形式:文庫
出版社:講談社
意地悪&歓喜の結末の話。『孤独の叫び』中野不二雄:今にも高層ビルから飛び降りて自殺しようとしている男の耳に誰かの呼び掛ける声が聞こえる。それは交通事故死した男の霊でこの世に未練があるので男の健康な体と若さを欲しいと直接交渉する。自殺未遂の男の魂は成仏できるとの事で話がまとまり、生前は青年実業家で名うてのプレイボーイだった男は生まれ変わって張り切るのだが急に警官に羽交い絞めにされて彼の入った肉体は犯罪者で死刑囚だった事を知る。だが一度死んだ男は動じずにもう一度生まれ変わればいいさと考え死刑が何時かと聞いた。
だが刑事は無情に告げる。お前みたいな下衆は死刑じゃ物足りない!火星での強制労働50年だ!『手荷物』山下憲子:真っ白な制服を着た係員がベルトコンベヤーの上に手荷物を置く様にと男に笑顔で案内する。思い出だけを持って行けると言われた男は、俺は捨て子で孤児院から脱走し盗みを働いて生きてきて友人もいないし良い思い出なんかないと自嘲するが、バッグを開けると中から茶色い子犬が元気に尻尾を振って出て来る。男はポロポロ涙を流して喜び、白い大きな羽を背中に背負わされると子犬を抱きかかえたまま天国の門をめざし羽ばたいて行った。
た。星は10点評価で最高は8.5点、即ち本来“該当作なし”なのだ。それを商業的事情から無理やり合格扱いしているのだ。素人にプロの技を求めているのではない。ショートショートの命たるアッと驚くアイデア、それだけを求めているのだ。漫才のネタで受けないことはまずないが、誰もクスリともしないネタを堂々と舞台で開陳するようなものだ。『1』の安土萌『海』は名作だった。立派な文学作品として成立していた。逆にいうとアッと驚くプロットという規定が既に頭打ちなのではなかろうか。講談社文庫編集部の売らんかなの惹句もあまりに酷い。
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