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増補新版 漢帝国と辺境社会: 長城の風景 (志学社選書, 006)

感想・レビュー
8

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ねぼすけ
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一つのテーマに対して徹底的に掘り下げていて非常に面白かった。本書は同名の中公新書の増補版。内容は漢帝国時代の西域、匈奴との境界の最前線の様子を解説していた。非常に詳しくて勉強になった。場所としては河西回廊のあたり、というか居延漢簡の発掘場所であろうエチナ河下流のイヘン=ゴル(ゴルが川の意)、ソゴ=ノール(ノールが湖の意)辺りの望楼の施設やそこに勤めていた兵士たちの様子を詳しく解説していた。
ねぼすけ

辺境の最前線には「燧(すい)」あるいは「烽燧 蓬燧(ほうすい)」と呼ばれる施設が作られていた、燧は望楼の「堠(こう)」と居住区の「塢(う)」からなっていた。堠はおおよそ9メートルほどの高さ、塢は通常一辺10メートル以内の方形だそう。割と小さそう。1つ辺りの施設に勤めていた兵士の数も3〜5人程度と書かれていた。この燧に勤めていた兵士は「戍卒(じゅそつ)」と呼ばれていたそう。本書だと他にも候官以下の下級官吏や部都尉と呼ばれる長官なども説明されていた。勤務の実態についてかなり詳細に解説されていた。

09/11 17:40
ねぼすけ

そして、著者の述べる燧が国境として作られてから耕地が開発されたのでなく、耕地が開発された後に燧が作られたという話や、七稜觚という漢字の練習に使っていた簡牘の話も面白かった。日本語で七稜觚だと検索しても出てこないがおそらく「玉门花海汉简」や「玉门花海木觚」と検索して出てくる物が七稜觚かと思う。漢の時代に生きている人々の生活の様子が伝わってくる非常に良い本だったと思う。

09/11 17:40
0255文字
MUNEKAZ
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木簡史料を中心に、漢帝国の西域防衛の日常を紹介した一冊。西域というと砂漠にポツンと楼閣や長城が並ぶさみしくも幻想的なイメージなのだが、実際は差に非ず。緑豊かなオアシス地域を中心に農耕が営まれ、兵士たちが家族とともに同居する賑やかな感も。さらに対匈奴の防衛ラインを維持するために農地が開かれたのではなく、もともとオアシス地帯にあった農地を守るために防衛施設が作られたというのも目からうろこであった。補論で書記の資格を目指して勉強(内職?)に励む兵士の姿が描かれており、古代でも変わらぬリスキリングの現実に嘆息も。
0255文字
kuroma831
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漢代に対匈奴の最前線だった西域の暮らしを鮮やかに描く名著。2〜3kmごとに烽燧が連なる長城にどれぐらいの数の兵士がいて、指揮系統はどうなってて、兵士の出身地はどの辺りで、家族はどのように暮らしていて、という細部まで描かれる。大量の木簡情報を元に、当時の給与明細や兵士たちの出勤簿、売買記録までミクロな暮らしが浮かび上がる。とにかく漢代の官僚制度、文書行政の完成度に感嘆する。木簡の運用ルールも非常に緻密で感動した。補編の「書記になるがよい」も古代の文字との関わりが見える非常に良い章だった。めっちゃ面白かった〜
kuroma831

個人的に目から鱗だったのは、対匈奴の防衛線である長城に食糧を供給するために開拓民が住むのではなく、オアシス地帯の入植者を守るために長城が作られているんだ、という主述逆転が興味深かった。長城勤務の兵士は砂漠の中で城を守ってると思いきや、背後のオアシスに住む開拓民を守ってるというのは、自分の中の映像イメージが更新されて良かった。2000年以上前の漢の辺境地帯で給与明細や出勤簿、防災ルールみたいなのが残ってると思ったら凄いよなぁ。めちゃくちゃ良著でした。

11/11 02:32
0255文字
aeg55
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タイトルから『武帝紀』(北方謙三)の時代の辺境社会についての本と思い読んだ(ただし旧版だった)。2000年前の辺境までも漢帝国の規則が文字によって伝えられて残されていた、という事を知る。西域に長城が伸び並べられた燧により情報が伝達される仕組み。三国志での関羽の狼煙台より300年前に既に存在していたということになる。勝手に考古学ロマン的な内容をイメージしていたが、漢簡に記された漢文の読み下しが主。文字、漢文の情報量の多さを再認識した。
0255文字
さとまる
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漢代の匈奴とのフロンティアだった西域警備について、残された木簡史料を中心にその生活レベルで描いている。以前に中公新書で読んだ記憶はあったのだが、内容は全く覚えてなかったので新鮮な気持ちで読めた。今回書き起こされた補篇も合わせて読むと、官僚制が発達してて、辺境の人々にも文書管理能力が求められていたことがよくわかる。
0255文字
すいか
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漢代、対匈奴防衛の最前線だった河西地域について、考古学の成果を駆使して、烽火台や長城などの防衛施設の姿とそこに駐在していた兵士や官僚、その家族たちがどこから来て、そこでどんな暮らしをしていたか、丁寧に明らかにしていき、この時代のフロンティアの姿を生き生きと描き出す。エピローグで引用されたローマ帝国支配下のブリタニアへの言及は、東西両帝国の辺境支配の在り方の比較という意味以上に、大帝国の辺境で異民族と向かい合って生きる人々の物語がそれぞれに浮かび上がるようで、歴史の広がりを感じさせる構成だと思った。
0255文字
鏡裕之
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漢の国境防衛に携わる辺境の役人と兵士がいったいどんな人で、どんな場所に住み、どんな階級社会にいて、どんな仕事をしていたのか、具に記した名著。ファンタジー書きには必須の一冊だと思う。ただ、あくまでも官僚制が発達した古代中国の世界であって、官僚制が未発達のヨーロッパ世界でもこうってわけじゃないんだけどね。漢のケースが中世ヨーロッパにも当てはまると思ったら、大間違い。でも、比較のための知識として、とても有用。大変面白く拝読しました。籾山先生、素敵な本をありがとうございます。
0255文字
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中公新書で出ていた物の増補版が出た。居延漢簡の内容をもとに、辺境の防衛の仕組みや暮らしの一端が描かれる。 https://historia-bookreport.hatenablog.jp/entry/2021/11/30/000000_1
0255文字
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