読書メーター KADOKAWA Group

2024年11月の読書メーターまとめ

アヴィ
読んだ本
90
読んだページ
30226ページ
感想・レビュー
90
ナイス
377ナイス

2024年11月に読んだ本
90

2024年11月にナイスが最も多かった感想・レビュー

アヴィ
乱歩賞作家で昭和の終わりから平成の初期に最も売れたのは、西村京太郎と森村誠一がツートップだと思うが、平成期全体だと東野圭吾だろう。そんな森村誠一は元ホテルマンとして大量のホテルミステリーを書いたが、本作について大絶賛していた。確かに元ホテルマンが書くホテルミステリーと違い、東野圭吾描くところのホテルミステリーは、素人にもわかりやすい。色々と無理な設定と思わされるが、それも伏線なのねと最終的に納得させられる手際は相変わらず鮮やか。犯人に被せた仮面も上手すぎて、最終盤までわかりませんでした。
が「ナイス!」と言っています。

2024年11月の感想・レビュー一覧
90

アヴィ
棟居登場作品で必ず語られる、妻子を殺されたエピソード。タイトルから、本作でその犯人が棟居によって捕まったかと思ったが、本作での復讐は同僚横渡刑事の殉職事件の犯人に向けてのもの。いつものように警視庁捜一の那須班に新宿署の牛尾刑事などレギュラーのメンバーが捜査を開始すると、多面的だった事件が一つに収斂していく流れは鮮やか。養護施設や成りすましなど何度も森村作品で使われているアイテムだが、やはり毎度ラストは哀しい余韻に浸ってしまう。
アヴィ
同じ難解な内容の小説でも、村上春樹は読者が理解出来たつもりになれる文章で書いてくれるが、大江健三郎は文章自体が難解で面倒くさく、芥川賞を受賞した飼育のようにわかりやすいものは少ない。本作も読者に問いかけるもの、投げかけるものが非常にわかりにくく、主人公が妹に宛てた意味不明な書簡小説としか自分には理解出来なかった
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
タイトルからもわかるように、まだまだ女社長というものがレアだった時代。勿論起業する女性はいつの時代もいるだろうが、サラリーマン社長といわれる、平社員から出世しての女社長というのは雇用機会均等法が出来るまでまたなければならなかった。なのでバブル以降であれば珍しくもないが、この時代にOLが社長というのは難しい設定だが、銀行筋という企業にとっての急所とか、社長になってからの周りの動きなども含めて無理なく出来ている。さすがは赤川次郎だが、ミステリー部分も赤川次郎らしくあまり期待してはいけない。
アヴィ
前半の作品は一発ネタで、それなりに面白く仕上がりホラーというよりも奇妙な味として楽しめる。後半の作品は原初宇宙は女だったみたいな世界観になり、ラストが同じように感じてしまったのは自分だけか。菊地秀行や夢枕獏に通ずる伝奇ホラーとか、コズミックホラーの印象を受けたがこれも自分だけみたい
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
作者初の長編であり、初の新聞連載小説。なにかのエッセイで原稿料の高さと、毎日締切に追われる苦痛を味わったことを書いていたが、確かにこれだけの物を書き続けるのは元来ショートショートの作者にはきつかったと思われる。だが、それだけに素晴らしい作品として仕上がっている。ミステリー作家には書けないミステリーになっているし、この時代の通俗小説はほとんどが現代では読めたものではないが、ショートショート同様時代背景は別にして、全く古びていない。紙くずになった株券のくだりなんかはまさに秀逸。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
金田一耕助譚は基本的に成城のY先生に金田一耕助が自身の事件ファイルを私て小説化された体裁だが、本作は他の人物の視点による金田一耕助譚。他からみた場合金田一耕助とはどう見えるかが面白い。カーの有名作と同タイトルだが、クリスティの影響で書かれた作品。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
えっ、じゃあ最初から全て知ってたの。という突っ込みはナンセンスですね。全てを知りながら時を待つしかなかった純愛が哀切極まりないです。とても児童向けと思えない至高のラブロマンスSFですね。
アヴィ
ディストピアということで、オーウェルの1984のような感じかと思って読み始めたが、確かに雰囲気は似ているが、あちらほど閉塞感はなく、ビッグ・ブラザーのような存在もいない。国民の見る夢を整理統合する国家機関である夢宮殿で働く官僚の話。官僚なので出世したりと、意外と日常な部分はあるが、脳科学の進展によって随分わかってきたとはいえ、夢という未だ解明されないものを真剣に国家運営に利用しようとするなど、やはりファンタジックワールドとして読むべきだろう。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
海外ミステリーのオールタイムベストなどでは、必ず上位ランクされる名作。事件の構図自体は単純でウォール街のナポレオンと呼ばれるアメリカの大富豪が顔面を撃ち抜かれた死体で発見され、それを探偵トレントが調査するというもの。中盤でトレントは謎解きをして話から退場しようとするが、そこからまだ物語は何度も転がり続ける。本物の犯人は、トレントの恋愛はなど最後まで上手く構成されているのが、名作の誉れ高い所以だろうか。最大の謎である初登場にして、タイトルが最後の事件の意味が最後の最後でわかり、これも最高のタイミング。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
