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世界の法思想入門 (講談社学術文庫 1842)

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Sora
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法思想という概念が、ローマ法やキリスト教を受容した欧米諸国中心に考えられてきたと著者は述べ、ユダヤ教、イスラーム教、ヒンドゥー教の法、仏教の法、中国法、日本法、アフリカ法を順番に解説していく内容。東洋にも「法思想」という概念が存在することを訴え、かつ、法とは何かという問いを考えていく内容となっている。意欲的で興味深い取り組みだが、多くの点で問題のある内容となっている。
Sora

さらに日本の法の章になると、多くの問題点が散見される。まず、古代日本は農耕民族としているが、「古代」とはどの時点を指しているのか不明確だ。また、日本国の法としていわゆる大和民族の法のみを挙げている。日本の先住民族であるアイヌ民族は狩猟を行っているが、著者はどう考えていたのか。また「和」を大切にするという日本国民の気質を挙げているが、その根拠として、「十七条憲法」を挙げている。しかし、これは当時の公務員法のようなものであり、朝廷をそこまで意識していない庶民の習慣だったとは必ずしも言えないのではないか。

11/03 03:29
Sora

また、明治における代表的な法として「明治憲法」を挙げているが、そもそも明治憲法は、植木枝盛の私擬憲法草案や、五日市憲法草案、立志社の日本憲法見込案などの、庶民や国民が作成した草案を参考にしておらず、「藩閥政府」が国民に押し付けた憲法である。著者は現行の憲法は押し付けられたものと述べているが、太平洋戦争終結後に日本側が作成した憲法案が明治憲法と大差なかったこと、現在の憲法は明治期の私擬憲法を参考にしていること、そもそも明治憲法が国民に「押し付けられた」ものであることを、著者は考慮さえしていないのである。

11/03 03:30
3件のコメントを全て見る
0255文字
こうきち
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まあ面白い
0255文字
chang-3
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西欧法の成立史を詳論した上で、ユダヤ法、イスラム法、ヒンドゥー法、仏教法、中国法、日本法、その他の固有法を概観するが、全体的に総花的で散漫な印象。はっとさせられるような鋭い指摘は見当たらなかったものの、法人類学という視点は面白そう。
0255文字
つみれ
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西欧法は西欧法で特徴があるとか、不思議の国日本とはあまり言いたくないがやはり特異であるとか、枝葉の気付きはあったが、全体を理解出来たかというと…
0255文字
孤独な読書人
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ネタバレ世界の法思想入門ではあるが、本書の半分は西洋法思想を追っている。ただこれは仕方のない面もあると思う。普遍性が強い西洋法思想だが、その法思想を支える基盤にキリスト教の人間観がある。そのため他の地域で西洋法思想を継受する場合、その基盤がないところで継受するという難題に直面する。
0255文字
Miya
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法の知識なくして読むには敷居が若干高かったが、プロ倫の解説本は理解の助けとなった。大日本帝国憲法がドイツの憲法を参考に作られたことがその一例であるが、法においても西欧の影響は大きく、著者によれば「西欧法思想は多くの場合に法思想一般と同士されるほど普遍的」であるらしい。西欧法思想が広まっていく過程は、『サピエンス全史』で言及された西洋人の侵略を想起させる。一方、その他の文化と同様に、法においても国や宗教由来の固有法が存在し、固有法と西欧法が融合した形で現代の方は成り立っているそうだ。
0255文字
那由田 忠
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長い間積読だったが、やっと読み終えた。西洋の法思想を整理したかった。その点では、法の支配や権利概念の成立についてはっきりしないままに終わった。その代わり、具体的内容が少ないものの、世界の様々な法思想が、本来のこの本の主旨は面白かった。まだ国家が成立しないような、様々な集団において権利義務関係があったという指摘。制裁中心に見るか、互酬性で見てゆくか、権利義務で見るのは後者だろうけど、もっとこの点を追究してほしかった。
0255文字
Haruka Fukuhara
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勉強になる。
0255文字
masabi
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前著が西欧法思想のみを対象としていた反省から、西欧以外のユダヤ法、イスラーム法、ヒンドゥー法、仏教法思想、中国法、日本法まで扱う。日本でなぜ西欧法を素直に継受できたかといえば、近代化への執着もあるだろうが特定の経典を持つ宗教が定着しなかったためである。古来から宗教と法は表裏一体で生活を監督していた。しかし、日本では中国に範を取った儒教や仏教が日本化され、内在していた法思想も独特の変化を遂げ固有法になった。ある宗教に肩入れするのではなく、現実問題に対応できるものを受け入れる。
masabi

この柔軟性が日本を特徴付け、アメーバ性とも呼ばれる。技術は容易に得ても、理念の習得には時間がかかる。アメーバ性で西欧法思想は受容したけれども、その核心たる市民意識は依然として確立したとは言えない。不十分な市民意識が裁判にも反映されている。

06/01 01:07
masabi

しかし、そもそも西欧裁判が神の審判の地上の表れと理解するのならば、キリスト教圏外の日本の裁判は西欧式裁判の変種という形でしか表れないのだろう。

06/01 01:10
0255文字
壱萬参仟縁
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1986年初出。非西欧の法にも目配りする(裏表紙)。この作法は重要であろう。法思想とは、法体系・法秩序・法文化に関する(35ページ)。哲学は、素朴な感覚・経験や発想・思考を知の理論として体系化すること(51ページ)。イメージ的に法というと冷たさを感じるが、誰のための法か、と問えば具体化してくると思える。中国の法思想は現代の海賊版や著作権侵害はなんとかならないかと思う。財産権とは、社会から公認された物の継続的利用権(270ページ)。アジア世界の法思想まではなんとかフォローできるが、それ以外の地域のルールは?
0255文字
Toru
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第二部だけ。
0255文字
void
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【★★★★☆】'86年著。西欧法を相対化する観点から、ユダヤ、イスラム、ヒンドゥー、日本の各法文化を概観する。特に西欧法を輸入移植する場合や多文化社会における統一国家法制定時に見られる固有法との対立・相互影響は研究途上ながら記述の厚い試論。また、万民法だろうが国際私法のように管轄権を指定するルール法だろうが、世界法の必要性は高まっている。原典がなく西欧法を輸入し易かった(民法典論争みたいな抵抗はもちろんあるが)日本は、確かに親和性が高いが、西欧と法文化を共有していないという特徴もある、という視点は大事。
0255文字
ハチアカデミー
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C+ 比較法思想、法人類学という表現が的確。単なる法制度の紹介ではなく、その歴史的背景、成立過程、外からの影響関係など、なぜ法が権威を持ち得ているのかを考察。現代において多くの国家がルーツとする西洋法だけでなく、イスラム法を始めとする他の法にも言及、考察することで、法とは何かという根源的な問いを提出する。法律なんぞ糞喰らえじゃ、とアナーキな発言をしたくなってしまう昨今だが、様々な人智によって、また集団生活を円滑にしようと思案し書き換えられていくことで、法は成立していることを知らしめられた。良心的な一冊。
0255文字
ヴィクトリー
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どちらかと言うと、宗教や哲学などの上からの法理論の形成の話が多かった。現実に行なわれていたことと、上からの理論との差異とかをより詳しく知りたかった。先に読んだ「比較史のアジア」では、比較対象を「契約」等のように狭く設定しているからやりやすかったのだろうが、あちらの方が興味深く読めた。先駆的な本のようなので、これからそう言う本が出る事を期待する。
0255文字
ささかま
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指導教官の推薦図書。千葉先生の模索が実を結んだ(結び始めた)作品。千葉先生の研究姿勢に感銘を受けた!
0255文字
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