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2025年1月の読書メーターまとめ

お抹茶
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2025年1月に読んだ本
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2025年1月のお気に入られ登録
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  • venturingbeyond
  • 銀河帝国

2025年1月にナイスが最も多かった感想・レビュー

お抹茶
堀切にある個人豆腐店の家族の物語。初おばあちゃんにとっての息子が五十歳でコロナで亡くなるという災難を乗り越え,嫁と孫の温かい家族で豆腐を売る。家族だけでなく,お客さんも温かい。章ごとに語り手が代わり,八十代,四十代,十代,そして飼い猫・福のそれぞれの年齢の心情がうまく表れている。初が嫁の咲子に店主を譲りたいと言う場面にそれぞれへの愛情が感じられて温かい。この店を継ぎたいというはっきりしたきっかけがなくても,自然と思えるようになる,そんな心の変化が頼もしい。他の小野寺作品より体温が高い。この店に行きたい。
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2025年1月にナイスが最も多かったつぶやき

お抹茶

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2025年1月の感想・レビュー一覧
40

お抹茶
著者は半世紀以上京都で遺跡調査をしてきた。平安京遷都以前の京都盆地は,大小の河川や池沼が存在し,治水対策はなく氾濫原もあった。朱雀大路は約70mの道幅で,両側に柳が植わった極めて広い並木道。1975年頃は平安京跡には史跡指定地はなかったが,調査や公有地化を進めて遺構が遺されている。人口が減少して田畑化が進んだ右京では地中に良好に残る遺跡が多い一方,多くの土地が掘り返されてきた左京では出土遺物は多いものの保存状態は良くない。平安京郊外の寺院や山林寺院跡の調査も多数。
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お抹茶
日本人にはわかりにくいアイテム・アイコンの意味を短くわかりやすく説明する。著者の西洋絵画への冷めた視線も楽しい。月桂樹があれば芸術や薬効,イトスギは「生と豊穣」と「死と喪」の両面。完全変態する蝶は生・死・復活の象徴。男児も女性服を着ていたが,男児用の玩具があればその子は男児。リュートは音楽や聴覚の擬人像以外にも両性具有の意味を持ち,弦の切れたリュートは「調和の乱れ」「不和」の象徴。画中画は伏線や効果音のようなもので大事な鑑賞ポイント。時,法,嫉妬,勇気といった抽象概念の擬人化は,感覚だけでは読み取れない。
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昭和の名人,現代の人気者のインタビューや対談をまとめる。同じ人が時を隔てて登場するのもおもしろい。皆に共通するのは,芸には終わりなく,苦しみながらも挑戦するひたむきな姿勢。「顔の表情、体の動作だけでお客さんを笑わすとなると、聞かせて面目くさせるのがおろそかになっていけない」(八代目林家正蔵)。さん喬が語る師匠小さんに言われた言葉,さん喬の弟子・喬太郎が前座だった時のさん喬のエピソードという師弟の流れも趣深い。「お前の方から皆さん聞いて下さいいって家へ訪ねて行くな」というのは市馬が師匠小三治からの言葉。
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閉館が迫ったソウルのクラシックホテル。そこに訪れる人や働く人を主人公にした短編集。もっとホテルそのものに焦点が当たればよかった。ままならない人生の悲哀を伝える。物語の構成としては「夜勤」や「招待されなかった人々」に漂うやるせなさが切なかった。
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小幌や土合など観光地化された秘境駅も利用者がいるならそれに越したことはないと言い,生活利用者がいなければ廃止はやむを得ないと考える。老人をはじめマナーの悪い客へのクレームは強い。ホームも待合室も小さい瑞穂駅だが,ホーム脇の花壇には色とりどりの花が咲き,景色もおおらか。筬島駅の近くのゆったり流れる天塩川と緑の山と青い空の一方,国道ではトラックが豪速で飛ばす。女鹿駅近くの国道もトラックが爆走し,人家は一軒,上りは6時台と7時台の一日二本だけ。小湊鉄道はロケに活路を見出す。