かなり早い段階で本作は仕上げられていて、堅牢な金庫の奥深くに所蔵され、作者死去後に発表の段取りが成されていた。なので名探偵のオーラス物として完成度が高い。よく比較される金田一耕助最後の事件病院坂の首縊りの家は、事件後特に理由も無く唐突に渡米して行方を暗ますのだが、本作では事件そのものが、ポアロ最後の事件として重要な意味を持っているし、衝撃のシーンも含めて散りばめられた伏線など、クリスティらしが出た1冊。だがクリスティは傑作が多いので、本作はあくまでさらばポアロを見届けるという作品。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
本書全体で素晴らしイヤミスの傑作だが、短編対象の新人賞受賞作なので、聖職者だけで賞を取ってるわけで、当然短編集としても充分楽しめる。芦田愛菜が世に出るきっかけになった映画版も悪くないが、電話だけで幕を引く原作小説の方がイヤだし怖い。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
推理小説文壇の戦後第一世代とした登場した作者のデビュー作。三大名探偵の一角、神津恭介のデビュー作でもある。明智小五郎や金田一耕助とは違う意味で面倒くさいキャラはこの頃から発揮されている。密室での殺人でありバラバラ殺人でもある本件は、現代ではやや弱めかもしれないが、刺青の持つ大きな意味や、密室トリックの解き明かし方など、今読んでも充分驚嘆してしまう。余韻を残した終わり方もまたいい
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
イヤミスという言葉は平成以後によく使われるようになったが、カテゴライズされていなかっただけで昔から読後嫌な気分になるミステリーは大量にあった。本書もかなりのイヤミス系の作品が並ぶ短編集。イヤさに磨きがかかるのが、いつもの森村ワールドの設定。山岳であったり、猫の呪いであったり、反戦であったりする。最終話のラストファミリーなんかは、自宅に侵入してきた泥棒と老婆が共闘して壮絶な復讐をする話だが、当然最後には皮肉な仕掛けがまっている。
アヴィ
とんでもない謎を解いてしまい、大変なことになるミステリーかと思いきや、よくわからない作品世界に読者が戸惑う本でした。とぼけた探偵と、女子高生の助手というのも、ありきたりなうえに、2人の関係性もラノベなんかでありそうだし、かといって謎が魅力的なわけでもなく。唯一2話が面白いといえば面白いといったところだろいか。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
カラッと晴れのイメージの強い帯広や北見に対して、ジメッとした印象の釧路や根室。漁港として栄えたが、現代では人口減少は他地域の追随を許さない勢いで進んでいる。元々北方領土問題を抱えた地域であり、ソ連邦が解体されるまでは日本の防衛拠点の最前線でもあった。昭和50年代にはソ連と通じるレポ船が大きな問題にもなった。本書の参考文献に記されているオホーツク諜報船は、その時代を克明に描き出している。その時代に釧路で少女時代を送った作者の描く釧根地域の情景はとてもリアルであり、文章の読み易さと相俟って読者を離さない。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
生業と書いてナリワイ。仕事とは生きるための物なのだから全てそうだろうと思うが、現代の経済システムに組み込まれた我々は生きることに直結しない仕事でサラリーを貰い、無駄なことに金を使っている。と、作者は言っているし作者のような生き方をしたいと思う人もいるだろうが、なかなか出来るものでもない。ただ大正期に比べて日本の職種が十分の一になっているというのは選択肢のない時代に生きる世代の心に響く。第一次産業は疲弊し、第二次産業は国外に移転し、何も持たざる国に必要なのは確かにナリワイかもしれない。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
平成期の葉桜ハサミ男殺戮にいたる等を先に読んでしまうと、こんなものかとなるかもしれないが、昭和40年代に書かれたという事実を考えれば、当時としては斬新であり、現代においても歴史的価値は高い。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
作者が言わんとすることに間違いはなく、職場にしても家庭においても大切なことが書かれています。ただ輪廻転生や、神様の存在とかの強めな主張が出てくるとお仕事本の域を超えてくるので、引いてしまう読者も一定数いるてしょうね。
アヴィ
2時間サスペンスの原作に使われ、視聴率が良かったのか、シリーズ化され何本か見た記憶がある。青函フェリー内での殺人事件、変装し乗客に紛れる謎の犯人。入れ替わりや珍しい毒殺方法など意外性に富み、話も二転三転するので飽きない。確かに2サスの原作としてはもってこいの内容。
アヴィ
経済学者は多々いるが、地下経済に特化した研究者は珍しいのではないだろうか。テレビで見る印象は芸人から突っ込まれても、あまり上手く返せず半笑いで誤魔化す人だが、書籍では裏社会に通じあらゆる地下で蠢く金の動きを追っている。地上の経済で還流することに対して、税金として国や自治体に返ってこない資金が巨兆の富になるとなれば大変なことだが、作者が本書で語るようにいずれ地上に炙り出されるのも事実ではあるが、現在もこうした闇社会による地下経済が横行していることは知っておくべき。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
まだ日本には甘ったるいワインの文化しかなかった時代に、ヨーロッパの本格的な辛口ワインが求められる時代がくるという信念を持ち、それを自治体経営で実践したことに恐れ入る。その後のワインブームや地方自治体の一村一品運動も、全てこの時代に先鞭をつけている。作者自身は90歳を超える長寿を全うし、ワインの健康効果を自ら証明した。子息は地方のコンビニチェーンでしかなかったセイコーマートをコンビニ業界の雄に革新した中興の祖である。疲弊している地方自治体の首長にこそ学んでほしい
アヴィ
