形式:新書
出版社:筑摩書房
それでもコラムに、ユリアヌスが取り上げられたことは、キリスト教が繁栄する時代にあっても、智を考究するものがいたという実証になる。 ユリアヌスはキケロとともに、現代に智を残したものと言えよう。 ユリアヌスについては、辻邦夫の『背教者ユリアヌス』と、塩野七生の『キリストの勝利』が詳しい。
やっぱ『ソクラテス以前哲学者断片集』やろ。あとは要らん。
さらに知りたい人の参考文献では、ゾロアスター教なら、前田耕作『宗祖ゾロアスター』ちくま新書、1997年あたりがいいのかも(184頁)。第2巻はあまりピンとこなかった。
宗教と哲学それぞれを思う。 また以前から気になっていたがよくわからなかったプラトン主義について、プラトン哲学の受け継ぎ方による分類がわかりやすい。プラトンが設立した「アカデメイア」所属の人々、そのテクストを権威とする人々、その知的な源泉に基づいて自らの哲学や思想を展開するもの。 こうした分類は、他の学知や思想の流れを考えるうえでも参考になる。やはり圧倒的な思想をめぐって、それをつかんで考えるのか、あるいは踏まえて考えるのかの違いであろうが、面白いのはやはり後者だろう。もちろんつかむこと自体が難しいのだが。
その他では、ユーモラスながらもわかりやすい筆致で、ゾロアスター教とマニ教の限られたあり方とその可能性を自然に示す青木健さんの解説。そして、ルクレティウスやグノーシス主義の解説は、個人的に参考になった。
■大乗仏教。大乗仏教の出現により仏教思想が飛躍的に発展。東洋哲学ともいえる思想は大乗仏教において開花。その華厳思想は朱子学の誕生に影響を与え、インド古来の宗教に対しても哲学的深化を促した。上座部仏教に対する大乗仏教の特徴は、その経典の種類と数。大乗経典には、空思想、唯識思想、如来蔵思想といった哲学的・言語論的に深化した種々の思想がおさめられている。「儒教の国教化」がなしとげられた後漢の時代に中国に仏教が伝来したと言われ、5世紀初頭の鳩摩羅什の訳経によって、本格的に大乗経典が中国にもたらされた。
■聖書。ヘブライの掟である旧約聖書を、当時の公用語ギリシア語に翻訳したものが『七十人訳聖書(セプトゥアギンタ)』。この旧約聖書をギリシア語で引用できることは、ギリシア語で書かれた新約聖書の成立にとっても大きな意味を持つ。すなわち、『七十人訳聖書』を通して、ヘブライ主義に根差したキリスト教はすでに根底からギリシア化の波に巻き込まれていた。ギリシア語の東方とラテン語の西方の交流にも翻訳が重要な役割を果たし、聖書のラテン語訳(ヴルガータ)の成立と流布は、その後の西方ラテンキリスト教の自立にとって決定的だった。
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