この作品では「本」を持つ事も読む事も禁じられているのが、つまり個人が「ものを考える」という事を禁じるという事を象徴的に表しているように思った。個人として意見を持つ事を良しとせず、全体が用意している考え方に従う。恐ろしい事だが、一方で「本を携えていた時代でさえ、本から得たものをまともに利用してはいなかった」簡単に陥ってしまう事でもある。 結末は衝撃的だった。そしてこの作品は現実にいつでも起こりうる物語なのだと思った。

この作品では「本」を持つ事も読む事も禁じられているのが、つまり個人が「ものを考える」という事を禁じるという事を象徴的に表しているように思った。個人として意見を持つ事を良しとせず、全体が用意している考え方に従う。恐ろしい事だが、一方で「本を携えていた時代でさえ、本から得たものをまともに利用してはいなかった」簡単に陥ってしまう事でもある。 結末は衝撃的だった。そしてこの作品は現実にいつでも起こりうる物語なのだと思った。

本書がテーマにしている「悪」とは自身の悪いところや欠点を徹底的に認めず全て他人のせいにして逃げる、という行為。それを「邪悪」性として著者自身の精神科医としての経験を交えて論じている。終盤にはこの性質は個人の問題ではなく集団にも起こるとして、そうならない為の在り方について考察する。本書で論じられている「悪」はサイコパスのような特殊な人間でなく、身近なところを見回せば誰もがこういう人いるよね、頷くようなもの。また世の中に溢れている事。真の成長とは自分の未熟さや失敗と向き合う事でしか得られない。当たり前だが。