達家尚成、三十代男性、同性愛者。今まで共同体から拒否されてきた様々な経験から全てを受け流すことを覚える。どんな共同体も拡大、発展、成長を目指している中、そんなことには興味もなく何も考えずただその場をやり過ごすことに長けている。語り手はそんな尚成の生殖本能。語り口はエッセイのようでくだけていて面白みがあるのだが、内容はとても難しい。わかるようなわからないような不思議な読後感。尚成がかなり特殊な個体であることは確かだ。しっくりくるかどうかなんてみんな考えてるのかな。ただ流されてるだけの人も多いのでは。

親の過干渉が原因で離婚し、新たなスタートを切った百合。ずっとヒーローになりたかった舞人。舞人とテンダネス店員の高木の友情。面白かったし、割とテーマはヘビーだけど最後はほっこりで読後感はいい。帯の「真面目なひとが報われますように」という言葉通り頑張ってる人達が幸せに向かって進んでいく物語だった。でも、なんか、登場人物増えすぎてレギュラーメンバーの出番が少ないのがさみしい。「コンビニ兄弟」というタイトルなんだから兄弟中心の話にして欲しいなとちょっと思う。今後、煩悩まみれの修験者長男が出てくるのかこないのか。

新夏は啓久と付き合って5年。プロポーズの翌日に啓久が女子高生を盗撮して捕まる。示談が成立し、前科もつかない。会社も勤め続けている。生活は何も変わらない。啓久の姉はすぐに別れろと言い、友人はこんなことで別れるのは勿体ないと言う。どちらにも反発を覚える新夏。啓久のことが好きですぐに別れる気はない。でも、なぜ啓久なそんなことをしたのか、わかりたいが全然わからない。触ったわけではなくただ写真を撮っただけ。でも性犯罪は性犯罪。罪に問われなくてもやった事実は絶対に消えない。なんて重苦しい話。「タガタメ」が脳内で流れる

知っているドラマも全く知らないドラマもある。ドラマ自体がわからなくても十分楽しめる。とにかく熱量がすごい。本当にドラマが好きなんだろうなというのがよくわかる。時代が変われば価値観も変わるし、描かれ方も変わる。確かに昔は朝起きたら知らない男とベッドにいた場面から始まるドラマ多かった。その後、その男は誠実で最終的にゴールインというあり得ない展開。かなり危険なのにドラマはそれが当たり前だった。役に立たなくてもそばにいてくれる存在の考察も。ドラマにする上で何かしら意味を出さないといけないんだろうけど現実は違う。

自分ファーストで、と言いつつも簡単じゃない環境。面白おかしく書いてあるが、やっぱり大変そう。高齢の両親のけっこう激しい夫婦喧嘩。父は確かに酷い。でもみんなから役立たずって言われ過ぎて、もう飲んだくれるしかなくなったんじゃなかろうかと思ってしまう。そんな中で呑気に歌うお姉さんは、きっと和ませたいんだろうな。すみちゃんに内緒と言いながら本人に誕生日のお祝いをすると告げちゃうお姉さん可愛い。歯医者の話も笑った。お母さん、いつだってお姉ちゃんにかかりきりな分、すみこさんを思ってる。家族それぞれの理想と現実。難しい

達家尚成、三十代男性、同性愛者。今まで共同体から拒否されてきた様々な経験から全てを受け流すことを覚える。どんな共同体も拡大、発展、成長を目指している中、そんなことには興味もなく何も考えずただその場をやり過ごすことに長けている。語り手はそんな尚成の生殖本能。語り口はエッセイのようでくだけていて面白みがあるのだが、内容はとても難しい。わかるようなわからないような不思議な読後感。尚成がかなり特殊な個体であることは確かだ。しっくりくるかどうかなんてみんな考えてるのかな。ただ流されてるだけの人も多いのでは。