昭和のミステリー文壇では、短編の名手として知られた大物作家。なのでこの自選短編集も安定して面白い。オチが見え隠れして、なんとなく想像がつきそうと思うが、そこから斜め上や斜め下の捻りを加えてきて、さらに突き放すような終わり方はやはり上手い。誘拐犯罪の一番の難しさを軽妙に躱す卑劣な札束が最高の出来ですね。
アヴィ
第2回ラブストーリー大賞受賞作。第1回の受賞作が原田マハのカフーを待ちわびてだったことを鑑みると、選者のバランス感覚というか心意気にナイスをあげたい。カフーとは真逆の世界観、だが確かにラブストーリーであり、それはとても純愛なのかもしれない。おじさんが電車内で出会った女子高生に一目惚れ。それをキモいセクハラと切り捨てるのも自由だが、そこに純愛を求めるのも自由なはず。勝手に守護天使として行動するおじさんはカッコよくもないが、終盤のファンタジっくな部分も含めて楽しみましょう。
アヴィ
まさしくタイトル通り、本人にとっては夢のなかでの犯罪であり、そのまま夢から覚めず死刑も執行されたのではないかと思う。この手の死刑事案では、何も解明されないまま死刑執行によってすべてが闇にという論調があるが、宮崎勤が何を語ったところで事実は変わらない。平成から令和になり、この事件からもすでに30年以上の時が流れた。被害にあってしまった少女たちにただただ合掌。
アヴィ
猫に関する小説といえば、時代を超えて必ず名前があがる究極の猫愛小説。たまたま飼うことになった野良猫あがりのノラ。行方不明になってから気付く自分のノラへの愛情。必死に探すくだりが長いが、読んでいるこちらも入りこんでしまい、どうか見つかってほしいと願い、読み物としても飽きさせない。代わりの猫が現れても、オリジナルのあの子じゃなきゃ駄目、は一度でも猫を飼って愛情を注いだ者にとってはあるある。漱石の弟子だが、猫愛という意味では吾輩は猫であるを超えているかも
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
現在定年を迎える世代は30代頃には企業にパソコンが入り、個人でも携帯やパソコンを持ち始めていただろうから、最低限のデジタルスキルがある前提とすると少し物足りない内容だろうか。それでも、読めば気付かされたり、目から鱗な話もあったりするので一読の価値あり
アヴィ
和人とアイヌの歴史は差別と虐待の歴史であり、幕末から明治の北海道開拓においてアイヌの労働力を抜きにしては語れない。そういった歴史観のもと、忍者という謎の存在を主人公に物語は輾転反側する。途中からは、ベーリング海峡を渡り黒人差別やインディアン差別へと話は移ろい、アメリカ到着後はジョン万次郎風の話になる。ジョン万次郎は別な形で本作に名前が出るが。復讐も遂げ財を成したにも関わらず、話はさらに転回し舞台は日本へ。SF界の重鎮が描く途方もない物語は明治を迎えるまで続く
アヴィ
半世紀前の作品であり、インターネットのない時代のコンピューターにまつわる短編集。個人でコンピューターを持っていたのは、よっぽどのマニアかお金に余裕があるかだろうし、企業もコンピューター導入は、経理部門から始まりだしたころだが、ストーリーテラーの作者はきっちりとこのテーマで仕上げてきます。データベースの可能性を面白可笑しく、人情の機微を交えて語ってくれます。インターネット社会になり、ネット上が知の集積となることを予見しているところはさすが
アヴィ
執拗に狙った容疑者を追い続ける刑事たちの執念に脱帽。これが間違った方向に進むと冤罪を生む下地になるのか。現代の社会からは出自のはっきりしない人物が土地の名士になるというのも、なかなか理解し難いが、この時代をしたたかに生き抜き、財を成した人々の多くは、ゼロから這い上がっている。戦後の現実に光を当てた社会派ミステリーの名作だが、その後作者が本作を超える作品を書けなかったのも、なんとなく理解出来る。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
松本清張の初期傑作群と並び、社会派ミステリー草創期の名作。タイタニックに次ぐ海難事故洞爺丸沈没をモデルにした青函連絡船事故と、同時期に起きた大火。2つの事件と、合わない死体。戦後の飢餓社会に生きる人々の懸命さが、これでもかと描かれる。津軽海峡で起きた事件は、経済復興という美名の中に忘れられ消えていくのか、松本清張作品の刑事連のように本作でも疑問を持った刑事の執拗な捜査が続く。下巻へ
旗本多忙
2024/11/23 08:31

映画も見応え満点。老刑事の探索がすごいですよね。この手の推理小説ではトップクラスではないでしょうか。

が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
城の中で生まれ、城の中で生き、城の中で死んでいった秀頼の生涯を星新一なりの解釈により描かれた歴史小説。エッセイで歴史に大きく名を刻んだ初代よりも、2代目3代目に興味があると書いていたし、おそらく作者畢生の大作ということなのだろうが、いつもの星新一文体なのでそんなに気負わずに読める。父秀吉との邂逅での冷めた感じや、炎上する大阪城と運命を共にする時の投げやりな感じも、リアルさを思わせ切ない。由井正雪は、作家によってこれほどキャラが変わる人物というのも珍しい。これはこれでありかもしれない
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
テロとエロが交錯しながら、話は終局に向かって動き出す。明らかにオーバーテクノロジーな医療技術によって主人公は大変なことになってしまうが、失神しながら肉体と精神の折り合いをつけている、というのが妙に納得してしまった。最後はまさにひょっこりひょうたん島を思わせるドタバタ劇のまま唐突に終わるが、ずっと神視点の三人称のつもりで読んでいたので、最後の最後で驚きました。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
