…若き貴族ヘルシャム卿の失踪事件で、卿と女優のネラとの結びつきを発見したドーカスは、サクソンに頼んで同じ舞台に立たせてもらう。彼女に接近したドーカスは、卿が何らかの恐怖から逃れるために、自殺を図ろうとしていることを突き止めるが…「無謀な男」&「湖の秘密」ハーグレーヴス大佐は、一人娘が湖に落ちて死にかけたことでドーカスに相談に来た。発見も早く、命に別状はなかったが、娘は散歩中急にめまいがして湖に落ちたのだと説明するも、診察した医師は喉と手首に、誰かの手で強く締め付けられたような不自然な痕があるという…
…明らかに何者かに襲われながら、娘が誰を庇おうとしているのかを大佐は知りたがった。ドーカスは邸の様子を伺っていた怪しい青年がいたことと、彼と思しき人物が庭の中に侵入した痕跡を発見するが…「ダイヤモンドのトカゲ」&「ピンの刺し跡」チャリントン夫人は宝石箱からダイヤモンドのトカゲをはじめとした宝石盗難の調査をドーカスに依頼する。彼女は義理の息子のクロードを疑っており、夫にも盗難のことを打ち明けることができずにいた。浪費癖のあるクロードは借金で汲々としていたはずなのに、最近札束を持っているのを見たという…
…そしてクロードが付き合っている女の子がダイヤモンドのトカゲを身に着けており…「謎の億万長者」&「空き家」&「戸棚の洋服」レディ・アンナは夫のジャドキンス・バラクローが重婚していると疑っていた。三年前、突然大金を持ってロンドンに現れたバラクローはアンナと結婚するが、彼女は夫の横暴な振る舞いに離婚したがっており、そんな矢先、バラクローが何かに腕を噛まれて怪我をしているのを発見する。彼は犬に噛まれたと言い訳したが、アンナは存在を知られたくない女と諍いになって噛まれたに違いないと確信していた…
…ドーカスは幸運にも助けられ、バラクローが専用の馬車を使わず、連日遅い時間まで通っていた家を突き止めるがそこは空き家だった。ドーカスはアンナから夫の帰宅後にそっと持ち出した鍵束を受け取り、サクソンに協力を頼んで深夜に問題の空き家に侵入し、家探しを試みた結果…「ハーヴァーストック・ヒル殺人事件」&「茶色の熊のランプ」ハンナフォード氏の妻が撲殺された事件で、この日も夫婦喧嘩したという夫が容疑者となるが、精神に変調を来したことで病院に収監される。だが男の無実を信じた身内がドーカスに事件の再捜査を依頼する…
…事件当日、現場付近で電光石火のジョージの異名を持つ、いかがわしい人物が目撃されていたが、ハンナフォードの家には盗難の痕跡はまったく無かった。だが事件の前後から、素寒貧だったジョージの金回りが急に良くなっていた。変装してジョージに接近したドーカスは、彼が所持していた高額紙幣の番号を調べたところ、それは数年前に劇場の火事で焼死した、今回の被害者の先夫に振り出されたもので…「行方不明の王子」&「貴賤結婚の妻」&「リージェンツ・パークの家」某国の王子が、お忍びでお付きもつけずに外出したまま行方不明となる…
…警察が極秘で捜査する中、ドーカスは国際的アナーキストの主要メンバー5人が、明後日処刑されることが王子の失踪と繋がっているのでは?という仮説を立てており、確かな筋から入手したアナーキストの集会場所に潜み、やはり彼らが政府との交渉のために王子の身柄を拘束していることを掴むが…「不倫相手」&「ハンカチの袋」世間の注目を集めた上流階級の離婚訴訟で、妻側が敗北する。それというのも使用人たちの目撃証言に加え、決定打になったのはファルスドルフ伯爵からの妻に対する、深い関係を示す手紙の存在で、出廷した伯爵がその…
…事実を正式に認めたからだった。だが夫人の母親は娘の潔白を信じ、ドーカスに再調査の依頼を…「バンク・ホリデーの謎」&「茶色の紙切れ」娘の失踪を嘆く貧しい母親に同情し、ほとんど無償で調査を引き受けたドーカス。娘には立派な身なりの婚約者がいたが、その男の所在もまるでつかめなかった。そんな最中、ドーカスの情報網から、失踪した娘が田舎の下宿にいることを突き止め、母親を連れて乗り込んだところ、その女は娘にそっくりだが別人だという。だが女の装身具は、失踪した娘が付けていたのと同じものだったが、警察でもない彼女は…
…それ以上の追及が出来ず、そこから立ち去るしかなく、女も荷物をまとめて下宿を引き払ってしまい…「女王陛下の御前に」&「名無しの権兵衛」サー・ジョシュア・ブルームの妻マーガレットは、つい先日光栄にも女王陛下の謁見を賜ったばかりだが、サー・ジョシュアの元にあなたの妻は監獄に入っていたことがあり、そのことをばらされたくなければ千ポンド払えという脅迫状が届いた。マーガレットはジョシュアの子供たちの家庭教師だったが、先妻に先立たれていた彼は彼女に結婚を申し込んだ経緯がある。脅迫者をあぶりだすために、指示通りに…
