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2024年5月の読書メーターまとめ

uchiyama
読んだ本
18
読んだページ
4834ページ
感想・レビュー
12
ナイス
86ナイス

2024年5月に読んだ本
18

2024年5月のお気に入り登録
1

  • ぽんつく(まんじゅう)

2024年5月のお気に入られ登録
1

  • ぽんつく(まんじゅう)

2024年5月にナイスが最も多かった感想・レビュー

uchiyama
プルーストは社交界での地位を人物の身振りや話し方をコミカルに真似ることで確立していたようだけれど、観察眼と模倣は優れた作家の資質と言えて、谷崎の女性たちへの憑依っぷりも、説明的な心理描写にたよるのではなく、彼女たちの仕草や口吻や行為によって、内面が透けて見えたり見えなかったりするところがエロティックでもあり面白く、妙子が物真似を得意とするところにも通じていて。それにしても、「此処に書き添えて置こう」など、稀にしれっと顔を出す「作者」に毎回驚いてしまいます。大胆さと繊細さの見事な織物。
が「ナイス!」と言っています。

2024年5月にナイスが最も多かったつぶやき

uchiyama

自分の中で、かつて見たいくつかのショットは(変形されていても)生きている、と感じることがあるけれど、言葉はそうではなくて、かなり好きなものでも、丸々覚えてそのリズムを生きることは難しく、そのイメージに感心するしかない、というのが正直なところ。何度もその頁に戻るしかない。ま、ショットもウロだから同じか。

が「ナイス!」と言っています。

2024年5月の感想・レビュー一覧
12

uchiyama
謎解きの解や出典や、には、いつもそれほど興味はなくて、それは、ゴダールの夥しい引用に対するのと同じで、その嫌味ったらしさに、ひー、とはなるものの、追究していく知識も気力も体力もないからですが、ナボコフにしろゴダールにしろ、謎を孕んで連ねられていく言葉や映像の洪水が、「ある存在状態から別の存在状態へと移行するのに必要になる不可思議な精神操作の喩えようもない痛み」でありながら、そうであるからこそなのですが、とにかく面白くて、最後の1行は外連味あり過ぎだとしても、カッコいいなぁ。「快楽」の阿波踊り状態と同じく。
が「ナイス!」と言っています。
uchiyama
この本に出てくる名も無き人たち(や動物や風景)は、みんなどうなっただろう、と思います。バルトが、ケルテスの少年の写真を見て、その子が以後どう生きたか、それはなんて小説のようだろう!と感慨にふけらずにはいられなかったように。人というのはとても悲しい存在だ、と思わせる本ですが、決してそういう抽象的な言葉を吐かなかった武田百合子も、「サーカスには匂いがあるんだねえ」と教えてくれた「娘」も亡くなってしまった今、これを読むと、しんしんと冷えたような、でも、牛乳やシベリヤやりんごを手渡されたような気持ちにもなります。
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uchiyama
谷崎の面白さは、いろんな解釈を許しそうに見える設定と、その実、どんな解釈も不要にしてしまうような、本来の意味での「イメージ」を圧倒的に喚起する言葉の連なりが、難なく共存しているところで、やっぱりヒッチコックを思わせます。数多く、末永く、読まれることの強さ。
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uchiyama
「魔法罎の外側のつやつやとしているのが凸面鏡の作用をなして、明るい室内にあるものが、微細な物まで玲瓏と影を落しているのであるが、それらが一つ一つ恐ろしく屈曲して映っているので、ちょうどこの部屋が無限に天井の高い大広間のように見え、ベッドの上にいる幸子の映像は、無限に小さく、遠くの方に見えるのであった」…ここ、何度読んでも唖然とする。物語の展開には断然不必要でありながら、これがなければ小説としては崩壊する、と言ってもいいような(って、言い過ぎかな)、狂気と不穏すら感じさせるのに鷹揚な、世界の縮図。うますぎ。
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uchiyama
そう思い入れがあるわけではなく、なんとなくテレビなんかで数回観ている筈の映画と比べると、小説は思った以上に説明的で、一層思い入れはなくなり。マイケルが「初仕事」のあと、幹部の指示に従って拳銃を手から放す場面、アル・パチーノは、外連味たっぷりに、印象的な、すごく上手い(それだけに少し鼻につく)手の演技を見せてたの思い出し、でも、小説にはそういう魅せる技術はなくて、とにかく、説明しよう、という書き方。ブラージのお魚エピソードも、まず死に様の説明から入るのでパッとしない。めんどくさいから下巻は読まないかも。
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uchiyama
面白い…。バルト言うところの「我慢しない時代」が加速して、もちろんあらゆる人が生きやすくなっていく方がいいのだけれど、時代時代でまた違った制約はつねにあり、人が完全に自由に生きることなど不可能な中、いったいほんとの意味で女性の味方であるとはどういうことか、を思ったり。分をわきまえることに疑問を持たず、確かに底辺ではある彼女たちの、エネルギッシュな姿と個性を、美辞麗句抜きにとことん具体的に書き記し、残すこと。生半可じゃなく、愛としか。小説に挿絵があるのは好きじゃないけど、これは文の凄味を中和して可愛かった。
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uchiyama
「レベッカへの鍵」がどうにもこうにも我慢ならなくて読み切れず、これを。象のような巨体のマハーラージャがダンスを踊るように優美に鳥を撃つところなんかは面白かったのですが、結局そこだけ、で、この子供じみた不遜な君主が死んじゃってからは、そう面白くもなく。最後は、各容疑者のキャラクター診断みたいな解決方法ですが、とりあえず読めました。「舞台装置それ自体に魅力のない本格推理を読むくらいなら、クイズかパズルでもやるほうがまし」と訳者あとがきにありますが、「舞台装置」というよりは「書き方」なら確かに肯けます。
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uchiyama
単行本で読んだものを文庫で再読。対談や鼎談というものをそんなに読んでるわけじゃないけど、ここまで対談相手に対して嫌な媚びのない対談集はなかなかないのでは、と思います。(吉行淳之介に対しても、媚びじゃなく、さっぱりした色気。)
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uchiyama
監獄と少年院という固定された場所で繰り返される囚人たちの身振りや仕草に、「ヴァンダの部屋」の取り壊されるスラム地区の住人たちの動作や出入りを思い返したりしました。どちらも詩的真実に忠実な作品なので、「虐げられた人々」という役割を他人に押し付けるような「代弁者の告発」に陥らないから一層、読んだり見たりしているこちらの姿勢が問われる厳しさがあります。しかもこの本は、最後にいきなりミクロの決死圏しちゃうというか、「トーク・トゥ・ハー」になるところ、死をやたらに荘厳にしたりせず、どこか軽やかで、そこも感動的。
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uchiyama
逐一比較したわけではないですが、のちに、長編になり、一人称になりすることで逆に、内面も言動も無駄口を叩かなくなっていった印象なのが面白かったです。
uchiyama
2024/05/07 09:05

