形式:新書
出版社:中央公論新社
幕末の歴史は山川菊栄の「覚書 幕末の水戸藩」と城山三郎の「冬の時代」の印象が強いので、元から内ゲバ争いの印象が強かったのですが、本書を通してより一層暗いイメージが広がりました。本書では全編を通して幕末の暗殺史が解説されていますが、一方で本書に記載のない無名の人々の犠牲も忘れてはいけないと思った次第です。
アヅマさん、ナイスありがとうです。
cabernetさん、ナイスありがとうです。
共通点たしかに…。
「公家は恐れ多くて斬れない。下衆な目明しは刀が穢れるから斬らない。」分かるような分からないような理屈ですが、結局どっちも絞殺。「三人の刺客に襲われた吉田東洋は腕に覚えがあったので一人目と斬り結んだが、残りの二人に後ろから斬られた。」さすがに時代劇とは違いますね。
しかし、日本の暗殺をヤマトタケルから語っているのには恐れ入った。
こないだ、フランス革命の本読んだので、そちらとの対比も面白い。かたや議論の末の処刑・かたや議論が許されないゆえの暗殺。
買ったのが今年の頭なので、そのときに読んでいれば良かったのだけど、今年の大河ドラマ『青天を衝け』を観てしまうと幕末の暗殺劇に大いにかかわってくる水戸学、尊王論の掘り方がちょっと甘いかなと思ってしまう。
あれだけ「攘夷」で人々を煽っておきながら、天下を取るとすぐさま手の平を返した明治政府の豪腕は正直大したものだと思うが、当然それは新たなテロを呼ぶものであった。横井小楠暗殺の廉で処刑された津下四郎左衛門の子息が、父の死にわだかまりを拭えなかったというエピソードが悲しい。日本の近代化があのように尊大な排外思想を出発点とし、その事実に真正面から向き合おうとしなかった事実を忘れてはならないと思う。
暗殺されたヒュースケンが複数の日本人女性と関係を持っており、これが尊攘派の怒りを買った可能性があるというのは重要な論点かもしれない。『民衆暴力』でも、関東大震災後に朝鮮人によるレイプ事件の噂が流れ、これが虐殺を煽る一つのきっかけになったと述べられていたのを思い出す。「異人」による女性の強奪・純潔の侵害というイメージは、容易に排外運動のトリガーとなり得るのではないか。
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幕末の歴史は山川菊栄の「覚書 幕末の水戸藩」と城山三郎の「冬の時代」の印象が強いので、元から内ゲバ争いの印象が強かったのですが、本書を通してより一層暗いイメージが広がりました。本書では全編を通して幕末の暗殺史が解説されていますが、一方で本書に記載のない無名の人々の犠牲も忘れてはいけないと思った次第です。