大江健三郎は初読なのだが、これを読む限りだと飼う・飼われること、支配・被支配の関係性に注目していることはわかった。病院もそうだし犬もそうだし少年院も黒人兵もそう。

大江健三郎は初読なのだが、これを読む限りだと飼う・飼われること、支配・被支配の関係性に注目していることはわかった。病院もそうだし犬もそうだし少年院も黒人兵もそう。

荒木優太と星野健一に興味があり読んだが、どの「在野研究者」たちもアイデンティティの維持のやり方をそれぞれの状況に応じて編み出しており、「研究」と題するからには人生を賭けているのだと思った。特に荒木優太の「馬鹿にされるのをいちいち気にしていたら研究なんてやってやれない」という言葉にはたくましさを感じる。

ユングにも生前、リヒャルト・ヴィルヘルムという相方らしき人物がいたらしいことを知る。

「おとぎ話」と「神話」について、前者は個人的に主人公を抑圧していたものを倒して終わる(シンデレラの継母とかのことを言っているんだと思う)のに対して、後者は「世界に恵みをもたらす」ことで終わる(イエスやブッダも「英雄」にカテゴライズすることができるらしい)、という説明がされているのだが、言われてみれば「神話」は「おとぎ話」を大規模に拡大したものなのかも知れないと思う。

以前からかなり興味のある本だったため、満を辞して読み始めたのだが、「海辺の光景」も「抱擁家族」も好き好んで読むようなものではないな、とは思った。孤独な男がぐちぐちしている小説は(具体的に言うと西村賢太のことなのだが)好きだったりするのだが、家庭でのギスギスにはなぜか耐え難いものを感じる。俺はこの本を江藤淳の「私小説」として読んでいるようなところがあるのだが、「批評」というフォーマットを採用していることでワンクッション挟んでいる分、やはりこちら側としても「処理」のやり方は違うとは感じる。