなり頭に入ってきた。
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蝦
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ネタバレ何かとすれ違う夫婦の話。どこかで理解しようとするものの、共に意固地なので噛み合わないのはよくある話だが、どちらの価値観が正しいと断じないのが良い。主人公の健三には全く魅力はなく、共感もできないのだが、自分もこんな面はあるかもなぁと思ったりもする。
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bigwada
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教養人の孤独な内面の描写が秀逸。
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レモングラス
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漱石が自分と妻のこと、家族、親類、相手の立場にも立ちつつ静かに回想しているが、金銭的に健三(漱石)に不利益をもたらす人たちに、読んでいて気持ちが重くなり、則天去私の心境にはとてもなれない。読むのをやめようかと何度も思ったが、養父に嫌悪感を持ちつつも子どものころに、何でも買ってくれたり我儘をさせてももらったことを忘れられずにいる健一が切なくて読んでしまう。冒頭の帽子を被らない思いがけない男に同じ時刻に何回か出会うシーンの不気味さは圧巻。解説丸谷才一、荒正人、安倍能成、文献抄は好きで何度か読み返した。
リンキ

不気味さこそ、健三の幼児期、生い立ちへの負目の象徴であり、さらに健三の生存そのものが屈辱、羞恥であることを造形することに成功(圧巻)している証であると思います。

01/09 23:40
レモングラス

コメントありがとうございます。また時間ができたら読み返したいです。

01/10 11:28
0255文字
たくみ
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世が世なら訴訟沙汰になってもおかしくない感じだが、よく発表したものだなあと思う。勝てるという自信があったんだろうか漱石先生。ちなみに、常に腹に一物持ってる状態の主人公の心理状態を思うと、読後感はあまりよろしくない。
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t0ram0nt_ novels
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ネタバレ角川のかわまぬカバーが可愛いので、久々に紙の本を買った。やはり、後期の漱石の作品は面白い。主人公の健三は漱石が投影されたキャラクターなので、捻くれてる。些細な場面場面で共感できるポイントが多くて、100年前の人も同じようなことを思ったり考えたりするもんなんだなあ、としみじみ感じる。
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Mayura
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以前NHKの某番組で取り上げられて以来気になっていた作品。奥さんとのやり取りがあんまり酷くて(お互いに)だけど絶望的でもなくて、お互いに対して持っている不満が笑えるほどよく理解できる。ずーっと胃弱かと思いきや最後の最後に、それなりに乗り越えてどこかスッキリしてしまうところが良い。
0255文字
五十嵐
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漱石の悲しい過去が反映された自伝的小説。 ドラマティックな展開はなく、金の無心に来る親戚に対して、主人公夫婦が、金を貸すだの貸さないだのと揉める描写が延々と続く。 断ればいいのに、義理を重んじて結局金を貸してしまう主人公が地味に悲しいです。
0255文字
てんつく
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自伝的小説らしいけど、人の柵とお金の問題が延々と語られてるだけな気が。何となく気になって最後まで読みきった感じ。
0255文字
安田真理名
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ネタバレこの物語は難しい。最近の本のように事件など大きな変化 が、ほとんどなく淡々と物語は進行する。 そこにこの物語の魅力があるのかなと思う。 古典の良いところは表現である。 そう思ったのでこの本の一節を備忘録として残したい。 あたかも自分で自分の身体に反抗でもするように、あたかも わが衛生を虐待するように、また己れの病気の敵討ちでもしたいように。彼は血に飢えた。しかも人を屠ることができないので已をえず自分の血を啜って満足した。(p282) 見事な表現であると思った。何回でも読みたい本だ。
0255文字
左手
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金には負けない
0255文字
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道草 (角川文庫)評価54感想・レビュー23