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日本文学史: 近代から現代へ (中公新書 212)

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nobody
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元素記号を説明しない化学入門書はないが、文学専門用語を解説せず文学史を書くのは奥野健男である。奥野が独り善がりの有り体にいえば出鱈目なのは相馬正一「太宰治とコミュニズム」の綿密な検証によりとっくに証明されているから要警戒の姿勢で臨む。本書はあくまで奥野の主観である。奥野によれば〈引かれ者の小唄性〉は文学の本質になるが、森鷗外と村上龍が怒るだろう。文芸評論そのものが無より妄想を生じさせそれを展開させるものだから、果たして“文学史”というものの有無も時間の存在と同様に怪しい。あるのはせいぜい作家間の愛読・影響
nobody

関係くらいだろう。純文学と大衆文学の区分など初めから無意味であり、その隔たりが曖昧になってきましたなどという叙述が無価値なのだ。例えば“戯作性”という用語を前近代の否定すべきものとするが、坂口安吾の用法により私は文学の要素として肯定的イメージを抱いており、事実その後も何度も復活してくる。また奥野は“通俗性”という用語を否定的に用い、これが小林秀雄病の温床なのだと気付いた。奥野のトンチキな造語の中で唯一有用なのは〈内的必然性〉だ。文学にまず根底的に必要なのはこれである。どうしても書かずにはおれない心から湧き

01/12 00:03
nobody

上がってくるもの。これ以外を読まされてはたまらないが、実際世に溢れているのはノルマ、ルーティン、冗長、惰性、やっつけ仕事、水増し。芸術家の中でなぜ作家だけが自殺するか、実人生と作品の一致が問われるか、文学史に時代の流れが描かれるか、それは〈内的必然性〉と通底するのだ。即ち文学とは生き方であり、奥野のいうようにそれが宿命的に反逆性を帯びるのは、権力=体制が必然的に人間疎外を強いるからである。進歩発展を夢見れたのが近代、現代が「未知なる状況への突入」とするならば、それは〈窮屈で退屈な時代〉として固まったのだ。

01/12 00:29
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きいろいくま
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ある程度近代の作家は読んだと思われるので整理がてらに。時代の思潮がよくわかる。江戸→明治、明治→大正、戦前→戦後といった時代のターニングポイントにおける文壇の動きが俯瞰できる書。特に戦後の文学は人数も膨大になり、ごちゃごちゃに理解していたのでいい参考になった。デビュー時の石原慎太郎氏ってそこまでの人気だったのかという驚きもあり。整理にはベストの本だが、個人的に文学作品を読む上では先入観を持たないでいろいろつまみぐいして読んでみるのが一番だと思っているので、あくまで勉強用として今後も参考にしたい。
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tajidanslemetro
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分かり易い。戯作文学から大江健三郎まで
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本命@ふまにたす
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近現代の日本文学の通史。全体の構成として、昭和期のいわゆる当時の「現代文学」にかなりの紙幅を割いているのが特徴か。やや古い本だが、今なお近現代日本文学の見取り図としては有用だと思う。
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光心
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幕末から現代までの日本文学氏を流れで俯瞰出来、これは良書であることに疑いの余地はない。この本を読んだことで当時の文豪たちが何を目指して、何と戦って、どういう経緯であのような物語群が生まれたのかがわかって非常に面白かった。日本文学については造形を深めていこうと思っているのでまずこの本で概要を掴めたのは大きいと思う。後は個別に作品を読んで実際にどういう物語なのかを肌で感じる他ない。読み終わるのに2週間くらいかかったけど、これは読んでおいて損はないだろう。
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ネムル
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明治から大江あたりまでの文学史。国語のお勉強として学んだ漠然と点の知識が、ある程度線として繋がった。昨年は一年かけて日本文学フェアをやったものだが、もっと早く読んでおけばよかった。70年の著作なので、ここで描かれている文学史がどのように更新されているかは知らないが、江戸戯作文学との繋がり、『浮雲』の新しさは言文一致でなく作者と主人公・小説の構成が結ばれていることなど、多くの発見を得られた。また、繰り返される日本の西洋文学コンプレックスが特に興味深い。
ネムル

大正になってようやく近代文学が根付いたときには、世界的に近代が終わり現代になっていた→文学の革命・新感覚派、革命の文学・プロレタリア。あるいは第二次大戦後の文学がいっとき現代から近代文学に先祖帰りし空疎になっていく→第三の新人や三島、安部など。

01/21 21:14
ネムル

西洋の文学コンプレックスとマルクス主義へのコンプレックスが文学を前進、模索させる両輪になっている。この両コンプレックスがなくなったことで、ついに日本の現代文学が始まる、という結び。

