読書メーター KADOKAWA Group

くもの巣の小道 (福武文庫 カ 1201)

感想・レビュー
8

データの取得中にエラーが発生しました
感想・レビューがありません
lico
新着
銃という大人の世界の象徴を盗み出したことで、子供の世界からは完全に切り離され、されとて大人の世界に受け入れられることもなく神秘的な霧の中を彷徨う少年の姿が描かれる。死が主人公にとっては何かよくわからない何かとして巧妙に隠されていることが印象的だった。全体を通して主人公の少年を中心とした世界が描かれ続けるのだが、それだけに主人公が完全に消え去るキムとフェッリエーラとの会話の異常性が目立つ。カルヴィーノが物語の枠組みを変えてまで伝えたかったことはしかし、現代では今一理解しがたい思想になっているように感じた。
0255文字
やいっち
新着
古書店で発掘(?)した。レジスタンスに生き闘い倒れた群像を少年の目線で描くが、そこはイタロ カルヴィーノだ、ひと味もふた味も違う。レジスタンスについては映画でも英雄として描かれる。が、現実の戦争は今生きている我々と同じ社会に生きるような、いろんな人々が巻き込まれる。大人や子供、男と女、健常者に障碍者、真っ正直な奴にずるい奴、日常が戦闘状態になる。地を這うような視点で高邁と低劣とを描いていく。長編ではないはずなのに、読み応えたっぷりの小説だった。
0255文字
twinsun
新着
ネタバレどちらの側にも理想はあるだろう。ただどちらにいてもただ戦って死んでしまう。生きているものは歩き続ける。
0255文字
ぞしま
新着
カルヴィーノの初長篇、変てこパルチザンもの。娼婦を姉に持つ少年ピンが主人公だけど、成長小説ではない。もちろん(いわゆる)レジスタンス文学でもない。そこからかなり遠いと言って良いと思う。 基本的には少年ピンの目線なんだけど、そうじゃない視点での語り口の妙さが浮き立っており立体的で面白い。パルチザン連中のずっこけ具合とかっこいい具合と、間の抜けた所でよくわからない叙情が差したり、変に真面目な記述があったり、バタバタとっちらかしていながらも何か芯を感じ、大変好みであった。カルヴィーノて最初から凄かったんだな。
ぞしま

群像劇みたいなところも魅力の一つ。最後は怖い終わりという理解で良いのかな?ピンとクジーノの手をつなぐシーンがハイライトだっただけに、一筋縄では行かせないとこへの気配りがあんまり得意じゃない理由なのかしら、と思ったり。

06/16 23:58
0255文字
新地学@児童書病発動中
新着
イタリアの国民的作家と言われるイタロ・カルヴィーノの処女作。第二次世界大戦のイタリアのパルチザンを主人公の少年ピンの眼から描いていく。後の作品のような前衛的な小説ではない。それでも文学の魔術師と言われるこの作者独特の筆致は、この作品から現れている。戦争を描きながら、どこか童話的で瑞々しく、『レ・コスミコミケ』のような透明な無邪気さを漂わせている。「くもの巣の小道」はピンの心の故郷のことだ。そこではくもが穴に巣をつくる、とピンは信じている。この魔法のような場所を支えにして、彼は戦争を生き抜く。
0255文字
更新停止中
新着
奇想に惹かれて読み始めた作家なのでこれは守備範囲外かな、と思ったら予想外によかった。『戦い』と『男』を底の底からの視線で「美化せずに描く」という形の「美化」と言ってしまえばそれまでだけれど、その駄目なセンチメンタリズムが一周回って美しい。あとこの人は本当に子供を描くのが上手い。大人にとっての子供ではなく子供が知っている子供の姿。よっぽど子供が好きか心底ガキが嫌いかのどっちかだと思う。
0255文字
シンドバッド
新着
カルヴィーノに初めて接し、魅了された本。
0255文字
全8件中 1-8 件を表示

この本を登録した読書家

くもの巣の小道 (福武文庫 カ 1201)評価88感想・レビュー8