…名無しの権兵衛宛てに要求を飲む旨の新聞広告を出したところ、脅迫者はある事件の記録を調べよと電報で知らせてきた。ドーカスが中央裁判所の記録を調べたところ、確かに家庭教師のマーガレット・グレイという女性が、宝石店で万引きした罪により、六カ月の懲役刑を受けていたことが明らかに……本書は<クイーンの定員>第22席に選ばれた短編集(「四人委員会」から「茶色の熊のランプ」まで)と、続編の第2短編集(「行方不明の王子」以降)を併せた、ドーカス・デーン・シリーズすべてが読めてしまう、なかなかのすぐれモノ♪( ̄∇ ̄)
またこのシリーズは一つのエピソードにまとまったタイトルはなく、1エピソードが2章ないし3章で構成されている。最初の「四人委員会」ではドーカスの夫で目の見えないポールが元警視の探偵に助言して、幾つもの事件を解決に導いているというエピソードが語られ、四人委員会というのはポールとドーカス、ドーカスの母のレスター夫人、そして愛犬のブルドックのトッドルキンスの四人(三人と一匹)で構成され、事件について議論を交わすとあったが、実際には元女優の才を活かして変装に長けたドーカスの独壇場となり、ポールの推理はほとんど…
…語られなかったりする(;^_^A…依頼人は上流階級の人間が殆どで、外聞をはばかる秘密の調査が多く、「ヘルシャム事件」「湖の秘密」「ダイヤモンドのトカケ」では、第三者に事件の真相を知られることなく、依頼人にとってベストな形で秘密裏に問題を丸く納める。また女優の才を活かして、いろいろな人物に化けるなど、女探偵としての能力を存分に見せつけるのも楽しい。「謎の百万長者」の事件では、サクソンを引き込んで夜盗まがいの強引な捜査に踏み切ることも。この事件ではボロボロの服がどういった意図で、わざわざ戸棚の中に…
…仕舞い込まれていたのか?という謎もあるが、ドーカスが未然に防いだから良かったものの、なかなか狡猾極まりない目的が籠められていた。「ハーヴァーストック・ヒル殺人事件」は紙幣の謎が浮き彫りになった時点で、おおよその真相は見通せたが、ある意味フーダニット的要素も感じられる。続編では「バンク・ホリデーの謎」が印象深く、ある意味ハッピーエンド寄りな他の作品に比べ、かなり悲惨な真相なのに加え、結末もやるせないものがある。
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…若き貴族ヘルシャム卿の失踪事件で、卿と女優のネラとの結びつきを発見したドーカスは、サクソンに頼んで同じ舞台に立たせてもらう。彼女に接近したドーカスは、卿が何らかの恐怖から逃れるために、自殺を図ろうとしていることを突き止めるが…「無謀な男」&「湖の秘密」ハーグレーヴス大佐は、一人娘が湖に落ちて死にかけたことでドーカスに相談に来た。発見も早く、命に別状はなかったが、娘は散歩中急にめまいがして湖に落ちたのだと説明するも、診察した医師は喉と手首に、誰かの手で強く締め付けられたような不自然な痕があるという…
…明らかに何者かに襲われながら、娘が誰を庇おうとしているのかを大佐は知りたがった。ドーカスは邸の様子を伺っていた怪しい青年がいたことと、彼と思しき人物が庭の中に侵入した痕跡を発見するが…「ダイヤモンドのトカゲ」&「ピンの刺し跡」チャリントン夫人は宝石箱からダイヤモンドのトカゲをはじめとした宝石盗難の調査をドーカスに依頼する。彼女は義理の息子のクロードを疑っており、夫にも盗難のことを打ち明けることができずにいた。浪費癖のあるクロードは借金で汲々としていたはずなのに、最近札束を持っているのを見たという…
…そしてクロードが付き合っている女の子がダイヤモンドのトカゲを身に着けており…「謎の億万長者」&「空き家」&「戸棚の洋服」レディ・アンナは夫のジャドキンス・バラクローが重婚していると疑っていた。三年前、突然大金を持ってロンドンに現れたバラクローはアンナと結婚するが、彼女は夫の横暴な振る舞いに離婚したがっており、そんな矢先、バラクローが何かに腕を噛まれて怪我をしているのを発見する。彼は犬に噛まれたと言い訳したが、アンナは存在を知られたくない女と諍いになって噛まれたに違いないと確信していた…
…ドーカスは幸運にも助けられ、バラクローが専用の馬車を使わず、連日遅い時間まで通っていた家を突き止めるがそこは空き家だった。ドーカスはアンナから夫の帰宅後にそっと持ち出した鍵束を受け取り、サクソンに協力を頼んで深夜に問題の空き家に侵入し、家探しを試みた結果…「ハーヴァーストック・ヒル殺人事件」&「茶色の熊のランプ」ハンナフォード氏の妻が撲殺された事件で、この日も夫婦喧嘩したという夫が容疑者となるが、精神に変調を来したことで病院に収監される。だが男の無実を信じた身内がドーカスに事件の再捜査を依頼する…
