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2024年11月の読書メーターまとめ

たまさか
読んだ本
9
読んだページ
3247ページ
感想・レビュー
9
ナイス
50ナイス

2024年11月に読んだ本
9

2024年11月にナイスが最も多かった感想・レビュー

たまさか
今年発売された本書は1996年に出版されたものの文庫版。ちょっとした自伝のようになっている前半が特に素晴らしく、著者がこれまで言葉を通じて作り上げてきた記憶と経験とを、改めて言葉によって確かめ直そうとするような文章が、過去と現代を繋ぎ、著者がもういない未来をうっすらと照らし出す。そして後半の本にまつわる文章は、読者が自分の経験と記憶を言葉にする手がかりを与えてくれる。長田弘を読むのは久しぶりだったけど、彼の言葉が自分に取って何より必要なものであることを再確認する。まだ読んでいない彼の本があることが嬉しい。
たまさか
2024/11/19 23:38

「言葉がつくすべき条理をつくし、きれいな後味をのこす露伴の文章を読むと、言葉がおよそ信じられない今日にあって、なお言葉は信じるに足るのだと思える」というフレーズは、まさに自分がこの本に対して感じるものであるし、そのような本を他にも探していかなければならないのだとも思う。

が「ナイス!」と言っています。

2024年11月の感想・レビュー一覧
9

たまさか
「虚」と「実」の2パートに分かれた本書は、「実」パートで、馬琴に「里見八犬伝」の物語(「虚」)を語らせることで、八犬伝のフィクション性が際立つ構造になっていると同時に、その「実」のパートを「語って」いるのも、山田風太郎という著者であることまでをも読者に意識させる。そしてその構造は、「里見八犬伝」の原作が持つ瑕疵をカバーする役割を果たすだけではなく、「実」のパート自体が、最終的には虚実内混ぜの迫力ある物語を生み出してしまうという効果まで持っていた。山田風太郎というのは本当に大したもんなのだった。
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たまさか
古くからの有名な「物語」をちゃんと読んでおきたいとずっと思っていたこともあり、kindleunlimitedでこれを。恥ずかしながら「里見八犬伝」も名前以外は何も知らなかったのだけど、中国の水滸伝を下敷きにしたこの物語には、ジャンプ漫画まで連なる大衆娯楽の基本的な型のいわば「元ネタ」が詰まっているらしく、確かに滅法面白いし、山田風太郎の語り直しも見事。しかも「八犬伝」のストーリーを書いていた当時の馬琴が、知り合いの北斎に話を聞かせるというサイドストーリーが間に挟まるというサービス付き。素晴らしい...。
たまさか
2024/11/27 00:04

しかし、「南総里見八犬伝」の「南総」が、房総のことだということすら知らなかったとは....。

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たまさか
航空輸送補助隊員の女性を主人公にした、最近良く見かける第二次世界大戦での女性の働きを中心に据えたミステリ。主人公が刑事に協力するという設定は、民間人の捜査協力に説得力を持たせることが必要になるため、その説明にかなり紙幅を費やしたのには閉口したけど、時代背景と主人公の性別を考えると仕方のない面も。その問題が解決した後は、かなり堅実な警察小説だった。戦争で人が次々死んでいく中での殺人事件という逆説の処理もよくできていたと思う。ただ、女性の戦争協力が孕んでいる、加害性の問題は手付かずだったのだけが少し残念。
たまさか
2024/11/24 14:20

翻訳に少し怪しげな箇所があったけど十分に面白かったので、ぜひ続きが読みたいけれど、読メの登録数を見ても出版は難しいかなあ....。

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たまさか
今年発売された本書は1996年に出版されたものの文庫版。ちょっとした自伝のようになっている前半が特に素晴らしく、著者がこれまで言葉を通じて作り上げてきた記憶と経験とを、改めて言葉によって確かめ直そうとするような文章が、過去と現代を繋ぎ、著者がもういない未来をうっすらと照らし出す。そして後半の本にまつわる文章は、読者が自分の経験と記憶を言葉にする手がかりを与えてくれる。長田弘を読むのは久しぶりだったけど、彼の言葉が自分に取って何より必要なものであることを再確認する。まだ読んでいない彼の本があることが嬉しい。
たまさか
2024/11/19 23:38

