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2023年10月の読書メーターまとめ

つちのこ
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感想・レビュー
11
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2023年10月に読んだ本
11

2023年10月のお気に入られ登録
2

  • yerupaja
  • Jam44013121Jam

2023年10月にナイスが最も多かった感想・レビュー

つちのこ
あまりの薄さに驚いたが、それに比例するように最後まで読んでも何も残らなかった。「日本では社会に障害者はいないことになっている」という、これをあえて書くか。健常者から見れば障害者への関心の薄さは否めないが、その存在は否定していない。誰もが障害者になる可能性をもっているからだ。障害者である私の従弟は、自分の障害の不幸と辛さを、生まれてこのかた吠えるように周囲に当てつけ、毒をまき散らしている。著者を従弟に重ね合わせ、どうすることもできない閉塞感と邪悪な暗い叫び声を、後味の悪いこの作品に見てしまったように思う。
が「ナイス!」と言っています。

2023年10月の感想・レビュー一覧
11

つちのこ
最後の一行にこの作品の凄さが凝縮されていると感じた。この一行のために、退屈で抑揚もなく淡々とした文章を辛抱強く読まされていくが、最後の最後に体を貫かれたような切れ味を魅せられ、バッサリとやられる。この退屈な文章を理解するためには再読が必要かもしれないが、それは人それぞれでしょうか。私の場合は何度読んでも印象は変わらないような気がする。物語は1939年のバーデンハイム。暗黒のホロコーストへ突入する、ユダヤ人の大量移送が始まる前夜の話である。
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つちのこ
本書を読み終えてから改めて嵐山光三郎著『文人悪食』の谷崎の項を読んでみた。というのは、本書にあった「谷崎はヌラヌラな食い物が好き」という記述がどうにも気になったからだ。コンニャクやトコロテン、バナナなどヌラヌラ、ドロドロしたものになぜ執着したのか。当時人気があった女優春川ますみのような豊満な女性の肉体賛美にもそれは連想されていく。著者の見解では食への異常な執着を谷崎のフェティシズム的な性的思考に結びつけているのも見逃せない。蛇足だがマゾヒズム画家の春川ナミオは、春川ますみを女王様のモチーフとして⇒
つちのこ
2023/10/26 17:43

⇒好んで描いており、このあたりは谷崎の影響を受けているようだ。『文人悪食』によると、谷崎がヌラヌラな食べ物を好んだのは、虫歯が多く固いものを噛めなかったことによると書いている。これは拍子抜けするような面白い逸話。ともあれ、これまで谷崎作品を食の観点から読んだことはなかった。茫洋の海のような作品群の再読に、老後の楽しみがまた増えた。

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つちのこ
長らく本棚の肥やしになっていた作品をようやく手に取った。19年前に19歳の女性が書いた作品は、全く色褪せることない、凶暴な毒をまき散らしながら飛び込んできた。この衝撃は他に例えようもないが、表現という小説の世界が、改めて無限に広がる掴みどころもない空間のような恐ろしさであると感じずにはいられなかった。今更だが、この作品は時代を象徴することさえも超越した、圧倒的な才能を紡ぎだした後世に残る一冊になるに違いない。併せて吉高由里子主演、蜷川幸雄監督の同名映画も見たが、原作世界を忠実に描いており好感が持てた。
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つちのこ
ホロコーストの悪夢は子や孫の世代にまで伝染し、遺恨を残し続ける。『ガラスの帽子』はそんな悪夢を脱ぐことのできない帽子に例えて、体の重要な一部とした比喩である。建国間がないイスラエルではホロコーストの生還者が歓迎されず、むしろ避けられ、虐げられていたという。「ホロコーストはなかった」のごとく、歴史の闇に葬むることはできない。生還者たちが忘れようとしても消し去ることができない悪夢は、時の隙間に入り込むように戦後何十年が経っても凶暴な姿となって現れてくる。収録された九篇は重く沈むような因果と捉えることが⇒
つちのこ
2023/10/25 20:30

⇒できない恐ろしさを綴っている。結婚のためにユダヤ教に改宗までしたドイツ人女性の物語「でも、音楽は守ってくれない」は、生還者の夫の両親の複雑な心境と苦悩が痛いほど突き刺さった。

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つちのこ
全編を通して、そこはかとなく甘美なエロティズムが漂う雰囲気を堪能しながら読了。最後の数ページにすべての謎が解き明かされるが、そこまでのプロセスに、否応なしに祖母の人間像や理解し難い心情の変化が読む側に蓄積されていく。それが最後の解放となって放出され、長く余韻を残す見事な構成に舌を巻く。才能に溢れた憎らしく上手い小説に出会えたことが嬉しい。イタリアでベストセラーとなったこの作品を、クレスト・ブックスに収録した編者の目の付け所にも関心した。
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つちのこ
眉唾モノの怪談話や都市伝説、殺人事件があった現場や奇祭など、寄せ集めのごった煮的な内容。実話といいながらも話の出所や記事を書いたライター名もなく、さらに登場人物がいずれも仮名の羅列になると、信じろというのは無理というもの。奇抜すぎて笑わせる話もあったり。だったら読まなけゃいいが、この手の怖い話が好きな自分には、やはり覗いてみたくなることを抑えられない。まぁ、娯楽作品としては楽しめたでしょうか。願わくは、次作を出すことがあるなら背筋が凍るようなホンモノのノンフィクションホラーを編集してほしい。
TI
2024/02/02 09:39