東北弁をベースにした吉里吉里語により語られる物語はいよいよ佳境に。独立国家とは司法立法行政が存在し、それらを遂行させたり、自衛するための組織が必要なのだが、そこは作者なりの際どい解釈で外交も防衛も語られ、食の安全保障も、厚生労働に至るまで周到に準備されていました。おそらく日本で一番有名なスナイパーを模したキャラが登場したあたりから、またドタバタを予感させる。下巻へ
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
他の人と同じく、初井上ひさしはひょっこりひょうたん島で、小説は本作。架空の島国を想像した作者は、なんと日本国内での独立国家吉里吉里国を想像した。東北の一寒村が独立を宣言、そこにやって来る主人公は作者を思わせる中年の作家。右往左往する周りを他所に、吉里吉里国は独立国家として動き出し、主人公は狂言回し的な立ち位置で物語は進む。中巻へ
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
京極本にしては薄いなと思ったが、読み始めるといきなり憑物落としが出てくるし、狐と花をテーマに怪し気な雰囲気になってくるところは、百鬼夜行シリーズに繋がる。メイントリックではないが、禁忌とされている◯◯のトリックが堂々と使わていたり、見えているのに見えないとか、やはり百鬼夜行シリーズの流れを強く感じますね。最近は軽めの京極本ばかり読んでいたので、久しぶりに怖さを感じる作品だったので、そこは楽しめました
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
名探偵紳士録などがあれば、必ずトップに表記されるようにと名付けられた亜愛一郎シリーズの最終作。付かず離れずシリーズ作品に登場する老婆と共に、やっと亜愛一郎の正体がわかります。謎解きに関しては、当時大人気だった赤川次郎作品に登場するシリーズ探偵に近く、きっちり大事なところは抑えています
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
杜子春は小学生の時に読んで、夕方家の前に立ち影の落ちた当たりをスコップで掘ったのは誰にも話せない思い出。だがそれほど杜子春の話は深く静かに潜行するように心の内に入り込んでくる魅力がある。日本が生んだ大正期を代表する短編作家は本書だけでも、その素晴らしさを知ることが出来るが、どの作品も研ぎ澄まされた刃のように怪しく光り輝いている。本書においては、杜子春が飛び抜けて傑作だが、トロッコも捨てがたい。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
マスカレードホテルに続けて、本作も読了。短編3作と、中編の表題作。ホテルの主人公の2人が交互に登場し、表題作では2人が登場するが、当然この時点での絡みはない。某作品シリーズのように、色々こじつけて読者を煙に巻くようなことはせず、作者は誠実に設定を守って最後まで書ききってますね。でもホテルってこんなに怪しい客が多いんですかね。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
先日惜しくも亡くなられた西田敏行が唯一金田一耕助を演じたのが本作の映画化作品。渥美清同様、コメディ俳優がシリアスな金田一を演じるという役者としての奥行きを感じることになる。金田一以外の登場人物が没落貴族とその関係者だけというのも、事件が嫌な方向に進むのを予感させる。太宰の斜陽にインスパイアされ、最初の仮タイトルは斜陽殺人事件というくらい世が世ならと嘆く元華族の没落が時代を感じる。殺害方法がさすがにこれは無理と思うが、映画化ではしっかりと再現されていたことに衝撃を受けた昭和の思い出。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
舞台は20世紀初頭のサンフランシスコ。主人公は地方からやってきて、タイピストとして独立自営を始めたばかりのフリモント嬢。女性がコルセットを外すことが、そんなに自由の象徴なのかというのが、まず自分には理解出来ない。時代背景があまり詳しくないうえに、アメリカではとにかく女性の地位は高く、自由に生きている印象が強いのだが、アメリカが青春だったこの頃にはこういう感じなんだろうか。ミステリーとしては謎の提起はいいが、正直解決に至る道に難があると思います。
アヴィ
表紙絵からも、あの有名な神父探偵を連想するが、当然時代設定も違うし、全体に作り込みの甘さが目立ちますね。ダイイングメッセージから、密室や犯人消失と、これでもかと仕掛けてくるけれども、どれも正直納得のいくものではない。ただ、解説によると、そういう読み方をする本ではないらしい。
アヴィ
現実にあった津山大量殺人事件を元に書き上げられたパニックスリラー。金田一耕助譚では最も人気のある作品の1つで、何度も映像化されているが、やはり落武者の祟りと現代の事件がリンクする様は上手いとしかいいようがない。映画のラストシーンがまたなんともいえない。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
乱歩賞作家で昭和の終わりから平成の初期に最も売れたのは、西村京太郎と森村誠一がツートップだと思うが、平成期全体だと東野圭吾だろう。そんな森村誠一は元ホテルマンとして大量のホテルミステリーを書いたが、本作について大絶賛していた。確かに元ホテルマンが書くホテルミステリーと違い、東野圭吾描くところのホテルミステリーは、素人にもわかりやすい。色々と無理な設定と思わされるが、それも伏線なのねと最終的に納得させられる手際は相変わらず鮮やか。犯人に被せた仮面も上手すぎて、最終盤までわかりませんでした。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