01/21 21:17
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くにお
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明治時代のから1970年までの約一世紀まで、近代文学の成立から戦後現代文学の模索までの日本文学史概説。明治の近代化の中で意識的に切り捨てられようとして切り捨てられなかった近世やそれ以前の日本文学の伝統の上に西洋文学を輸入、吸収し、私小説を中心として成立した日本近代文学の成立、そして大正時代の成熟という流れはとてもコンパクトにまとめられていて、それぞれの文学運動の有機的なつながりもわかりやすかった。戦中から戦後の流れは羅列的に作家を紹介していて、ちょっとフォローしずらい。最後にIndexがあると便利と思う。
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Y.Yokota
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執筆は1970年、昭和も45年が経過している。明治から長い年月を経て、もはや当時を直接に語る人間もいなくなった。だからこそ日本文学史の中でも激動の時代を、客観的に歴史的展望で眺めることができる––。そう述べる著者の気概には感動すら覚えます。少なくとも目的である近現代文学史の鳥瞰は立派に果たしていると言えます。
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西寺
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「武者小路、志賀を中心とする「白樺」派の小説は、小説の造形性、物語性より、自己の心や体験をありのまま描き、自己を強烈に主張することに重点が置かれています。これは同じく虚構性を排し、ありのままの自己を告白した自然主義文学と共通していますが、自然主義のペシミステックな自己暴露とは違う開放的、優越的な自己表出で、当時の文学愛好の青年たちに強い影響を与え、わが国独自の小説形式である私小説、心境小説を直接生み出したということができます」
西寺

承前「文学青年たちは自分のために――自己拡充、自己完成のために、文学を書くということに自信を持ったのです。私小説は文学史的に見ると、被害者的、破滅的な暗い自然主義文学を母親として持ち、自己拡充、調和的な明るい「白樺」派を父親に持つことによって、日本文学の主流としての正当性をながく保持し得たのです」

12/13 01:35
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ともすけ
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課題本だったので購入。坪内から純粋戦後派あたりまで書かれている。この手の本で新書でこれほど簡潔に書かれている本は読んだことがなかった。個々の作家についての言及は少ないのだが、まさに「文学の歴史」を網羅した本だといえるだろう。ドナルド・キーンや加藤周一が長くて読むのが大変という人はまずこちらを読んでみると明治からの約100年の文学の歴史を俯瞰できるのではないだろうか。個人的に興味を持ったのは、新感覚派と戦後派の作家。戦後派は特に読んでいる作家が少なかったのでこれから読んでみたいと思った。
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ken
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 太宰研究の第一人者でもある奥野健男。『御伽草子』の解説が個人的にとても良かったので、彼の『日本文学史』を読んでみた。 坪内逍遥の『小説神髄』によって近代文学の輸入が始まった明治初期から、主体的な文学が芽生えた戦後昭和40年頃までの流れを簡潔にまとめてくれている。それぞれの作家たちの代表作や内容も紹介してくれるので、読書のガイドブックとしても非常に役に立つだろう。ただし、カタログ的な色合いが強いので(もちろん全体を鳥瞰することが本書の目的なのだが)、より深い文芸評論を読みたい人にはもの足りないだろう。
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真黒コスモス
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「文学部なのに文学史知らない」コンプ解消のために購入。教科書に載らない人も多いんだなぁと。時代の流れと文学がどう繋がってるかが知れて良かったです
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青龍
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途中から雑多な代表作の羅列になっているのは残念だったが、明治大正の自然主義をめぐる文学の流れを知ることのできる佳品である。
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さざ波キノコ
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読んだから何か分かる類の本ではないですが、図書館で文学コーナーに足を運んだ時に読むべき本を手に取るための導きの糸としては最適か。非常に多数の作品が(羅列的ではありながら)紹介されている点で情報量十分。
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とやづ
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かなり分かりやすく、大きな流れを追えます。作家の名前は知っているけど文学史なにそれおいしいのレベルの私にはちょうど良かった。ある程度著者の見解も入りの、それでも偏ってはおらずの。家に欲しいです。
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1988
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文学史入門書としてすごく勉強になった。古い本なので、70年以降の文学については書かれていない。短時間で明治から昭和に名を遺した作家を「名前だけでも」記憶にとどめたいというときには便利。
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Riku Lu
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近代文学の入門として読んだ。
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YY
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文学史の本は初めて読んだが、これは流れがわかりやすくてとてもよかった。
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さぼ
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② はじめての日本文学史。嘉村礒多、室生犀星が気になったかなぁ。
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ミーコ
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今さらながら、日本の近現代文学史を勉強し直すことにして本書を手にとった。近代文学は西洋文学の影響だけでなく、江戸時代の戯作や人情本の影響に負うところが大きいのだという説明には納得がいった。時代ごとにぶつ切りにして考えるのではだめなのだ。現代の文学も大きな歴史の流れの延長であり、あくまでもその一部としてとらえるべきなのだと実感した。こうした歴史をおさえた上で、「現代」というものは論じられなければならないのだな。また、日本の文学において「私小説」というものがいかに大きな存在であるかということも思い知らされた。
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根室
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教科書日本史の文学史のとこを大きくしたような本。 文学史の流れの中の共産主義とか社会主義のウエイトの大きさに感心した
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くろねこ文学
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日本近代文学を概観するのに良い本である。作品成立時の社会状況の説明が詳しいので、時代と作者・作品とが結びついて文学史の流れがたいへんわかりやすい。
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カブトムシ
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私は高校時代に帰宅部でした。その日帰宅すると、いつものように祖母がいました。テレビをつけると、三島事件がリアルタイムに報じられていました。その時によくテレビに出ていたのが、この著者でした。その時のコメントが窺われます。「文学的には芸術至上主義的、虚無的色彩を深め、個我を超越し、志だけが再生輪廻する東洋的、仏教的な畢生の長編四部作『豊饒の海』を昭和45年(1970年)11月25日書き上げます。そしてその朝、彼は楯の会同志と共に自衛隊に赴き、天皇の軍隊として決起をうながす演説をなし、壮絶な自刃を遂げました。」
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