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ジャントリフィケーションを初めて使用した社会学者・グラスの功績に光を当て,バンクーバーと横浜寿町の事例を挙げる。グラスの特徴は,住民調査を基に世代を超えた長期的な地域コミュニティの持続にまで視野を広げ,住宅政策を考えたこと。郊外化進展の一方でジャントリフィケーションの発生に気づいたが,社会政策や都市計画には懸念が反映されていなかった。社会的経済的に劣位の者が自分よりさらに劣位なものを叩くという構図も予想した。多民族多文化のバンクーバーのような都市では,移民は追い出す側にも追い出される側にも含まれる。
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原稿はなく解説員ごとに説明を変えるコスモプラネタリウム渋谷。経歴や特技の異なる8人の解説員が四季の星座を解説する。プラネタリウムにいるような感じになる。南十字星の近くには目につきやすいニセ十字がある。星座にまつわる神話の紹介も豊富。狩人オリオンの自惚れに怒った神様はサソリを放ったため,さそり座とオリオン座は同じ空に現れない。「どれも暗い星ばかりですが、幸運という意味を持つ星だからこそ、見つけにくいのかもしれません」。秋の四辺形は「ゆっくり見上げないと見つからないかもしれません。秋とはそういう季節です」。
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ネタバレがん細胞や生殖細胞以外の体細胞は,ヒトでは分裂を約50回繰り返すと老化して分裂を停止し死滅する。代謝量が減ると一定時間の濃度が減る。オートファジーは細胞の新陳代謝や有害物の排除を介して老化や疾患に対抗し,健康を守る。運動は組織の血行を良くして筋肉・骨・関節の劣化を防ぐので,運動の習慣は重要。歳を取れば活動量も基礎代謝量も減少するから6時間程度の睡眠時間で足り,8時間寝ようとして睡眠薬を使う必要はない。誤嚥性肺炎予防はまずは口腔ケアで,高らかに声を出すこともよい。
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理論と実例を含める。社会や経済の変動に合わせ柔軟に需要を創造しうる都市や地域が生き残り,輸入代替のみに頼る経済は停滞や衰退の危機を孕む。コロナ禍を経て,個人の働き方,新しい自営的就労の台頭,共助の器としてのコミュニティや地域経済のありようが変容するのではないか。分断や格差を是正するための場としてのコミュニティが必要とされ,内発的な主体性を創出するマネジメントの役割が「私」だけでなく「公」「共」の分野でも高まっている。中心都市から離れた条件不利地域でも,情報通信業の田園回帰が見られる。
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クラシック音楽の曲名をわかりやすい筆致で解説する。ハイドンの時代のコンサートでは,交響曲はコンサートの開始や終了時や合間に演奏される「オケだけによる音楽」でメインではなかった。ハイドンの交響曲のほとんどの副題は曲の内容や運びとは関係なく,雰囲気,開始方法,逸話などに基づいている。opは楽譜の出版順の番号で,作曲順ではない。交響詩は交響曲と異なり,基本的に楽章の区切りなく演奏され,原題をオーケストラだけで演奏する音楽にしたもの。オーボエ奏者の著者が演奏していて最高に幸福な音楽はK370とK452。
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お抹茶
前提知識は必要。ロシアからインドへの原油輸出が増えてルピーで支払われると,流動性の低いルピーがロシアに積み上がり,ドルに交換するには手数料が高い。基軸通貨国のアメリカが経常赤字を無視することで他国は短期のドル資産を積み上げ,ブレトンウッズ体制の流動性のジレンマを克服して国際通貨システムが円滑に機能し,アメリカ人は何らの制約もなくドルを世界中で自由に使える特権を得た。しかし,経常赤字の拡大は貿易摩擦やバブルや金融危機を招く。日本がアジア金融危機を救済するために構想したAMF設立はアメリカによって阻止された。
お抹茶
飼育下における哺乳類,鳥類,爬虫類,両生類の繁殖の様子やそこに至るまでの飼育員の苦労をまとめる。実験,観察の繰り返しだ。発情兆候がわかりづらい動物も多く,ツシマヤマネコでは糞中のホルモンを調べて発情の状態を予測する。親の発情や出産や育児を間近で見ることは,群れで生活するゴリラの繁殖にとってとても重要。ニホンイヌワシは,複数の卵から雛が孵化しても先に生まれた雛が他の雛を攻撃して一羽しか育たないため,孵った雛を数日ごとに巣に戻し,人への刷り込みが生じないような人工育雛と組み合わせる方法で全ての雛を育てる。
お抹茶
どちらかというと大人向けのレシピも載せたエッセイ。家族を育てることから卒業したら,自分を養うために料理を作り,素材と向き合ったりいろいろ思い出したりすることを楽しもう。「炭水化物は嗜好品ですからね」。
