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月音
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月音
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「キターッ!」の巻第五。何がキタって山上憶良の「瓜食めば 子ども思ほゆ~」と、『貧窮問答歌』(習ったねえ)。そして、“令和”の典拠となった『梅花の歌』!「瓜~」について、その心は「(我が子が)食べちゃいたいほどかわいい♡」だと思っていたが、解説によると仏教にいう愛執の煩悩にとらわれる苦しみ、それが深いからこそ逆に言えば子は何より尊いという意だそう。藤原兼輔の「人の親の心はやみにあらねども子を思ふ道に惑ひぬるかな」の歌が時を越え、憶良に和しているかのようだ。⇒続
月音

⇒憶良はこの歌で“愛苦”を、『貧窮~』で“貧苦”を、自らの死に臨んで老・病・死苦を絶唱する。プライドも何もかもかなぐり捨てて老いの嘆き、病の苦悶、死への恐れと生への渇望を叫ぶ歌群の凄絶さは、痛ましさを通り過ぎてうすら寒さを覚えるほど。梅花の宴も他の名歌も吹っ飛んでしまった。仏の教えに縋りつき、悟ろうとして悟りえぬ人間の生の苦しみを歌う、彼の芸術と人生の集大成といえよう。同時にこれらは、現世の束の間の快楽を追う人々に向けた憶良流“メメント・モリ(死を思え)”ではないかと思えた。

09/23 12:46
  • 忘れ草
  • 本の間
  • Masa
0255文字
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月音
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読書データ

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登録日
2022/05/17(1046日経過)
記録初日
2022/05/01(1062日経過)
読んだ本
256冊(1日平均0.24冊)
読んだページ
69077ページ(1日平均65ページ)
感想・レビュー
256件(投稿率100.0%)
本棚
14棚
性別
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