房総の海っ端ということはわかるけど、はっきりと場所は特定されてなくて、それがまたいいですね。勝浦とか鴨川とか南房総って名前が出ちゃうとその色が着いちゃいますからね。架空の街の架空の民宿で一泊二日の間に起きたハートフルな物語、それで充分ですね。基本的には女子高生の青春小説なんだろうけど、疲れたOLとか、一発屋歌手のキャラ設定がなんとも哀愁が漂い、青春小説にいい味わいを与えています。きっちり伏線も回収されて終わっているので続編はないんでしょうけど、彼女や彼らのその後が気になります
アヴィ
成瀬本2冊を読んで俄然琵琶湖に興味津々となり、琵琶湖の水を京都に引っ張るという一大事業の顛末を著した本書が気になり読んでみた。時は明治まで遡り、天皇東征で都の地位を失った京都に活力を、そしてその先の近代工業の発展も見据えて京都疏水の構想がぶち上げられる。だが当然問題も山積。水量や水質の低下、国内では例のない巨大プロジェクト。知事や技師たちの思いは世代を跨ぐ。現代でもネタにされる、滋賀県民の「だったら水を止めるぞ」の原点でもある。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
相場師、十勝の小豆農家、高級和菓子店それぞれの思惑が入り乱れ、更に作況の悪さも伝わり、乱高下する小豆相場。市場はグローバルになり、コンピューターの操作によって巨額の資金が動く現代の商品先物取引だが、時代の変化と人の欲はあまり関係無いことがよくわかる。相場師の下がり続ける間は買い続けろが、素人には推し量れない世界を想像させる。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
明治以後の貴重な国産エネルギー源であった石炭は黒いダイヤと称され、食の分野で冷害に弱いが、冷涼な北海道十勝で産出される物が最高級とされる小豆を赤いダイヤと称した。それも全て本書によって知られたことは有名。性も根も尽き果て自殺しようとするところを希代の相場師に救われた主人公が、投機筋、生産者、消費者を巻き込み三竦みによる、丁々発止のやり取りが続く。下巻へ
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
井上陽水の主題歌が印象的な映画版。その原作の藤子不二雄A先生の漫画版少年時代。そして、その漫画版の原作となる本作。戦時下における地方の農村を舞台に、少年たちのイジメが克明に描かれる。都会からやってきた疎開少年の鬱屈とした思いは昭和が平成になり、令和になってもかわらないだろう。少年を救うのが終戦というのも意味深い。
アヴィ
裸の王様の逆バージョンだろうか、老爺にしか見えない白い犬。心が澄み切っているから見えるのか、心根が正直だから見えるのか、それとも愛する人の代替として見えているだけなのか、はたまたただの老人の妄想なのか、読む者に投げかけるQは深い。全ての人に白い犬が見えて、ワルツを踊る時がきっと素晴らしい世の中なんだと思います。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
最初に主婦が拉致されて、ホテルの部屋に監禁されてからは、その部屋だけで話は突き進む。そしてほとんど官能描写で、これでもかと続きます。苦手な人にはかなりきついと思うが、ラブサスペンスの大御所だけに全体のストーリーは良く出来ていて、最後まで一気に読み切れます。
アヴィ
自らの肉体を傷つけるという、究極のマゾヒズム。それは自分の為ではない、愛する人の為。滅私の心は誰にも伝わらず、理解もされない、でも愛している。ああして欲しい、こうして欲しいという自分勝手ななんちゃってドMの多い現代人こそ読むべきか。だが、自らを傷つける行為こそ、最大の自分勝手だろうか。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
スペースオペラとタイムオペラのショートショートに短編が混じったSF選集。23世紀の時代劇は全てタイムマシンで撮影された事実劇。なので、後の世に美男美女とされた歴史上の人物がじつは不細工とか、まあそれはそうだろうなとも思う。表題作はタイムパトロールの失踪事件を追うのだが、ラストは一捻りあり読み応え充分。
アヴィ
大山道場時代から極真会館創立そして世界制覇への道程を支えた高弟たちの証言の中で首尾一貫しているのは、2代目館長が本作の作者ということ。ことほどさように人品骨柄に優れ、周りから愛され、そしてこれが大前提だが空手の実力もピカ一だったのだろう。強さを証明するエピソードのタイ式キックボクシングとの闘いについても本書で触れられている。だが本書で知りたいのは極真を離れた経緯。梶原兄弟への激しい憎悪と、大山倍達への失望を語っているが、やはりなんとも遣る瀬無くなるのは自分だけではないでしょう
アヴィ
金田一耕助の研究本によると、金田一耕助譚のタイトルで使用頻度の多いのは「悪魔」「死」「女」などらしい。なので表題作のタイトルはかなり異質。だが、等々力警部との東京編での事件としては順当な内容。中途半端に取り調べが長いのと、所轄の警部補にうざ絡みされるところなんかはいつもの金田一耕助ワールド。湖泥もワールドの一作だが、堕ちたる天女は疾走感強めで一気に読まされる。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
長編で最も著名な作品は銀河鉄道の夜だが、短編では表題作が最も著名と思われる。やはり扉の向こうというのは、誰しも気になる。怪し気な文言が書かれていればいるほど人は惹きつけられるもの。不確かなものには近づかないという寓意も込められているのか、とにかくクシャクシャになった顔が元に戻らないというのが怖い
轟直人
2024/11/12 18:02

元中学国語教師轟直人です。2人の紳士は犬が死んでも自分の損得を考える自己中心的なキャラクターですよね。さまざまな注文も全て自分の都合のいいように解釈します。クシャクシャになった顔は心の醜さが目に見えるものとして定着してしまったということではないでしょうか?込められている寓意は「自己中心的な考え方の醜さ」ではないかと思うのですがいかがでしょうか?

