ちょっと神経質で過剰かな…とも感じられたが、色んな考えや生き方を否定せず、マイノリティを理解しようと努力する主人公。全ては当てはまらなくても、どれかには必ず当てはまるのではないだろうか。欧陽で寛容に満ちた社会はまだこれから構築されていくのかも知れないが、それが果たして住み良き社会かどうかはまた別の問題であるようにも思われた。

淡々と語り綴られていく文体は柴崎友香の特徴なのだろうか。タイトルに相応しい、日常の中で今と過去が交差する不思議な世界観が夢の中の出来事のように語られていて面白かった。どんな場所にも自分がそこに至って目にする迄の歴史と過去が存在し、それに思いを馳せる楽しみが理解出来るならばこれは秀逸な作品と呼べると思う。

子供の夏休みの宿題のような淡々とした文章で綴られてゆく展開はテンポがイイ反面、どこか心をざわつかせる不穏な空気を常にまとっていた。白昼夢の中の出来事のような…過去と現実と捏造された記憶が入り交じりながらの世界観は、ボンヤリした頭に染み込んでくるようだった。巻末の漫画はほぼほぼ同じ体験をした自分にはやけに響いた。恐怖にも似た不安感を募らせる妙作でした。

待ちに待った三秋縋の六年振りの新作。プロンプター、システム、サクラと言った架空の世界が違和感なく自然にスルっと頭に馴染む手法が三秋氏の真骨頂。その独特の世界観の中で演じられる尾上、鯨井、澄香の絡み合う気持ちが暴かれてゆく毎に心を揺さぶられる作品だった。

街と生き、その変遷をそこで生活してきた岸政彦と柴崎友香が描く。とてもリアルで匂い立ってきそうな街の息づかいが読んでて楽しかった。生きてきた時代が世代的にドストライクなのも感情移入しやすい要素となり得た。大阪と言う街が個人的に身近な存在でないのがとても残念に思えた。

何気ない日常を家族に視点を置いて見つめ直した。時間が経ち、成長して老いてゆく。

無自覚に加害者となってる自分。それに気付きながらも反発する感情を抑えられない。目をそらし続けた結末が心を揺さぶった。まさに読んでる自分の事を冷ややかに非難されているようで途中辛くもなった。ある意味凄い作品だった。

ちょっと神経質で過剰かな…とも感じられたが、色んな考えや生き方を否定せず、マイノリティを理解しようと努力する主人公。全ては当てはまらなくても、どれかには必ず当てはまるのではないだろうか。欧陽で寛容に満ちた社会はまだこれから構築されていくのかも知れないが、それが果たして住み良き社会かどうかはまた別の問題であるようにも思われた。

図書館愛用者として、図書館を運営する側の人が書いたエッセイを読んでみた。図書館の魅力と課題が見えてきてそれなりに面白かった。