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経済学の基礎も交えた地方財政論のテキスト。地方公共団体に景気対策を全面的に任せると,他の地域に政策効果が漏出することから全ての地域がフリーライダーになってしまい,十分に実施されない。国と地方の課税重複がある場合,地方が増税し国の税収が減ると,国が実施する公共サービスの供給が減少する垂直的外部効果も発生する。地方税は受益に応じた負担を求めるのが基本だから,事業税は赤字でも課税される。外部効果が発生するケースでは,国全体から見て過少供給になりがちなので,特定補助金によって供給量を増やせる。
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お抹茶
歴史学の見方を実際の例文を基に解説する。近代歴史学の祖・ランケは,歴史研究は何か特定の目的に奉仕するものではないという態度。歴史家は根拠となる史料を共有して「書いてあること」をまず示してからその真偽を検討する。一国史を古いと切り捨てるのは不十分で,「誰々がこう考えたから」型の政治史は,その人が持つ影響力がどのような地理的なまとまりをもっていたかに規定される。経済史では市場のルールは他の事例にも適用できると考えるが,社会史・民衆史では一定の言葉遣いを共有する人々には一定のルールが存在していたと推定する。
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お抹茶
キャリア警察官・遠野が交渉人になる過程を追う。前半は読者も研修生と一緒に交渉人になるための研修を受けている感じだが,後半には特殊詐欺の捜査本部のメンバーになり頂上作戦に加わる。「店長」を見つけるための追走劇・心理戦にはらはらする。人質全員を助けるために交渉人は捜査陣と犯人の真ん中に立ち,どちらの側にもつかず問題の解決を図る。交渉人は説得しないし,犯人に共感することもなく,真摯に話を聞くだけで多くの犯人が投降する。犯人に嘘をついてはならず,心のない嘘をつく者は必ず責任から逃げる。
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異次元緩和は,人類共通の知恵である財政ファイナンスの禁止を危うくしたと批判。日銀は十年間に積みあがった巨額の財政赤字をほぼ丸ごと呑み込んだ。長く禁じ手とされてきたETFも大量にあるが,金融正常化のために保有国債やETFを中途売却すれば債券価格が急落し,金利が急上昇する恐れがあり,市場に影響しない程度の規模で売却するには何十年もかかる。市場では企業予測とは別に日銀がどの程度株価が下落すればETFの買い入れに踏み切るかを見極め,株式市場の機能が損なわれた。長期の超低金利と大量の資金供給は経済を非効率的にする。
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お抹茶
著者はドイツ語の翻訳者。ドイツのシュトラーレンにある「翻訳者の家」では世界の翻訳者達がほぼ無料で滞在できる。翻訳のノルマが終わればオランダ国境近くまでサイクリング。ゲストルームにも本や事典があり,滞在中に翻訳した作品が出版されればそれも献呈される。本は生き物のように増殖し,翻訳者によるイベントもあって,たくさんの発見がある。オランダ側にある特大パンケーキの店を食べていると,シリアから亡命してきたドイツ語作家ラフィク・シャミの美しい『言葉の色彩と魔法』を思い出すという。
お抹茶
ニューヨーカーのライフスタイルや価値観が伝わってくる。著者がニューヨークに住み始めた30年以上前のローラースケートリングでは,誰の素性も知らないし聞かれなかった。それでも互いの距離感を守って平等で受け入れられたことが,著者がニューヨークで暮らしていこうと思えたきっかけ。マイボトルを携帯するのが普通。仕事も恋愛も生涯現役で,年齢を気にせず自分で決めて自分で選んだ毎日を楽しんで生きている。おいしいグルメや入場無料の日の美術館や博物館のためなら並ぶのも厭まない。
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お抹茶
南仏在住で観光ガイドを務める著者が南仏での暮らしを紹介。写真が美しい。コート・ダジュールで最も有名な村は鷲の巣村のエズで,頂上からの景色だけでなく植物園もおすすめ。南仏の夏では蝉の「歌」を心待ちにし,「蝉が告げる夏への憧れ」がある。著者のヴァカンスは,旅行先でも節約のため自炊したりお金のかからない遊びもしながら,家族とゆっくりと時間を過ごして貴重な思い出を作る時間。フランス人にとって家族と過ごす一番大事なイベントはノエル。アンティーブにあるマルシェは人情味があり新鮮なものばかりでおすすめ。
