正直に言うとバイロンの「吸血鬼ダーヴェル」が筋だけで味気ないのに対し、ポリドリの「吸血鬼ラスヴァン」が怪異でもあり、魔性の男でもあるラスヴァンのピカクレスものとしての読めるので物語の面白さとしては後者に軍配を上げたい。「黒い吸血鬼」は生き残った黒人奴隷の少年を「慈悲深く」頭をかち割って海に投じようとする主人に絶句。しかし、黒人の王でもある吸血鬼が奴隷主人の未亡人を誘惑し、彼らを生き返らせてはその無様さを嘲笑い、黒人と白人の転換を示唆し、革命を促す姿は畏れを催しながらも神々しい。
「カバネル夫人の末路」は悪意や思い込みに煽動される民衆の恐ろしさを描く。目を覆う惨劇にはならなかったが元凶は奥方よりもどっちつかずな態度でいた主人じゃないか?後、アデルは代理ミュウヒハウゼンじゃないかと思わせる部分があるのが怖かった。「魔王の館」は作者がナチス信奉者の詩人であるという経歴も凄いが、人の才能を吸い取り、捨てる精神的な吸血鬼を描いた変わり種も凄い。最も「娼婦は番号で呼ぶべき」という部分にはヒヤッとしたが。
この機能をご利用になるには会員登録(無料)のうえ、ログインする必要があります。
会員登録すると読んだ本の管理や、感想・レビューの投稿などが行なえます