が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
太宰治と大変仲が良かったという作者。それほど多くの著作を残さないまま病に倒れ早逝してしまったが、太宰とは真逆な文体であり、通俗感も独特だが、違った形で読み易い。この時代の小説に感じる古さが全く無い。勿論内容も素晴らしい、現代においても仲の良い夫婦を現す言葉として、本作を知らずとも夫婦善哉と使われることや、何度も映像化や舞台化されている事実がそれを証明しています。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
宮沢賢治の長編作品では、おそらく最も著名な本作。夜空を駆け、星座を縫うように走る銀河鉄道。その銀河鉄道のフリーパスのような切符をいつの間にか手にしていた主人公。不思議な車掌や乗客、友人さえもが何かいつもと違う。不思議な物語は残酷なラストを迎えるが、単に夢オチとも解釈しずらい宮沢賢治ワールド。江戸川乱歩が晩年サイン色紙に書いたという、現し世は夢夜の夢こそ真実が脳内を跋扈する。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
TVスタジオという、逆密室での殺人。トリックは確かにこの時代としてはかなり珍しい。全くそういう想定をしていなかったので、終盤えっどういうこととなるが、周到に張られた伏線に気付くとなるほどとなります。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
サラリーマンSFの第一人者による、まさにサラリーマンの仕事に関わる短編集。時代を感じるが、本四架橋の用地買収に携わるサラリーマンや、メーカーに出向を命じられたサラリーマンなどが、ミュータントや宇宙人と関わってしまいます。一番興味深いのは、最終話の子どもばんざいですかね。社会的弱者がモンスター化するというのは、現代への警鐘にも感じます。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
NHKの人形劇のタイトルが新八犬伝なので、本作が原作と勝手に勘違いして、つい読んでしまいました。でも読んで良かったです。どの八犬伝よりも、本作が一番の出来だと思います。極論すれば現代語訳の原典よりもこちらの方が安心して読めます。多少の改変はされているが、当然屋根上の闘いや破傷風の話など主要エピソードは出てくるし、浜路は可愛らしく、玉梓は怖く、キャラクターはみな生き生きとしています。出来うるなら、八犬士揃い踏みの後日譚まで書いて欲しかったくらいハマります。
アヴィ
北海道と本州の間、津軽海峡に動物相から植物相まで生物の大きな境界線があることを発見し、その境界線に名を残すブラキストンの後半生を描いている。幕末の日本、それも北海道がまだ蝦夷地だった時代に定住し、アイヌの民を愛し実際にプロポーズまでしている。しかし、元々軍人であり、その後は貿易商として北海道と関わるわけだが、幕末から明治のその時代に辺境の地での生活が大変であったことは容易に想像がつく。最終的には日本を離れることになるが、ブラキストンラインの発見だけでも、確かに偉人である。
アヴィ
現代に繋がる握り寿司の考案者として伝わる江戸な寿司職人。江戸時代の市井の人物であり、確かな記録が豊富にあるわけではないであろうことは間違いない。前半生については流行病で家族全てを失った以外は作者の創作だろうが、それなりに読まされる。寿司店を開業して繁盛してからは、娘に教育を受けさせ、読み書きそろばんがほとんど駄目な自分の代わりを任せるところは、身分制度への思いと成り上がり商人の意気地を感じる。幕府の倹約令への反骨もそういうところから来ているんじゃないかと
アヴィ
グラフィティとかボムってのは、写真とか爆弾とかの意味でしか認識していないので、ストリートアートの世界ではそういう使い方になるんだと知ることになるが、やたら馴染みがなかったり意味を取りづらいカタカナ言葉の羅列がきついですね。前半と後半も語り手の違い以上に急な変化がちょっと苦手。日本のバンクシーの正体にしてもあまり驚きがない。クライムノベルと謳っているが、そこを強調するほどでもない。確かに公共物に勝手に絵を描けば犯罪ですけどね
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
ジャパニーズホラー史上最も怖いと評されることもあり、取り敢えず読み始めてみた。所謂わかりやすいホラーでないことは確か。現象としてのホラー要素はほとんど無く、淡々と怪奇現象を調査するルポルタージュのように話は進みます。人の恨みとか、怒りの念というものは果たしていつまで存在するのか、それは消える事がないのか。調べれば調べるほど遡る因縁。そこにこそ人の世の恐怖の根源があるということだろうか。残念ながら自分は普通にサダコやカヤコのようなわかりやすいホラーの方が好きなようです。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
謎の赤ん坊少女の存在。たまみちゃんの出生の謎。葉子に迫る恐怖。探偵の登場。謎を追ううちに起こる殺人事件。下手なミステリー作家よりも、よっぽど一級品のホラーミステリーを描いた楳図先生。合掌
アヴィ
太宰が比較的落ち着いていた中期の傑作群。物語作家としての本領が発揮された、走れメロス女生徒駆け込み訴え等、元ネタからこれだけの作品を作り上げる手並みは鮮やか。富士山の美しさを言葉に現すとこうなるのかという富嶽百景。太宰の原風景への郷愁であり、作家として書き続けた故郷への思い。東京暮らしが長くなっても自分は異邦人という思いが強かったのか、まるで紀行小説のような東京八景。返す返すも死への渇望が薄らいだこの時期が長く続いてくれていれば、戦後の日本の文壇は違っていたのではと思わずにいられない
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
ミステリーの分野であれば、何でもこなした作者だが、本書のような鉄道ミステリーはあまり多くはない。新幹線殺人事件などあるが、大量の著作の中では目立つ作品は少ない。だが本書を読むと、他作品同様きっちりと時刻表トリックを用意し、いつもの森村ワールドを味わせてくれる。トリックについては、金田一少年の扉渡りのトリックのように強引だが、ここは素直に楽しまないと森村作品は楽しめない。
アヴィ