…事件当日、現場付近で電光石火のジョージの異名を持つ、いかがわしい人物が目撃されていたが、ハンナフォードの家には盗難の痕跡はまったく無かった。だが事件の前後から、素寒貧だったジョージの金回りが急に良くなっていた。変装してジョージに接近したドーカスは、彼が所持していた高額紙幣の番号を調べたところ、それは数年前に劇場の火事で焼死した、今回の被害者の先夫に振り出されたもので…「行方不明の王子」&「貴賤結婚の妻」&「リージェンツ・パークの家」某国の王子が、お忍びでお付きもつけずに外出したまま行方不明となる…
…警察が極秘で捜査する中、ドーカスは国際的アナーキストの主要メンバー5人が、明後日処刑されることが王子の失踪と繋がっているのでは?という仮説を立てており、確かな筋から入手したアナーキストの集会場所に潜み、やはり彼らが政府との交渉のために王子の身柄を拘束していることを掴むが…「不倫相手」&「ハンカチの袋」世間の注目を集めた上流階級の離婚訴訟で、妻側が敗北する。それというのも使用人たちの目撃証言に加え、決定打になったのはファルスドルフ伯爵からの妻に対する、深い関係を示す手紙の存在で、出廷した伯爵がその…
…事実を正式に認めたからだった。だが夫人の母親は娘の潔白を信じ、ドーカスに再調査の依頼を…「バンク・ホリデーの謎」&「茶色の紙切れ」娘の失踪を嘆く貧しい母親に同情し、ほとんど無償で調査を引き受けたドーカス。娘には立派な身なりの婚約者がいたが、その男の所在もまるでつかめなかった。そんな最中、ドーカスの情報網から、失踪した娘が田舎の下宿にいることを突き止め、母親を連れて乗り込んだところ、その女は娘にそっくりだが別人だという。だが女の装身具は、失踪した娘が付けていたのと同じものだったが、警察でもない彼女は…
…それ以上の追及が出来ず、そこから立ち去るしかなく、女も荷物をまとめて下宿を引き払ってしまい…「女王陛下の御前に」&「名無しの権兵衛」サー・ジョシュア・ブルームの妻マーガレットは、つい先日光栄にも女王陛下の謁見を賜ったばかりだが、サー・ジョシュアの元にあなたの妻は監獄に入っていたことがあり、そのことをばらされたくなければ千ポンド払えという脅迫状が届いた。マーガレットはジョシュアの子供たちの家庭教師だったが、先妻に先立たれていた彼は彼女に結婚を申し込んだ経緯がある。脅迫者をあぶりだすために、指示通りに…
…名無しの権兵衛宛てに要求を飲む旨の新聞広告を出したところ、脅迫者はある事件の記録を調べよと電報で知らせてきた。ドーカスが中央裁判所の記録を調べたところ、確かに家庭教師のマーガレット・グレイという女性が、宝石店で万引きした罪により、六カ月の懲役刑を受けていたことが明らかに……本書は<クイーンの定員>第22席に選ばれた短編集(「四人委員会」から「茶色の熊のランプ」まで)と、続編の第2短編集(「行方不明の王子」以降)を併せた、ドーカス・デーン・シリーズすべてが読めてしまう、なかなかのすぐれモノ♪( ̄∇ ̄)
またこのシリーズは一つのエピソードにまとまったタイトルはなく、1エピソードが2章ないし3章で構成されている。最初の「四人委員会」ではドーカスの夫で目の見えないポールが元警視の探偵に助言して、幾つもの事件を解決に導いているというエピソードが語られ、四人委員会というのはポールとドーカス、ドーカスの母のレスター夫人、そして愛犬のブルドックのトッドルキンスの四人(三人と一匹)で構成され、事件について議論を交わすとあったが、実際には元女優の才を活かして変装に長けたドーカスの独壇場となり、ポールの推理はほとんど…
…語られなかったりする(;^_^A…依頼人は上流階級の人間が殆どで、外聞をはばかる秘密の調査が多く、「ヘルシャム事件」「湖の秘密」「ダイヤモンドのトカケ」では、第三者に事件の真相を知られることなく、依頼人にとってベストな形で秘密裏に問題を丸く納める。また女優の才を活かして、いろいろな人物に化けるなど、女探偵としての能力を存分に見せつけるのも楽しい。「謎の百万長者」の事件では、サクソンを引き込んで夜盗まがいの強引な捜査に踏み切ることも。この事件ではボロボロの服がどういった意図で、わざわざ戸棚の中に…
…仕舞い込まれていたのか?という謎もあるが、ドーカスが未然に防いだから良かったものの、なかなか狡猾極まりない目的が籠められていた。「ハーヴァーストック・ヒル殺人事件」は紙幣の謎が浮き彫りになった時点で、おおよその真相は見通せたが、ある意味フーダニット的要素も感じられる。続編では「バンク・ホリデーの謎」が印象深く、ある意味ハッピーエンド寄りな他の作品に比べ、かなり悲惨な真相なのに加え、結末もやるせないものがある。