形式:単行本
出版社:KADOKAWA
それから関係性を象徴する表現も拾っておくと、作中に出てくる二つの「どんな関係だったとしても」に、ふたりの向き方が出ている。蓮見さんのほうは、別の世界線を想像した上で、実際の報われない高校時代の関係性を心に落とし込んでいる。対してほむら先生は、教師と生徒という関係性を他の世界線と同列視して、個人間の目線で蓮見さんを捉えている。二つの意味合いの違う「どんな関係だったとしても」が、出会いによる内面の変化という共通項を描き出すこのねじれが↑の感想とも重なるように見えた。
最後に、「特別」と「好意」と「恋愛感情」の不確かさと曖昧さに触れておきたい。ほむら先生がいつから好きだったのか、というところで彼がわからないと答えるところにそういう曖昧さがつまっているように見える。「好き」という感情の定義から離れた、ひとりの人間の願いに関わってくる世間の目というものの処理について、特に「教師と生徒」という関係性を軸において、かれらだけの物語として展開させたところにこの作品の神髄が宿っているのではないだろうか。
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