日本の浮世絵が世界の美術界に与えた影響が大きいことは有名だ。謎の絵師写楽については現代のバンクシー同様大物画家の変わり身説、複数人によるチーム説など、いくつかの説が流布されているが決定打は無い。なのだが本書を読むと、写楽の正体ってこういう結論が出ていたんだと一瞬思ってしまうほど、よく練られたストーリーになっている。ただ、歴史ミステリーとしては一級品だが、肝心のミステリーが付け足しになっているのが残念。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
新人賞受賞作では、受賞時のタイトルから刊行時には改題されることが多いが、たいがい原題の方のままの方が良かったんじゃという場合が多い。でも本作に限っては改題が大成功ですね。キャッチーなタイトルで、読書好きの食いつきもよくなるだろうし、それよりも何よりも原題ではタイトルがネタバレになってるんですよね。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
とても面白く読めるんですが、何故か不評な感想が多いですね。京極選評でも触れられているが、大きな瑕疵もなくまとまったストーリーだと思います。展開が急過ぎるきらいは確かにあるが、序盤から中盤にかけての冗長になりやすい部分を飽きさせないテクニックとして上手いです。後半の実際に皇居に侵入してからラストにかけては、他の受賞作と比べても充分盛り上がります。オーラスの変な終わり方も、この作者の持ち味と思えば納得です。あり得ないだろうが、宮内庁完全協力で映像化されたら面白い物が出来そう。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
ストリップ業界の1代の風雲児である瀧口義弘の半生を追ったノンフィクション。舞台がストリップ業界なので当然一条さゆりや愛染恭子が出てくる。平成以後なら桜樹ルイや小向美奈子まで、そして日本で最も有名なチリ人アニータまで、あちらの世界の錚々たるビッグネームが揃う。そんな有名無名のストリッパー達を仕切り、修羅場をくぐり一時代を築きあげた主人公。良い人生か悪い人生かは別として、悔いなく生きたという意味ではとても幸せだと思う。永井荷風の人生にも感じたがお爺ちゃんになってもストリップ小屋でストリッパー達に愛されたい。
アヴィ
本作が芥川賞を受賞した当時おれは鉄兵にはまっていたので、剣道に興味がありいつか読もうと思いながら時期を逸してしまっていた。内容は直球な高校剣道部を舞台にした青春小説。女子との関係など甘酸っぱい感じは時代を感じさせるが、ガタイのいい女子にマウントを取られて身動き出来ない男子とか、ドMにはたまらない表現があるのは面白い。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
巨人の星直撃世代にとって、星飛雄馬が恋愛感情を持った3人の女性の中でも、最も愛した宮崎キャンプで出会った日高美奈は忘れ難いキャラクターである。骨肉腫によって若い生命がもう幾許もないことを約束された彼女が、自由に生きられる象徴として、飛雄馬に聞かせた山村暮鳥の雲。明るく爽やかに歌い上げるような、おーい雲よのフレーズは余計に哀しみを誘った。本書によって山村暮鳥自身も、その時代に生きた多くの文人達同様壮絶な人生だったことがわかる。
アヴィ
名探偵シリーズではあるあるだが、順番に読まないと探偵のキャラが鼻についてなかなか話に入りこめないことがよくある。本作も先に猫丸先輩を知っているか、知らないかで楽しみかたが随分変わると思います。でも密室のトリックについては、その絵を想像すると笑えるところが評価点ですかね。だってバッキバキの目をしたおばさんと…
アヴィ
もしワニシリーズの最新刊。毎回思うのは、役に立たないとかよりも、こういった非常事態に遭遇することなどそうあるものではないし、あったら困る。本書は既刊に比べると、現実にありそうなシチュエーションを揃えてはいるが、やはりそうそうあるものではない。じゃあ何故シリーズを追いかけて読み続けるかというと、読み物としての面白さですかね。自分が人生で出会うことは、おそらくないであろう事態に、もしも直面したら。でも何も出来ないのが関の山だと思います。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
犯罪を描くことで人間を描くことに成功しているが、途中からすっかり純愛物語になってゆく。逃避行を続ける2人だけでなく、子を思う親の愛情にも哀しみが漂う。人はみな根っからの悪人などいない、関わった人によって悪人にもなれば善人もなるということだろうか。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
前半は登場人物にあまり魅力を感じない。中途半端にガテン系な主人公。その彼女も、そしてあの男も、何かボタンを掛け違えた感じが、その後の暴発を予感させる。事件が起きてからは犯人が誰かというフーダニットで話が進む純粋なミステリー小説っぽくなるが、それが本旨ではなくまた犯罪を描いてはいるが犯罪小説でもなく、作者が描きたかったのは悪人なのだろうか。下巻へ
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
自分も温暖化については基本的に本書と同じスタンス。しかし、本書で言及されているように人類の経済活動によって排出されたCO2による温暖化というのを声高に発するのが、勇気がいる社会になっているのも事実。化石燃料が有限であり、省エネ節エネが大事なのは当然だが、どうしてそこから温暖化に話が飛ぶのか、というのは本当に同意する部分です。ただ一足飛びに寒冷化が進むという仮説は少し無理がありますかね。
アヴィ
読んだ者の気分を悪くする小説家ランキングがあったら、おそらくトップレベルに君臨するであろう作者だが、本作もまた二進法の犬とは別な意味で読者を嫌な気分にしてくれる。視点を変えれば娘を持つ父親の気持ちに寄り添った一風変わった家族小説とも読めるが、さすがはこの作者ですね、最後にとんでもないオチが待ってました。いまのはなんだ、地獄かなという言葉は登場人物が作中に発するが、最後まで読んだ読者の叫びでもあったんですね。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
