短編集だがうち２篇が白眉。石蕗南地区の放火と君本家の誘拐。個人的好みで言えば仁志野町の泥棒もいいけど、やっぱり前述の２篇が圧巻。石蕗〜は最後の最後まで予断を許さない主人公の心理描写が素晴らしい。たった１人の心理描写だけでこんなにジェットコースター的なスリルを味わわせられるとは。それが無理なく破綻なく、人物造形から当然と思わせる筆致で描かれていて。君本〜も内面描写が素晴しい。どこまでも意固地な主人公の身勝手な内心が共感と反感をないまぜにして呑み込まされる。 女性的感性云々を言いたくないがコレを男に書けるか。

短編集だがうち２篇が白眉。石蕗南地区の放火と君本家の誘拐。個人的好みで言えば仁志野町の泥棒もいいけど、やっぱり前述の２篇が圧巻。石蕗〜は最後の最後まで予断を許さない主人公の心理描写が素晴らしい。たった１人の心理描写だけでこんなにジェットコースター的なスリルを味わわせられるとは。それが無理なく破綻なく、人物造形から当然と思わせる筆致で描かれていて。君本〜も内面描写が素晴しい。どこまでも意固地な主人公の身勝手な内心が共感と反感をないまぜにして呑み込まされる。 女性的感性云々を言いたくないがコレを男に書けるか。

読破。下巻も上中とは違った味わい。疲弊していく楚漢両軍とその王たる項羽と劉邦が描かれている。中では劉邦の魅力がたっぷり描かれていたが、やはり下巻は項羽に焦点があっている。韓信や縦横家などの要人らの描写も豊かであるが、中でも項羽の内面描写。滅ぶ者の姿に心を寄せるのは日本人的な判官びいきもあろうが……勝つと決まったあとの劉邦に見どころもない訳でもあり。あとがきと解説が卓抜している。あとがきが言葉少なながら行間を読ませまくる。解説はダイジェストであり総集編であり、要約であり。素晴らしい読書体験だった。是非。