「言葉がつくすべき条理をつくし、きれいな後味をのこす露伴の文章を読むと、言葉がおよそ信じられない今日にあって、なお言葉は信じるに足るのだと思える」というフレーズは、まさに自分がこの本に対して感じるものであるし、そのような本を他にも探していかなければならないのだとも思う。

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たまさか
十数年ぶりの恩田陸をkindleunlimitedで。文章はこなれているし、話の作りもよくできていて、さすが恩田陸と思う一方、亡くなった耽美派作家を囲む関係者(ほぼ親戚)という設定に全く魅力を感じなかった。無駄に複雑な縁戚関係が何の効果ももたらしていないことに加え(ただし、互いの関係が近すぎると成立しない物語ではある)、登場人物の半数以上が物書きであるため、あちこちで「作家」の安っぽい自己意識が披露されるのだけど、それがある種の読者が望む「作家」像の再生産にしか思えないのが辛かった。もう恩田陸はいいや。
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たまさか
下巻になって、この小説をどう読んだらいいかはある程度わかったのだけど、災害の規模が中途半端に広がり、その切実さが十分に描かれる間もなく物語が解決篇に突入し、その解決篇はかなりのドタバタな上に、停電を起こした犯人像には意外性もなければ説得性もないので、正直がっかりしてしまった(ついでに言えば、2000年代的発想に満ちているのも辛い)。こんなに頑張って読んだのに....。とはいえ、これだけの規模の災害を描くという試み自体にそもそも無理があるので、著者のチャレンジ精神だけは認めてあげないといけないのかも。
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たまさか
以前から読みたいと思いつつ、機会がなかった城山三郎をkindleunlimitedで。田中正造といえば天皇への直訴が一番有名だけど、この小説はその直訴を含め、足尾鉱毒事件への反対運動が一番盛り上がった「後」の、運動が退潮し追い込まれていく局面を描く。到底実現不可能な要求を掲げ、それでも立ち退かない谷中村の人々と、共に闘う田中正造の姿が提起する、本当に切実な要求を抱えた運動が行き詰まった時に、それを「どう終わらせるか」という真摯な問いが胸に迫り、城山氏はこういう作品も書く人だったのかと新鮮な驚きだった。
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たまさか
最近になって(調べたら1年前だった)初めて読んだ出久根達郎が抜群に面白かったので、タイトルもおしゃれなこの本を。やはり期待に違わず面白かった。簡潔で歯切れの良い文章や短い文章なりの構成の見事さは、もはや職人芸。そして、前回は本にまつわる蘊蓄に目が行ったけれど、本作は著者が営む古本屋に出入りする客が持ち込むエピソードの数々が素晴らしく、やはり自分のことより他人のことを書く方がエッセイは遥かに優れたものになるということの見事な例証にもなっていた。本は読むものであると同時に、共に生きるものでもあるのだった。
が「ナイス!」と言っています。
たまさか
kindleunlimitedで古い国産ミステリを読んでみようシリーズ。今回は1959年の江戸川乱歩賞受賞作。古い因習的な人間関係と新しい形の人間関係が相互に入り組んで混乱を生み出している時代状況を背景に、その様々な軋轢から生まれる感情のもつれから起こった殺人事件が描かれる。着想は面白いし、かなり丁寧に書かれているのも確かで、特に問題はないのだけど、中心となる家が資産家で、それ以外に出てくるのがバー、喫茶店、クラブという設定ゆえ、生活感に乏しいのが、個人的には残念だった。これは完全に個人的好みですね..。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2011/07/06(4921日経過)
記録初日
2011/06/18(4939日経過)
読んだ本
1199冊(1日平均0.24冊)
読んだページ
437546ページ(1日平均88ページ)
感想・レビュー
925件(投稿率77.1%)
本棚
4棚
自己紹介

趣味は買書と積読鑑賞(時々読書)。読書傾向は雑多。欲しいものは本を置くスペース。

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