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エラスムス 闘う人文主義者 (筑摩選書 271)

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馬咲
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執筆動機は学生運動直後の東大での対話形成の苦労にあったという。エラスムスの理想的ユマニスト像のベースが、モアが代表する英国人文主義者の「世論」に動じず「コモンセンス」を重んじる姿にあること、『痴愚神礼賛』には鋭い人間批評とともに、「愚かしさ」への温かい理解と共感があるといった指摘が興味深い。彼の「寛容」は古典が伝える人間性への共感と、聖書校訂のような学術的キャリアに基づく。多くの写本の比較検討から真正の文章を確定する作業が、人間理性の限界の認識、多様な理性との連帯の必要性、相対的真理の尊重等を彼に教えた。
馬咲

宗教的にも国家的にもあらゆる党派的な活動には与せず、闘争の危機の接近を察するたび移住を繰り返したエラスムスは、同時代の人々からはいずれの党派を支持するのか立場を明確にしないことを糾弾され、後世の歴史家からは「逃避的人生」、「臆病者」と評されもした。しかし、終わりの見えない争いの時代にあっても国家や宗派の境界を越えた「世界市民」であろうとし、理性的な言葉(彼は「共通言語」としてのラテン語に終始情熱を傾けていた)による繋がりをあくまで求め続けたところに、彼の確固たる「闘い」があった。

11/21 10:00
0255文字
Francis
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先月亡くなられた高階秀爾先生による16世紀を生きた人文主義者エラスムスの評伝。高階先生が1971年の学生運動の余韻の残る世相の中お書きになったもの。ホイジンガの「エラスムス」は読んだことがあるが、あまりピンと来なかった。当時のカトリック教会を厳しく批判しつつもルターのように教会の分裂を望まず、聖書の校訂と理性による解釈を通じて古代教会の精神に立ち返ろうとしたエラスムスの生涯を高階先生は見事に描き出している。人間の理性を信じ、平和を願い続けたエラスムスの生涯を知ることはとても意義のある事だと思う。
0255文字
tsuki2b
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痴愚神礼讃は読んだことはある。その著者エラスムスの評伝。当時のヨーロッパでは優れた教養と、高い権威を持った人だったのね。新旧キリスト教の対立に巻き込まれながらも、理性を信じ、世界市民として屹立する姿、その一貫した姿勢、なんとも凄い人だ。
0255文字
Sora
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人文主義者エラスムスの生涯、著作、主張を解説する内容。エラスムスは『痴愚神礼賛』で有名だが、キリスト教を否定しているわけでは決してなく、むしろカトリック教会内部の改革者であり、古代ローマの著作を愛する人文主義者でもあった。また、最初はルターに同情的だったが、ルターが理性と自由意志を否定すると反論のための文書を書いた。しかし、それは当時のカトリック教会のように誹謗中傷するような内容ではなく、主張が相いれないために書いたものであり、ルターもそれがわかっていたため、エラスムスを中傷することなく反論している。
Sora

また、『戦争はそれを知らぬ者にとってのみ美しい』(邦訳『戦争は体験しない者にこそ快し』)と『平和の訴え』で、戦争を始める権力者や戦争を利用する聖職者、戦争で儲けようとする人達を批判している。現代社会では必読の書と思われる。

07/06 20:20
0255文字
takao
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ふむ
0255文字
ジュンジュン
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西洋美術史の御大と思想家の珍しい組み合わせ。まだ学生運動の余燼が燻っていた頃、教鞭をとってた自分自身とエラスムスの逆境が重なったとか。50年前の著作だが、そこは高階先生、読みやすい。神々の王ジュピターに多くの神々が道を譲るなか、テルミヌス神だけが拒否したという神話に由来する「我、何者にも譲らず」の成句。エラスムスが座右の銘にしたこの一句をキーワードに、激動の時代(宗教改革)を生きた生涯を跡付ける。
0255文字
Go Extreme
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我、何者にも譲らず:不信と混乱の時代に 不信の時代:誰からも求められた ロッテルダムのヘラルド  変革への底流:神曲の影響 世界の終末・新しい宗教 古代へのめざめ:古典への没頭 学問と信仰の調和 修辞学 ふたつの友情:ジョン・コレット トマス・モア イタリアへの旅:ルネッサンス最盛期 ヴェネツィアの印刷業者:イタリアから得たもの アルドゥスのアカデミア ゆっくり急げ:寓意表現 痴愚神礼讃:人文主義的文化+民衆文化 道化の存在 宗教改革の嵐:なぜ戦争が起こるのか 嵐のなかの生涯 自由意志論争 栄光ある孤立
0255文字
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