今までもらったたくさんのプレゼント。物だけじゃなくて、気持ちや笑顔も。もらったら返して、またもらって、返して…そういうの面倒だし負担だからやめようとなることもある。でも、本当は相手への気持ちなんだよね。義務とかじゃなくて。プレゼントはもらうのもあげるのも難しい。迷惑になるのは嫌だし、もらったものは捨てにくい。気持ちを頂いたと思って不要なものは捨てましょうと断捨離の極意みたいにいうけれど、そんなに簡単じゃないんだよなー。どうせプレゼントをするならもらう方もあげる方も気持ちのいいかたちでやりとりしたい。

毎日ひたすら同じことを繰り返し、心を動かさない安定した生活をしている出版社勤務の浜野文乃・45歳。私には何もない、あるのは加齢による変化だけ。そんな浜野に思いっきり共感してしまう。そんな浜野はホスクラ通いのパリピ編集者・平木直理と出会い、新しい風が吹き始める。平木に連れられて行った変形モッシュバンド・チキンシンクのライブに衝撃を受ける。ボーカルのまさかと付き合っていない体での付き合いを始める。平木もまさかも浜野を受け入れており、押し付けもしない。自分を確立した中年だからこそありがたい存在だ。

昭和の初め、金沢の花街を舞台にした二人の芸妓の物語。性格は正反対だが、双子のように育ってきた朱鷺とトンボ。朱鷺は7歳の時に売られ、トンボは橋の下で捨てられていたところを置屋のおかあさんに拾われ養女になる。華やかな世界だが、みな事情があり一般的な幸せには縁遠い。どんなに思い合っていても結ばれることは叶わず、とにかく切ない。芸妓としてプライドを持ち、一筋縄ではいかないとわかっていても覚悟を決めた二人。凛とした姿がかっこいい。蒼次郎との三人の関係性が素敵。安易に恋に流れないのがいい。昔の話だけど展開は今風。

特にファンでも無かったが、シングル曲は大抵歌えるし、ライブにも行ったことはあるし、番組も観ていた。SMAPの歴史がさらっと書いてある感じで何で解散することになったのか詳しいことはわからないまま。裏側を描いているようで当たり障りなくメンバーの素晴らしさが際立つような書き方で安心して読める。光GENJIもSMAPも嵐もすごいアイドルだったし、ファンじゃなくても老若男女皆が全メンバーの顔と名前が一致して、歌もわかるグループというのはもう出てこないだろうな。すごいアイドルだったし、もう見られないのが残念。

「最高のアフタヌーンティーの作り方」の続編。達也とパティスリー開業の為、桜山ホテルを辞める涼音。結婚する時にどちらかが改姓しなければいけないことに違和感を覚える。読み始めは涼音が面倒臭い子だなと思ってしまった。入籍と言うが籍は作るものだとか改姓したくないとか、もう、なんでもいいやん、と思ってしまった私は思考停止しているんだろう。いつだって常識を変える人は変人扱いされてきたんだろうな。改姓するからって権利を奪われるものではないって確かに！とりあえず周りが言う通りにしておけばいいという考え方って危険。

娘の誕生日を迎え、初めての妊娠出産から18年かぁと思い、積んでいたこちらを手に取る。高校生の時に読んですごく笑った覚えがあるが、かなり小難しい哲学的なことが多くてそんなに笑うことあったか？と過去の自分に驚く。妊娠出産を知らなかったから笑えたのかな？「ブタブタ、ブタかあさんめ」と母に言っていたのに同じ体重になったというのがとにかくおかしくて、母に読み聞かせた覚えがある。「あんたもそうなるよ」と言われ、ならんし！と言っていたが、四半世紀経ち、妊娠ではなく不摂生でそうなって最近よく思い出す文章だった。

ペンション経営の傍ら漫画家になった綾とアルコール中毒で全然仕事ができなくなった画家の涼。会わなくなって久しいけれど、ずっとお互いを思い続けている。どんどん時間が遡り、二人の関係性が見えてくる。付き合っていたわけでもなく、体の関係もなかった二人。けれど、周りの人間を狂わせるほど、お互いをひたすら愛していた。プラトニックだったから忘れられなかったのだろうか。16年前からずっと好きでお互い同じ気持ちであることはなんとなくわかっているのに踏み出せないまま結局は離れて、それでもまだ断ち切れない。このあとどうなるのか