そんな本作の主人公は、日本政府の外交官である青澄誠司だ。彼は、アジア海域での政府と海上民との対立を解消すべく奔走し、交渉の場でさまざまな困難に直面する。特に、海上民の女性長であるツキソメとの交渉は、彼の運命を大きく揺るがすものとなる。ツキソメは人間の姿を持ちながらも、言語能力が欠如しているという特異な存在で、彼女が脳外科手術を受けて思考と言語を獲得した背景は、彼女の行動や思考を理解するための重要な要素となっている。
タイフォンやツキソメを巡る、青澄とプロテウスの激しい攻防は、物語に緊張感を与えていましたね。二人の対立は、単なる個人の対立にとどまらず、人類の未来をかけた壮絶な戦いと言えるでしょう。
私も、プルーム変動の科学的な説明や、人類存亡をかけた政治的な駆け引きなど、読み応えのある作品だと思いました。特に、人類の終末という壮大なテーマの中で、青澄とマキの物語が丁寧に描かれていて、感情移入しやすかったです。
私も、特にエピローグの最後の1文には感動しましたよね。絶望的な状況の中で、それでも未来への希望が描かれていて、読者として大きく心を打たれました。 遺伝子操作された海上民や魚舟の存在など、緻密に作り込まれた世界観も魅力的でした。マキの視点から物語が進むことで、客観的に状況を把握でき、より深く物語に没頭できたと思います。上田早夕里さんの世界観、本当に素晴らしいですよね。
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