形式:単行本
出版社:原書房
ソロモン王の神殿は実在しなかったが、ユダヤ人にとってバビロン捕囚という屈辱の時代に人々を纏めあげた理想の物語だった。ラーマ・ヤーナは物語だが東南アジアの王権に大きな影響をもたらしたし、『アエネーイス』というイリアスとオデュッセイアの二次創作はローマ人の共通の歴史 に大きな影響をもたらしている。なにより凄いのは旧約/新約両方の聖書についての記述。イスラエル王国もモーセの脱出も、イエス・キリストの存在すらも同時代の資料には全く存在しないという。聖書に書かれているだけの物語が人類に大きな影響をもたらしてきた。
死海文書や当時の記録史料などを付き合わせた時、イエス・キリストは紀元以降には存在せず、紀元前1世紀にいたクムラン教団のメシア・義の教師の伝説が原型となって成立した物語なのではないか、という説は本当だとしたら凄すぎる。キリスト教徒でない人間の多くも「流石に奇跡とか復活はしてないだろう」とは思っても実在までは疑わない。そういう人が西暦元年以降に産まれて布教した、ということは事実だと思っている。しかしそれすら後年に成立した物語だとしたら?この物語という認知のフレームの強固さに畏怖と感嘆を覚えずにはいられない。
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