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ネタバレ忘却の意義を、脳のはたらきから考察する。忘却とは、経験をふるいにかけ、大事なものを残して脳をリフレッシュさせること。大事とされる部分を集めて再構成(一般化)して、この世界を認識すること。朝日が昇り夕陽が沈んでも、ここが同じ世界だとわかること。またPTSDの方は、不快な刺激が何度も訪れて不快な記憶を忘れられない。しかし暴露療法等で不安を起こす場面でも大丈夫だと認識し、やがて安心感を取り戻す。世界が大丈夫と安心できて今を味わえることが健全な忘却であり、自分らしさや創造力、他者や未来への想像力も育む。(1/4)
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本書はゆる言語学ラジオで知った。加害やトラウマの記憶からの忘却にも触れ、そこが興味深い。記憶が心を支配する。9.11WTCテロの記憶はアメリカ人い愛国心による絆を生んだが、それが脳全体を過剰にさせ、知的な人でもアラブ全体への報復を叫ぶ極端さも生んだ。ここでの正当な忘却プロセスには、たくさんの愛する者との触れ合いや、加害者側からの真摯で実行力ある対話や癒しの手立て等がある。「嫌なことは水に流す」ではない。忘却も、多くの人との深いつながりや積み上げられた知識に支えられるという事実が、心なしか温かい。(2/4)

03/09 22:23
  • umichun :
  • jabrafcu
gami

気になったこと1。忘却の"ふるい"は人によって違う。無意識の優先順位づけが個性を生むのだ。また睡眠はその日の大量の不要な記憶をリフレッシュし、それが記憶同士を自由に繋がれる状態にさせ、忘却と反比例してアイデアが出やすくなる。意思決定の場面では、人は見たものを経験に基づいて即座に計算処理するあるが、偏見や、自分の判断を後付けで美化して構成するなどのバイアスで間違える。こういう時、ゆっくり考えたり決めたことを振り返ったり変更したりするなど、疑ってかかる態度が大事。私は即決即断が苦手なので励みになる。(3/4)

03/09 22:24
gami

気になったこと2。忘却は大事なものとそれ以外を分けるが、望まない形で「大事な人」と看做されなくなった人はどうなるんだろうか。ここで居所不明児童生徒やセルフネグレクトが引っかかる。まず忘却は脳の健全な機能であること、その過程に個別性が宿ることは抑えたい。その上で、あらゆる個人にダイレクトに「この世の全てを大切にして」と求めるのは難しい。ここを乗り越えるために社会の仕組みとして、自然とたくさんの人との交流が起こったり、いがみあった他者との繋がりが作り直せる機会が生まれるような機能が必要ではないか。(4/4)

03/09 22:25
  • jabrafcu
0255文字
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読書データ

プロフィール

登録日
2015/09/28(3458日経過)
記録初日
2015/09/28(3458日経過)
読んだ本
100冊(1日平均0.03冊)
読んだページ
24004ページ(1日平均6ページ)
感想・レビュー
86件(投稿率86.0%)
本棚
0棚
性別
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