形式:単行本(ソフトカバー)
出版社:岩波書店
マクドナルド『かるいお姫さま』『昼の少年と夜の少女』の少年と少女が対等に共に困難を乗り越える描写(マクドナルドが好きなのはこういうお話が多いこと)、マクドナルドとキャロルの繋がりを読めたことも良かった。ラッカムやヒューズ、テニエルなどの美しい絵と共にファンタジーへの至福の旅でした。
紹介される挿画にラッカムのものが多くあり、人気者だったのだなあと改めて実感。アリスについての文章は目新しいものはさほどなく、ファンには物足りないところもあるけれど、人魚姫はじめ他作家作品についての所感や論考は非常に面白かった。
「マクドナルドのお姫さまは、身体も心も軽く、うっかりすると舞い上がったきり下りてこなくなる恐れがあるので、身軽なようでいてまったく自由ではないのですが、やがて水のなかなら重さを取りもどして、自由に泳いだりもぐったりできることを発見します。それがうれしくてしょっちゅう湖に出て一人で遊んでいたお姫さまは……」(pp.116-7)こどもの時には理解していなかった――お姫さまが水の中を愛する理由。重さが無いことで、彼女の意に反して吹き飛び、舞い上がり漂っていく体……私を苛立たせる。私のものなのに、私を苛立たせる。
それが水の中ならば、はじめて自由に動かせるから。彼女ははじめて、自由を満喫できるから。……だから、彼女は「泳ぎの好きなお姫さま」だったのだね。四半世紀もの時を経て、ようやく、幼友達を理解したような気持ちだ。こういうのって……悪く、ないね。
どうして自分がドイツ・ロマン派近辺の作品(そこから影響を受けたマクドナルドなどを含む)を好むのか。この『少女たちの19世紀』を読むことでその理由の一つがつかめたようにも思います。
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