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宙返り 下

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のうみそしる
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上巻に比べて出来事の動きより人物たちの語り合いが多く、それが途中ではしごを外されるような印象が多かったので少しまだるっこしい感じがした。質問に対して答えているうちにいろいろ派生してうやむやの三点リーダ、的な。そして難解。でも、神を信じるというのは「自分自身を垂直的にとらえるようになることです。水平軸にそってだけ考え進めなくなる」というのはギー同様なんかいい答えだなと思った。最後の最後で物語がぐんぐん動いていくのはさすが。森や窪地の描写が細かいんだけど位置関係とか把握する気力もない。なんとか読み切った、、。
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belier
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正直言って、大江作品を読み慣れていて再読なのに、読むのに難儀した。個人的には、特に前半だが、80年代前半頃までの難解な大江が少し出ているようで、読みにくい作品になった印象だった。面白い物語を読みやすく提供してくれる後期大江作品群のはずなのに、という点で不満だった。しかし終章において大江の宗教観がくっきり表明されており、大江文学を深く知る上で重要な作品であると思えた。傑作『燃え上がる緑の木』でも明快には書かれていないと思う。宗教観をはっきりと書いておくことが、この作品の創作動機だったのではなかろうか。
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ひと
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立ち上げた教会には元信者たちが集まってきて、師匠は癌患者を治す奇跡を起こす。集会の説教では、世界の終わりに向けて悔い改め新しい人となるため踏み出せと説いたあと事件が起きる。。上下巻ともに、難解でしたが最後まで読んで良かったです。
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amanon
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後期大江がこれほどの作品をものにしていたとは!前編の『燃え上がる〜』が未読なため、正確な批評が困難なのは否めないが、それでも本作品は今後様々な意味で俎上に上げられ、また評価に値するものだと思う。とりわけ、反キリスト教というスタンスを掲げながら、なおかつキリスト教に寄り添う姿勢を隠さない師匠(パトロン)のあり方には、一キリスト者として大いなる興味を喚起させる。それだけでなく。一読しただけでは理解の及ばない数々の謎を散りばめた一作。再読したいが、まずは一息ついた後のほうが良さそう。とにかく凄まじい読書体験。
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あかつや
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悲劇を乗り越えて読者におなじみ四国のあの土地で再出発する師匠の教会。物語の構造としては『懐かしい年への手紙』『燃えあがる緑の木』そしてこの『宙返り』と続く一連の小説は全て共通している。しかしそれはただの退屈な反復ではなく、作者がよく言及し、本作中でも語られた「ズレを含んだ繰り返し」であり、少しずつ高められているということなんだろうな。前2作では有耶無耶に頓挫していた活動が、今作では明確に次代を担う「新しい人」へとバトンを託されるのが、三部作最後としてとても清々しい締めくくりだと思う。少々下痢便臭が漂うが。
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ロータス
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上巻から興奮冷めやらぬまま下巻に突入し、『燃え上がる緑の木』『万延元年のフットボール』『同時代ゲーム』を通じて登場する人々に再会して感極まった。最終章に向けてのクレッシェンドは圧巻。/最近大江さんの話を聞かないが、もう小説を書く気はないのだろうか……。こんな重大な小説をユーモアを保って書ける人は世界でも大江さんしかいないよ。大江さんは「信仰を持たない者の祈り」という文章を書いたことがあるけど、信仰を持たない、持てない人間の方が実は神について真剣に対峙しているのではないかという気がした。
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Y田
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ネタバレギー兄さんとパトロンの違いについて考えている。ギー兄さんは救い主の「空き」を埋める"前キリスト"だった。パトロンは宙返りしたが、それにより終末が近い事がより強調され「悔い改める新しい人」となる事を意識させる"反キリスト"だった。この二者が四国の谷間の同じ土地で時を置いて活動しようとするのが興味深い。更に、「壊す人」や一揆指導者、土地の信仰の流れを持つギーがこれらを統合して「悔い改めの千年王国」を望むというのもとても象徴的だ。全体通して感じるのは終末論的な世界。これが筆者の「魂のこと」の答えなんだろうか。
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相生
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内に狂うほど熱い思いが、昂揚感の名残がある一方で腑に落ちない、肩透かしを食らった感じも残る。消化不良なのかもしれない。≪新しいひと≫として登場するギー同様、やはり大江にとって四国の森の谷間は世界の中心なのだろう、馴染み深くも思えるテン窪で起こる、微妙にズレながら歴史の中で繰り返されてきた神話=民話に繋がる出来事。そのインパクトとそれによる興奮が想像力自体となって神的なものにつながり人間に顕れ救いとなっている。神が不在で魂の救いはあるか、というテーマに対し神から解放される最後の言葉には力が籠っていると思う。
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noekure
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傑作。宗教と人との関わり合いを正面から立ち向かった想像力に脱帽。四国は原点なのだろうね。
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梟をめぐる読書
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「オウム的なもの」の蔓延によって宗教の意味が歪められてしまったこの世の中で、正しく人が「神」や「信仰」と向き合うための宗教共同体の構築可能性を模索する、壮大な寓話。ある教祖の「転向」問題に端を発する原初的な森への立ち返りの物語は相変わらずの「ズレを含んだ繰り返し」に満ちてはいるのだが、『緑の木』のギー兄さんの遺志が新しい登場人物らに批判的に受け継がれることによって、結末は予想外の方向へと導かれる。小説を支えるのは〝言語〟や〝祈り〟を介したコミットメントに対する、圧倒的なまでの作家の信頼。間違いなく傑作だ。
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たけし
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神と深い部分で繋がれる人間は限られている。しかし、そうでないといけないかと言うと、そうではない。むしろ、「自由デアル方ガ、イイヨ」と。そして、「魂のことをする場所」を持つ、ということ。探し求めて、たどり着いたのは、ひとまず、そういうところだったということか。大江健三郎さんの本をもっと読みたいと思う。次は何読もかな?
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パヤパヤ
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たしかこの作品の中で、森の最年少あととりの十四歳(サッチャンの息子)と同棲している年長の恋人染物師は、「燃え上がる緑の木」の中でサッチャンと売春をしていたシモーヌ・ヴェイユ読み・報われないフェミニスト(明らかに女子に対する偏見の深い芸術家の愛人だった筈)の「娘」(若い女性をこう表現するのが大江のかなりの古めかしさに思えてなりません)と気付いたときは嬉しいかった。ぽっと出して消してしまう登場人物としては意味がありすぎるように思えてずっと気になっていたものですから。
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中村です
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ネタバレ上巻の始めで語りの二重構造を匂わせていましたが、どういうことか最後のさいごで解りスッキリしました。この作品は荻青年が自分や木津がスケッチブックに書き付けていたメモを元に本に書いたものでした。 また、この世界は『燃え上がる緑の木』と地続きでした。時間軸を逆走することになりますが、次は『燃え上がる…』を読んでみようと思います
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