大学のクラブの先輩が新入部員である一回生の黒髪の乙女に一目惚れし、何とかお近づきになろうと奮闘する京都を舞台とした奇妙奇天烈なファンタジー作品。日常生活の中に様々な非日常的な出来事が発生し二人に襲いかかる。まるで宮﨑駿監督のアニメ作品を言語化しているかのようなシーンも見受けられた。果たして先輩は願いを叶えることができるのか。黒髪の乙女の先輩に対する想いや如何に。出身が京都なもので楽しく読ませてもらった。破茶滅茶なドタバタコメディであるが哲学的なお話も含まれており一筋縄ではいかない。違う作品も読んでみたい。

中島敦の『山月記』、芥川龍之介の『藪の中』、太宰治の『走れメロス』、坂口安吾の『桜の森の満開の下』、森鴎外の『百物語』という古典名作五篇を、著者が京都を舞台に現代風にアレンジして新たな物語としたもの。原作も全て見直した。自分の大学時代を思い出しながら、面白おかしく、でも少し後悔の念も抱きながら読ませてもらった。特に新釈『山月記』と『百物語』には胸打たれた。何にでもなれる、と希望に燃えながらも、その何かになれなかったときのことを思い、臆病に、そしてちょっと斜に構えながら大学生活を送っていたことを思い出した。

坂口安吾の短編小説を漫画化した作品。原作と併せて読んだ。ヒダ随一のタクミの弟子である耳男が夜長の長者の美しい娘である夜長姫の持仏作成を他のタクミと競う。夜長姫の明るく無邪気な笑顔に、その裏には血を死を好む本当の怖さが隠されているのだが、耳男は翻弄される。本作品は、近藤さんにしては、かなり自身の理解を前面に出して漫画化されていると感じた。その分、耳男の夜長姫に対する複雑な想いがひしひしと伝わってくる。美は、狂気や残酷さと共存し、その美に囚われた者を狂気に陥れる。夜長姫は耳男にとってのファム・ファタールかな。

坂口安吾の短編小説を漫画化したもの。漫画と原作を行き来して楽しんだ。桜の森の花の下が怖い山賊の男が攫ってきた美しい女を女房にして山で暮らし始めるが、女の願いに従って都に出る。都では盗賊となって、着物や櫛や笄や簪を、さらには人の生首までをも女の望むままに与える。女はそれで首遊びをして楽しむ。キリのない女の欲望に退屈した男は女と共に山に帰り、途中、満開の桜の花の下で女を殺してしまう。そして女も男もそこで消滅してしまう。残酷で狂気に溢れた幻想小説。美とは？狂気とは？孤独とは？虚無とは？そのまま楽しむしかないか。

近藤ようこさんの漫画はやはり静謐で上品である。漫画から原作、原作から漫画へと、両方を並行して読んだ。原作を大切に漫画化されているのがわかる。漫画を読むことで、原作がより幻想的に、より怪談めいて感じられた。小説をより面白く読むためには、字面を追っているだけでは駄目で、中身を具体的にイメージすることが肝要と改めて痛感した。目の潰れた六歳の子供を森に捨てに行く父を描いた第三夜、殺される前に一目恋人に会いたいと願う捕虜を描いた第五夜、死ぬことを決心し乗っていた船から暗い海へと飛び降りる男を描いた第七夜の夢が好き。

大学のクラブの先輩が新入部員である一回生の黒髪の乙女に一目惚れし、何とかお近づきになろうと奮闘する京都を舞台とした奇妙奇天烈なファンタジー作品。日常生活の中に様々な非日常的な出来事が発生し二人に襲いかかる。まるで宮﨑駿監督のアニメ作品を言語化しているかのようなシーンも見受けられた。果たして先輩は願いを叶えることができるのか。黒髪の乙女の先輩に対する想いや如何に。出身が京都なもので楽しく読ませてもらった。破茶滅茶なドタバタコメディであるが哲学的なお話も含まれており一筋縄ではいかない。違う作品も読んでみたい。

若くて美しい妻テッサを惨殺により失った庭いじりが好きな外交官ジャスティンが妻の死の謎を解き明かすために奮闘する物語。舞台はケニア。テッサはアフリカを食い物にしている先進国の製薬関連企業の闇を追求して何者かに殺された。志を同じくして常にテッサと一緒に行動していたアフリカ人男性医師アーノルドもテッサ惨殺と同時に行方不明となる。テッサは色情狂であったかの様な噂が流れる中、ジャスティンは妻の潔白を信じアフリカに渦巻く巨大企業の陰謀に立ち向かう。ただ噂どおり読みにくい。特に皮肉に溢れた会話の部分。粋と言えば粋だが。