数ある大山倍達本の中では珍しい、弟子の立場からの評伝。著者は極真空手北海道支部を起ち上げ、軌道に乗せた組織の中では功労者であり、本書執筆当時は館長室長だか秘書室長の役職にあり、大山倍達最側近の1人だった。ただ本書で取り上げられるのは、極真空手最初期の猛者連であり、極真世界制覇を支えた幹部が組織を離れた理由や、同じく極真の名を世に知らしめる役割において活躍した梶原兄弟との確執。かなり深入りした内容だが詳細であればあるほど悲しくなるのが切ない。
アヴィ
5Gの運用開始と同じ2020年に出版された本書。こういう本は直ぐに内容が古びるものだが、何故かあまり古さを感じない。おそらく、未だに5Gは基地局の整備が遅いという理由もあるのだろうし、コロナ禍だったという特殊事情も鑑みればある程度は致し方無い部分もあるだろうか。だが、本書のラストでも語られている6Gが予定通り2030年に始まるなら、5Gも既に折り返し点間近に来ていることになる。果たしてこれからどうなっていくのか、本書に例示されているような低遅延高速大容量通信がもたらす夢のような社会は実現するのか。
アヴィ
ストレッチ本は色々読むんですけど、なかなか実践が伴いません。本書も、正直最初の柔軟度テストの時点で体中が悲鳴をあげました。痛くても出来るストレッチも紹介されているが、これも結構きつい。ということで自分にはきついけど、やる気のある人には良い指南書だと思います。自分も取り敢えずタオルを使ったストレッチは出来そうなので、頑張ります。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
名作の誉れ高い映画版だが、当然原作としての本作があればこそ。全体に感じるのは、そこで誰かが1言話せば全ては終わるのにという歯がゆさ。解説で語られる、登場人物は全員誰一人として、この物語の全体像を知らない、知っているのは読者だけというのがマストですね。本作以後洋の東西問わず、こういうシチュエーションを利用したミステリーは多いが、やはりよく練られた本作の歴史的意義は大きいですね。
アヴィ
サラリーマンSFの第一人者によるショートショート集。解説で星新一が語るように一筋縄ではいかない作風だが、やはり基本はリーマンの悲哀。スペースオペラ風の作品でも、宇宙船の乗組員がサラリーマン化しているのは、現代の目線からはブラックジョークのようにも感じるが、人が働くということの根源を活写しているのかもしれない。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
元々はファンタジーノベルの新人賞でデビューした作家だったはずだが、いつの頃からか自身の性癖や金遣いの荒さをあけすけに語る、お姉様ポジションの変な作家になっていた。顔をいじるのも、性風俗でバイトするのも自由だし、それをネタにもし、そして楽しんでいる姿は正直であり、カッコイイとも思う。でも本書で語られる女性達は果たしてどんな想いなんだろうか、同性に性の対象として見られていたことに嫌悪を抱いていなかったと思いたい。だがこの手のネタになると右に左に軽やかなステップでダンスを踊るように語るところは、さすがうさぎさん
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
国民全てにマイナンバーが振られ、一生涯付いて廻りデジタルで管理される時代。夜逃げでも逃げ切れないとなれば人はどうするか。本作のように完全に他人に成りすますとかしか方法がないですね。過去の自分が築き上げた全てを捨て、全く別の人生を歩む、苦しいがどこか蠱惑的な魅力を秘めた話でもある。だが突然その事実を知らされた残された人達の想いは、ある男とはなんとも罪深き者でもある。
が「ナイス!」と言っています。
アヴィ
江利チエミのテネシーワルツとは関係無いんだろうなと思いながら読み始めると、がっつり関係ありました、というか重要な意味を持ってきます。本書が発行されたこの時期は、他のミステリー系の新人賞でも、戦時中のエピソードが現代の事件の発端になっているというのが多かったような気がします。日本上空で撃墜され、怪我を負った状態で母子に匿われた米兵が、食事や怪我の手当てをされる度に言う「テンキュー…」というブロークンな発音がなんとも悲しみを誘う。
アヴィ
初出が昭和60年。ワープロがやっと普及期に入り始めたくらいだろうか。当時学生だったがアルバイトの時給が450円の時代、行きつけのリサイクルショップで型落ちのワープロが10万で売っていたのを何も躊躇わずに買ったのも今や昔懐かしい思い出。その後成熟期に入ったワープロ専用機は、間もなくパソコンのワープロソフトにとって代わられるが、まだ日本では草の根パソコン通信くらいしかなかった時代に、インターネット社会を予見するような文章が本書にあるのは、先見の明だろうか。
アヴィ
変な家や間取りが人気だが、本書は正統派の日本の名作住宅の間取り集。江戸の茅葺きの住宅から明治大正昭和の住宅の変遷がよくわかる。有名なグラバー邸のように外国人が自分達が暮らしやすいように建てた住宅。そこから学び最初期は和と洋が歪な間取りが多いが、やがて日本風の和洋折衷が完成する歴史がよくわかります。戦後の使いやすそうな狭小住宅が自分としてはツボですね。
アヴィ
明治初年の開陽丸沈没から令和4年のKAZU1沈没まで、北海道の近現代史を気象が原因で起こった事件事故で年代順に綴られています。三毛別のヒグマ事件、洞爺丸台風、チリ地震による大津波など、現代でもドキュメンタリー番組や多くの書籍などで取り上げられるものから、本書で初めて知るものまで一つ一つのエピソードが短く収められています。明治から大正昭和初期には、職業に殉じて災禍に遭い落命している人が多いですね。平成以後で印象深いのは2013年のオホーツクに吹き荒れた暴風雪で、娘を守りながら凍死した父親のエピソードですかね

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2020/01/30(1791日経過)
記録初日
2020/01/31(1790日経過)
読んだ本
446冊(1日平均0.25冊)
読んだページ
156332ページ(1日平均87ページ)
感想・レビュー
442件(投稿率99.1%)
本棚
0棚
読書メーターの
読書管理アプリ
日々の読書量を簡単に記録・管理できるアプリ版読書メーターです。
新たな本との出会いや読書仲間とのつながりが、読書をもっと楽しくします。
App StoreからダウンロードGogle Playで手に入れよう