ネタバレAudible。 タイトルは野心めいているが、信念の物語であった。 中二の夏休み、島崎は幼馴染みの成瀬の言葉に頭を抱えていた。それは「西武に夏を捧げる」という突拍子もないものだった。閉店を控えたデパートに通い、毎日中継のテレビに映るという彼女の動機と目的とは…… 個性が際立ったキャラを中心に据えた地域密着型の作品。 成瀬の、信念を具現化するための高い行動力と他者の評価を意にも介さない強メンタル。 書店員さん達がいまの大衆へ推薦する作品ならば、今の現代人は信念が欠落していると感じられているのだろうか。

ネタバレ先人の思考の歴史が網羅された貴重な一冊。 世界はどうしてできたのか、世界は何でできているのか？人間はどこからきてどこへ行くのか、何のために生きているのか？ 原初から人間が抱いてきた二つの問いに対し、試行錯誤を繰り返してきたのが哲学と宗教である。 だが現在では自然科学の台頭により、二つは存在意義が問われているという。 世界と人の真理の追及。 先人達は価値観や経験をもとに発生と融合や分裂を繰り返し、さまざまな学派や宗派を生み出してきた。 自らを腹落ちさせる学びとは。 これは、その一助となる一冊である。

ネタバレAudible。 他者との距離を保つためには。答えは物語の中にある。 看護師を辞めた怜花は、うまくいかない就活を続けていた。不安な彼女だが、ひとつだけ楽しみにしていることがあった。穏やかな口調で語られるポッドキャストの「ツキない話」。月をテーマにした語りから、彼女は人生のヒントを得る…… 新月をモチーフにして構成された物語には、多様な仕掛けが施されている。 新月は見えない。だがたしかにそこにいる。 それは主人公たちが縁で繋がっている関係性をも示しているようだ。 これは素晴らしく見事な円環の物語である。

ネタバレ他者の本心に触れるときは誰しもが躊躇するに違いない。 学校が終わるとコミケでナンパされた一回りも年上の主婦が住むマンションに赴き、コスプレセックスに明け暮れる斉藤。あるとき好きな同級生から告白され交際を開始するも、彼の気持ちは次第に主婦の方に傾き…… 作品は五篇からなる連作短編集。 悩みを抱えた主人公たちは、それぞれの環境の中で、あがきもがき、人生にあきらめながらも自分の本心と向き合っていく。 物語は奇抜な設定ながらも、彼らの悩みは普遍的なものであり、それはきっと多くの人へ共感をもたらすに違いない。

ネタバレAudible。 多大なる影響力、それはもはやカリスマか。 家のPCで「ひとり暮らし　京都」と不穏な検索履歴を発見した成瀬慶彦は、受験を控えた娘が家を出ようと画策していると思い込む。受験当日、会場でテントを張った男子と遭遇する成瀬親子。家に泊まりに来いと言う娘に慶彦は唖然とする…… 成瀬シリーズ第二弾。 相変わらず成瀬の一人称の物語はない。 物語とは大なり小なり語り部の成長の話で、この物語で成長するのは成瀬に関わる人物達だ。 故に成瀬の一人称の物語は無いのだろう。 彼女は、だた影響を与えるのみなのだ。

ネタバレAudible。 タイトルは野心めいているが、信念の物語であった。 中二の夏休み、島崎は幼馴染みの成瀬の言葉に頭を抱えていた。それは「西武に夏を捧げる」という突拍子もないものだった。閉店を控えたデパートに通い、毎日中継のテレビに映るという彼女の動機と目的とは…… 個性が際立ったキャラを中心に据えた地域密着型の作品。 成瀬の、信念を具現化するための高い行動力と他者の評価を意にも介さない強メンタル。 書店員さん達がいまの大衆へ推薦する作品ならば、今の現代人は信念が欠落していると感じられているのだろうか。

ネタバレAudible。 互いの聖域を求めた更紗と文。 ふたりは社会的には被害者と犯罪者という型にはめられる。それは社会がはてはめた型であり、ふたりは互いを自己の聖域と感じている。 事実と真実の違い、更紗と文が感じる苦悩を癒せるのは社会ではなく、唯一互いだけなのだ。 幾度も再読してきた本を初めてAudibleで聴いた。監督の解釈で構成された映画とは違い、作者の想いがそのまま伝わるAudibleでの臨場感は余計に更紗と文への感情移入を増してくれる。新たな物語体験はより一層作品への愛好度を深めてくれることとなった。

ネタバレのちのSF小説に多大な影響を与えた記念碑的作品。 19世紀のイギリス、ある日、数本の円筒が地球へ落下する。中から姿を現したのはタコのような形状をした火星人であった。レーザー光線やガス攻撃、巨大な機械により、イギリスの街は蹂躙されて、人類は火星人の食糧とされていく…… 古典SFで、火星人=タコ型ともいえるイメージを植えつけた名作である。物語はHERO要素があるものではなく、一般大衆の視点から語られる。それが余計にリアルであり、この時代にこれほどの想像力を有したウェルズには畏敬の念を抱くばかりである。

ネタバレAudible。 5階建てマンション、アドヴァンス・ヒル。近くの公園に古くからあるカバのアニマルライド。人呼んで”リカバリー・カバヒコ”。彼には自分の治したい箇所と同じ箇所を触ると回復するという都市伝説がある。アドヴァンス・ヒルに住む悩みを抱えた人々。彼らはカバヒコとの触れ合いから少しずつ変化をはじめる…… なにかを治したい、取り戻したいと考える人達の連作短編集。この手の物語で青山さんの右に出る人はいないのではないだろうか。 縁を主軸に優しく語りかける物語の最後には涙を誘われることは間違いない。