「その家には、家らしい匂いがなかった。まるで屋外のような匂いだ。表の部屋にあるものといえば、砂、叩き潰された家具の破片、壁についた洪水の跡の上に見えるのは額が掛かっていた痕跡だろう」。この「家」に入っていく「招かれざる客」マーロウに集約される前の、賭博師。

が「ナイス!」と言っています。
uchiyama
プルーストは社交界での地位を人物の身振りや話し方をコミカルに真似ることで確立していたようだけれど、観察眼と模倣は優れた作家の資質と言えて、谷崎の女性たちへの憑依っぷりも、説明的な心理描写にたよるのではなく、彼女たちの仕草や口吻や行為によって、内面が透けて見えたり見えなかったりするところがエロティックでもあり面白く、妙子が物真似を得意とするところにも通じていて。それにしても、「此処に書き添えて置こう」など、稀にしれっと顔を出す「作者」に毎回驚いてしまいます。大胆さと繊細さの見事な織物。
が「ナイス!」と言っています。
uchiyama
とりたててこの本が、というわけでもないのですが、90分で描けるはずの話をだらだらと120分、下手するとそれ以上にしてしまうような映画への憤りを、長いミステリのあれやこれやにも感じることはあって、多分、見応え、読み応えのある作品にするにはそこそこの長さが必要、という配慮もあるのでしょうが、情動を生じさせるのは長さじゃないんだ、と。それこそ、野生のクロテンの動きみたいに、敏捷で引き締まった描写が読みたかったです。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2020/05/05(1516日経過)
記録初日
2020/07/06(1454日経過)
読んだ本
502冊(1日平均0.35冊)
読んだページ
138241ページ(1日平均95ページ)
感想・レビュー
389件(投稿率77.5%)
本棚
5棚
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