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水蜘蛛
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ネタバレ高くて硬い壁と壁にぶつかって割れてしまう卵があるときには、私は常に卵の側に立つ――読了後、村上春樹の言葉が頭に浮かんだ。この小説において、真に恐ろしいのは全体主義ではなく、人が創造した「システム(=壁)」なのだ。そのシステムは全体主義や民主主義という名を借りて圧政を敷き、とても冷徹に人から自由や尊厳を奪っていく。個人がシステムの下で孤独を強いられている状況でも、ウィンストンやジュリアが人間らしく心を通わせ、生きようとしたことに胸が熱くなったし、最後で互いを憎み合ってしまったことに悲しさがこみ上げてきた。
0255文字
水蜘蛛
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一瞬の美しさを放つ花火を様々な視点から表現している。これらの写真からは、イメージとしての花火を超えて、普遍的な美しさに内包される儚さを見事に表現している。まさに川内氏の写真の根底にあるテーマと合致した被写体である。撮影を「狩猟」と例えている川内氏。本作も、「狩猟」のように外に出て本能のままにシャッターを切ったのだろう。その才能に感服する。なお、本作と『うたたね』は第27回木村伊兵衛賞を受賞している。
0255文字
水蜘蛛
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有史以来、ウェーバーの言うカリスマ的支配による体制の末路はどれも悲惨だが、我々はそれらの歴史を学んでもなお、カリスマを求める。例えばフランスは、革命を起こしたのに王政復古をやったり、ナポレオンの甥を皇帝にしたり、結局王様が好きなんだなと呆れてしまう。もちろん、こうした独裁体制や全体主義は恐ろしいが、もっと恐ろしいのはこの小説におけるヒツジたちだと思う。ゲッペルスを彷彿させるブタによって洗脳されるヒツジたち(=大衆)こそが、全体主義の根幹を創造する原動力となってしまう。ブタよりもヒツジの無知が一番恐ろしい。
0255文字
水蜘蛛
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「あらゆる名前」には、それぞれの人生があり、個人としての尊厳がある。だがシステム化された現代社会において、個人というのは紙の上でのデータや統計の数字に成り下がってしまった。特に、「無縁社会」と呼ばれて久しいわが国において、個人の尊厳は「自己責任」という都合のいい、それこそ無責任な言葉によって虐げられている。そんな中で、本書は異国の、しかも20年以上も前に書かれたものであるが、現代日本社会を懸命に生きる私たちにとって生きる指針となる寓話であろう。
0255文字
水蜘蛛
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ネタバレ以下、自分なりのだらだら考察。「雨田具彦」は、アンシュルス当時に起きた暗殺事件に加担。そこで恋人を失う。「雨田具彦」はその体験をもとに『騎士団長殺し』を描く。それは暗殺事件の核心(=イデア)を喚起するメタファーであった。つまり、雨田氏は絵画というメタファーを通してイデアを顕すことができる人物である。一方、「私」は免色氏の肖像画を描く過程で、「雨田具彦」と同じくメタファーを通してイデアを顕すことができる能力を身につける。そして同時にイデア(=「騎士団長」)を見ることができるようになる。
水蜘蛛

それにより、「秋川まりえ」が「免色渉」のイデアの手にかかることなく、またその後「私」がイデアを描くことをやめ、元の肖像画家に戻っていることがその証左である。「二重メタファー」とは何だろう? メタファーの世界に棲み、「顔なが」曰く「とびっきりやくざで危険な生き物」。「二重メタファー」=「白いスバル・フォレスターの男」ともいえる。つまり、三色→三色から想起されるイメージ(隠喩1)→「私」の心の闇(隠喩2)→「白いスバル・フォレスターの男」なのだろうか。

03/07 12:20
水蜘蛛

メタファーというのはイデア(=ものごとの真の姿)を捉え、顕すことができるが、同時に危険な行為でもある。『海辺のカフカ』で「大島さん」が「世界はメタファーだ」と言う場面がある。世界はメタファーであるなら、そのメタファーはさまざまなイデアを捉えることができる。そしてもし、悪のイデアなるものがあれば、それを捉え、ひとりでに動き出してしまうと大変危険である。この『騎士団長殺し』という小説はその警鐘なのかもしれない。

03/07 12:20
3件のコメントを全て見る
0255文字
水蜘蛛
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ネタバレまず、第一部の読了後に思い浮かべたのが、ラファエロの「アテナイの学堂」だ(絵画つながりということもあって)。その中央には、イデア論を唱えたプラトンと、その弟子・アリストテレスが次のように描かれている。「君、やはりこの世は仮の姿でしかないのだよ。真の姿はイデアであるのだ。」と、プラトンは天上を指さし、「いやいや、師匠それは違います。この世界こそが真なのです。」と、アリストテレスは手のひらで地上を示している。そして騎士団長は言う――自分はイデアである、と。どうしてもこの情景が頭から離れない。
水蜘蛛

前作の『多崎つくる~』や『女のいない男たち』で正直がっかりしたが、今回はとても面白い。設定はところどころこれまでの作品と共通項が多いが、不思議と新鮮さがある。この物語はどういう結末に帰するのだろう? すごく楽しみだ。最後に、これもネタバレになるのだが、免色氏がまさしくギャツビーと被る。語尾に「オールド・スポート」と言っても違和感がない。

02/25 18:16
0255文字
水蜘蛛
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汽車に乗って、シュッシュッポッポと“時が止まった国・トルコ”や“ウ○コの国・インド”、“怠惰な国・スリランカ”、そして“機械に支配されたエログロな国・日本”等を経由してユーラシア大陸をぐるりと一周する愉快で壮大な鉄道旅行記。相席した人々との交流や、立ち寄った土地での出来事を痛快なブラック・ユーモアを交えて描かれている。各国の鉄道事情から見える国の情勢や歴史、文化が垣間見えるところは、鉄道旅行の醍醐味だろう。阿川さんのあとがきも大変愉快。
かえる

水蜘蛛さん、お元気ですか?私も買いました!

04/30 21:07
0255文字
水蜘蛛
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ネタバレ死者が生者を徒労に終わらせることができるという<モノ>としての「奢り」。黒人兵を「飼育」する過程で残酷な通過儀礼を受ける少年の物語。これらの短編は、戦後の日本社会の暗部をグロテスクに見事にあぶり出しており、また読者を不快にさせる緻密で詩的な文章が素晴らしいと言える。この時代の日本に対する閉塞感または絶望感は、今日にも通じるところがあり、決して古びることはないだろう。若干23歳で、これらの小説を執筆した大江氏の才能に感服する。そして江藤淳の解説というのはすごい。
0255文字

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プロフィール

登録日
2011/06/30(5024日経過)
記録初日
2011/06/30(5024日経過)
読んだ本
159冊(1日平均0.03冊)
読んだページ
51673ページ(1日平均10ページ)
感想・レビュー
62件(投稿率39.0%)
本棚
4棚
性別
自己紹介

世界文学に陶酔するカメラ小僧。愛機はFUJIFILM X-Pro2。

この短い人生の中で、遠藤周作、村上春樹、キルケゴール、イヴァン・イリイチ、フランツ・カフカ、ブルース・チャトウィン、コーマック・マッカーシーから大きな影響を受けた。

憂国の下級役人を粛々と勤めながら、村上主義者としてときどき羊男と連絡を取って地下活動を行っている。

ハードロックやへヴィ・メタルを聴きながら酒を飲み、気ままに小説をしたためる日々を送る。

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