読書メーター KADOKAWA Group

感想・レビュー
4

データの取得中にエラーが発生しました
感想・レビューがありません
松本直哉
新着
戦争と平和の中でピエールが、部外者なのに戦場の真只中に飛び込むのと同様に、ここでは主人公が、罪人でもないのに徒刑囚に同道してシベリアまで行く。そこで見聞した監獄の非人道性、劣悪な環境での囚人たちの衰弱、無罪なのに拘留される理不尽から、人が人を裁くことへの根源的な懐疑、さらには裁判制度と土地私有を維持する国家と教会への激烈な批判、体制に反抗する革命家への共感は、差し迫るロシア革命を予言しているとさえ言える。しかし結局は傍観者に過ぎず、久しぶりにありついた美食に人心地がつくあたりは、自らの限界を正直に明かす。
松本直哉

高校生以来の再読だが、今回は北御門二郎訳で読む。最小限の注釈と達意の日本語で読みやすかった。ネフスキーの代わりにニェフスキー、ネフリュードフの代わりにニェフリュードフなど、耳慣れない表記だが、こちらの方が元のロシア語の発音に近いようだ。

12/27 14:41
0255文字
Oki
新着
中国語の先生が「一番影響を受けた本」というので読んでみた本。 どの部分に影響を受けたのかはよくわからない。 ・men for othersのところか? ・一切のものと和解せよ...というところか? しかし、悟れてない私としては、ニェフリュードフの言う 「現代のロシアで、廉潔な人にふさわしい唯一の住所は監獄だ。」 というロシアからミサイルを打ち込まれて、我が子を殺された人に 「右の頬を打たれたら左の頬も」...とはちょっと言えない。
0255文字
syota
新着
最後の数ページで呆然。この物語は主役二人の愛と魂の成長を描いたものだと思って読んでいたが、作者の真の狙いは別のところにあった。ロシア司法制度のデタラメさや、囚人に対する非人道的な取り扱い。「誰を罰して誰を許すかということは神様のなさること」と司法制度自体を否定し、聖書に従って人を許すことを説く。土地私有の否定と併せ“無政府主義的な共産主義”と“教会を否定したキリスト教”が渾然となった作者の思想を、読み手に伝えたかったのだ。恋愛モノの姿を借りた社会派ドラマ、そして真の姿は伝道の書、というのが現時点での感想。
syota

トルストイの思想は余りに理想主義で素朴、性善説にたっている。その真摯さには心打たれるが、今となっては主張自体に共感することは難しい。むしろこの作品で印象に残ったのは、政治犯の人々の描写だ。中世さながらの封建的ロシア社会に蓄積した矛盾や不満が巨大なエネルギーとなって充満する中、外国から流入した急進的な社会思想が火種となって、あちこちで小規模な火災が起きている。強権的手法で押さえつけてはいるものの、やがて革命という大爆発に至る前段階のありさまがリアルに描かれていて、読み応え十分だ。

12/31 18:13
syota

これで、故北御門二郎氏が訳したトルストイ三部作を読了できた。トルストイの平和思想に共鳴し、良心的兵役拒否を貫いた氏のことはご存じの方も多いと思うが、読メの登録数は残念ながら少ないようだ。出版後40年近くがたち、さすがに古さを感じさせる部分はあるけれど、とかく意味があいまいになりがちな日本語を駆使して、これだけ緻密で明快、しかも直訳調に陥らない訳文を構築されたことは驚くばかり。大手出版社から文庫で出ていれば、間違いなく稀代の名訳として版を重ねただろうに、マイナーな版元だったことが返す返すも惜しまれる。

12/31 18:13
0255文字
笑い男
新着
マースロアのニュフリュードフに対する献身に目頭が熱くなる事が多々ありました。主人公のせいで彼女は一度は娼婦までなりがっても、それまで生きてきた環境により善の心を保つことができたんですね…愛するというのは、ただ単に一緒にいたり、結婚する事ではない…相手の事を思いやり…真の意味で自分の気持ちを犠牲にしてでも相手の幸せ願う事…自分の人生を台無しした相手であってもその相手の幸せの為に自分の気持ちを抑え、身を引く…そんなことが出来る女性がいったいこの現代にいるでしょうか…きっと昔は本当にいたんだろうなぁ…
0255文字
全4件中 1-4 件を表示

この本を登録した読書家

復活評価73感想・レビュー4