>背筋が凍るようなホンモノのノンフィクションホラーを編集してほしい。 これですよ。本当に怖い話が読みたい。おすすめがあったら教えてください。

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つちのこ
生い立ちから大道芸人として生きていく過程を世相を織り込みながら、ギリヤーク本人や交流がある周辺の人々へのインタビューを中心にまとめている。著者の突っ込みが甘いのか、引き出した答えは核心を突けずに浅いのが残念。なぜ生涯現役として踊ることにこだわるのか…それは本人にしか分からないだろう。本作を読んでからYouTubeを見たが、1990年代の圧倒的なキレがあるパフォーマンスに驚き、93歳になったこの夏の路上公演の姿に心を打たれ、止めどなく涙が溢れた。そこにあったのは、痛いほど伝わる死ぬまで踊り続ける覚悟である。
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つちのこ
あまりの薄さに驚いたが、それに比例するように最後まで読んでも何も残らなかった。「日本では社会に障害者はいないことになっている」という、これをあえて書くか。健常者から見れば障害者への関心の薄さは否めないが、その存在は否定していない。誰もが障害者になる可能性をもっているからだ。障害者である私の従弟は、自分の障害の不幸と辛さを、生まれてこのかた吠えるように周囲に当てつけ、毒をまき散らしている。著者を従弟に重ね合わせ、どうすることもできない閉塞感と邪悪な暗い叫び声を、後味の悪いこの作品に見てしまったように思う。
が「ナイス!」と言っています。
つちのこ
事象に捉われず、物事を断定しない、「なぜ」という疑問を絶えず持ち続ける柔軟性。著作を手にするたびに、その人間性の素晴らしさの魅力にはまっている。解説で作家の篠田節子が「日本の知の最高峰」と称えるくらいの大学者なのに、文章は平坦で分かり易く、何やら庶民的な匂いがプンプンしてくるのだ。すでに鬼籍に入ってしまわれたが、講演をぜひ聴いてみたかった。蝶の習性に決まったコースを翔ぶ「蝶道」があるが、クロアゲハは樹上高くを翔ぶので捕虫網が届かず採集できない、これはなぜか。こんなことを真剣に考える人はいないだろうと思う。
が「ナイス!」と言っています。
つちのこ
息もつかせぬドキュメントを一気に読んだ。自ら志願し、女性の狙撃兵を養成する学校を出てソ連赤軍の兵士となり、わずか20歳で戦死した伝説の狙撃兵の話である。任務に就く兵士が日記や記録をつけることを厳しく禁止していた状況下で、奇跡的に残った日記は過酷な戦況とローザの心境の変化を綴っている。スターリン政権下で英雄として担がれ、祖国を鼓舞するプロパガンダの道具にされた彼女が、小隊を率いるリーダーとなった終盤には人の命の尊厳を悟る。穏やかになり、慈愛に溢れた女性らしさがにじみ出た死の直前に書かれた手紙が涙を誘った。
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つちのこ
この未曾有の事件を追うことになった動機が突発的かつ流動的。事件の背景を怨恨や差別によるもの以上に、集落にはびこっていた夜這いの風習による性の乱れに起因しているということに執着しすぎているのも鼻につく。報告書や遺書などの当時の資料を掲載しているが事件の核心には迫れておらず内容が薄い。不十分さを補うためか、三年後に上梓した『津山三十人殺し七十六年目の真実』では、筑波昭著『津山三十人殺し』の内容矛盾を指摘しているものの、新たに発掘された真実から新解釈を記しているので、ライターとしての拘りを見ることができた。
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ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2020/05/03(2059日経過)
記録初日
1986/01/19(14582日経過)
読んだ本
3323冊(1日平均0.23冊)
読んだページ
1020297ページ(1日平均69ページ)
感想・レビュー
3154件(投稿率94.9%)
本棚
30棚
性別
現住所
岐阜県
URL/ブログ
https://tsuchinoko2006.blog.fc2.com/
自己紹介

早期リタイアし、念願の晴読曇読雨読パラダイスに突入。
旅に生き、好きな本を、好きなときに、好きなだけ読む暮らしをさせてもらっています。
飛ばし読み、流し読み、斜め読みは性に合わないので、本は一字一句最後まで読み切るタイプです。
なので、駄本に気づいて後悔することしきり。
近年はノンフィクションが多くなっています。
博覧強記を目指しているわけではありませんが、未知のジャンルの作品に出会うことが無上の喜びです。
読書以外の趣味は登山、歩き旅、昭和レトロを探す町歩き、B級グルメ食べ歩きです(歩くことが好きなんですよ)。

消え去りゆくホーロー看板がある風景を訪ねて、全国を旅した記録を発信するサイトを作っています。
◆ホーロー看板探検隊が行く
https://horotankentai.sakura.ne.jp/

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