村田沙耶香さんは、absintheが大好きな作家です。absintheは、感想の中ですべて沙耶香様と呼んでいます。村田沙耶香さんを読んだあなた、是非ここに投票してみてください。
受賞歴
『授乳』 群像新人文学賞優秀賞受賞
『ギンイロノウタ』野間文芸新人賞受賞
『しろいろの街の、その骨の体温の』 三島由紀夫賞受賞
『殺人出産』 センス・オブ・ジェンダー賞少子化対策特別賞受賞
『コンビニ人間』 芥川龍之介賞受賞
彼女は独特の世界観を持っています。彼女の顕著なテーマは、巷に言われる”普通”と呼ばれる曖昧で根拠のはっきりしない概念の正体を暴くことではないでしょうか。普段、私たちの生活の中で”普通”は背景化され見えにくくなっています。”普通”は、無色透明で空気のようですが、残酷な強制力を伴った、歪で凶暴な存在にもなります。
「こうするのが普通じゃないの?」「そういうことって普通じゃないんじゃないの?」という何気ない言葉は話し手にとって何気ない言葉であっても、聞き手には残酷な言葉であることもあります。彼女の作品の中で、主人公は世間の作り上げた”普通”によって世界の片隅に追いやられ、”普通”と戦うことなしには自分の思いが遂げられない状況に置かれるのですが、そんな主人公の目を通すことによって、普段目にすることが出来ないが、高圧的で恐ろしい”普通”の正体を、読者は否応なしに意識させられるのです。芥川賞受賞作品である『コンビニ人間』でも、独特の主観を持った主人公が”普通”の世界と対峙し、同僚からも家族からも友人からも”普通”を、それが当然であるかのように押し付けられ、さらには絶望的な将来まで強制されそうになります。主人公の戦いはまさに”普通”との戦いでした。
彼女の文体は読みやすく作品のテーマにマッチしていると思います。暗く悲しい状況においても、どこかとぼけた様な独特の文体が、暗くなりすぎることを絶妙に避けています。彼女の作品に良く表れる”スクールカースト”のテーマにおいては、『マウス』や『しろいろの街の、その骨の体温の』等、主人公がカースト最底辺であることが少なくなく、胸を締め付けられるような場面もあるのですが、最後には希望の光がさしています。生と死、カニバリズム、生殖など、かなり尖ったグロテスクなテーマを正面から取り上げた『殺人出産』『生命式』などの作品では、殺人が合法化された世界やカニバリズムが普通化された世界を扱っていますが、文体が救いとなって深刻になりすぎる手前で上手くとどまっています。
このような紹介文からは”普通”に対して異議を申し立てる、”戦う作家”の印象を持たれそうですが、エッセイ『きれいなシワの作り方』を読んでみれば、自分のファッションは浮いていないか、カリスマOLのブログをこっそり読んでは確認し、青くなったり赤くなったりするような方であり、黒歴史となった過去のファッションを話題に出されて「やーめーろー」といって頭を抱えたりする方でもある、そして「あなた女優気取りですか?」と言われることを恐れてわざわざ手抜きの日焼け対策をする方、その人柄は可愛らしくて、我々同様”普通”の恐ろしさを日々体験している方だとわかります。その独特の作風から”クレイジー沙耶香”と呼ばれることもあるようですが、ご本人はあまり納得されていないようで、そう呼ぶときは小声で愛情をもって呼ぶようにしましょう。
村田沙耶香さんは、短編の多い作家さんです。作品名で投票させようか書籍名で投票させようか悩んだのですが、書籍名でご投票ください。
【中間発表】2020/11/23 8:00 時点での集計
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『コンビニ人間』 15票
『消滅世界』 5票
『殺人出産』 3票
『生命式』 3票
『しろいろの街の、その骨の体温の』1票
『丸の内魔法少女ミラクリーナ』 1票
『変半身(かわりみ)』 1票
『きれいなシワの作り方』 1票
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