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お抹茶
日米軍事一体化の過程を追う。2010年頃にできた,陸上自衛隊の地対艦ミサイル部隊を南西諸島に配備するという「南西の壁」構想は,米軍の軍事戦略に飲み込まれ,台湾有事で米軍が優位に戦うための盾に変質した。2021年以降,日本の安全保障政策の最優先課題は,尖閣諸島に対する中国の脅威や北朝鮮の核・ミサイルの脅威から台湾有事への備えにシフトした。米軍と自衛隊は各指揮系統を通じて動く体制であっても,米軍司令官の作戦指揮による一体運用体制に近づいている。核兵器の先制不使用宣言を行い,東アジアの軍縮を進めるべきだと提言。
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お抹茶
各都道府県を訪れ,その土地ならではのおむすびのレシピと作り手を紹介。ただし,県代表というわけではないだろう。噛めば噛むほど旨味が迫ってくる「太さんの海苔(アイザワ水産「厳選」)」で作ったおにぎり。味噌を使ったおむすびが多い。新潟県では大根の味噌漬けを入れたさくら飯,アゴ味噌は石川県,味噌ピーナッツを載せるのは山梨県,砂糖入り豆味噌は愛知県,鉄火味噌は滋賀県,エビ味噌は愛媛県。埼玉県では,赤飯で包んだあんこ入り饅頭のいが饅頭。大阪府では俵型にするのが特徴。長崎県は九州の中でも特に甘い味付けが根付く。
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お抹茶
ネタバレ元警視監が営むジャズバーセブンスにガサ入れがかかり,そこから甘糟・郡原コンビが巻き込まれていく。警視総監やら,プロをも驚かせる歌声のボーカリスト―実はキャリア警察官やら,どうしてこうなったという面々がセブンスに集まる。キャラの濃い登場人物に囲まれて甘糟は苦労しているが,彼がいるからこそ事件は解決に向かう。事件自体に絡繰りがある訳でも怒涛の逮捕劇がある訳ではなく,もう少しひねりがあっても。
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言語感覚が鋭い両者の対談。日本語で独立語のオノマトペが多いのは,自分が受けた印象を正確に伝えたいという要求の現れか。英語にはグルーヴ感があり,平坦な日本語と異なる。「薄め上手」な言葉の例「~的には」に,予算感,ギャラ感が加わった。ふかわ氏は「日本語は繊細だけど頑固だ」と感じていて,「深まる」のは秋だけで,てっぺんの真夏と底の真冬はあっても,真春や真秋はない。「~しかねます」は言葉遣いとしては丁寧だが,乱暴に言われるより圧がある。「『感情むき出しの言葉』は全裸。だから、しかるべき言葉で感情に服を着せる」。
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鉄道でインドを一周する紀行文だが,予定通りにはいかず,日本の常識とは全然違う世界。予約時にクレジットカードOKと書かれていても現金のみという宿は多い。リキシャに勝手に人が乗り込んできて宿や土産物屋へ誘導される。インドでは「相手に悪いからそんな態度とれない」とは一切考えてはいけない。ホームをトイレにしている人もいる。寝台スペースに他の乗客が勝手に荷物を置いたり座ったり,物をこぼしても謝らず放置されるなど,遅延や振動音以外にも気が休まらない。辛くて嫌なことが多くても楽しい旅で,時間が経てば行きたくなる国。
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首都圏直下型大地震にも対応する精鋭揃いの銀座第一消防署。そこに入るための過酷な研修を体力の劣る夏美が乗り越えられるか。訓練中に本物のビル火災が発生し,夏美も出動するが,要救の命を救えるか。「人間は誰でも弱く、脆い。真っ向から炎と戦って、勝てるはずがない」,「体力があるから死なない?馬鹿のなのか?必要なのは冷静な判断力、対応力だ」,「自分の実力をわかっていない消防士は、いつか誰かを殺す」と言う鬼教官の村田。読み進め,気づけば研修最終日になっていた。
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お抹茶
西表島の山中や海岸を歩いた過程を記す。道なき道や水中や茂みの中を歩き,干潮の時には湾を横断する。水牛車が主役の狭い未舗装道路だった西表島では,1970年代に自動車道が開通し,山中を横断する人がいなくなり,山道は消滅した。地図も豊富。
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お抹茶
数学者による,数学教育に関する話題を中心にした随筆集。飛び級制度には賛成だが,極めつけの天才少年少女でも全くものにならなかった例はたくさんあり,大器晩成型もたくさんある。大学卒業時に19~20世紀半ばの数学に辿り着くのがやっとで,卒業論文は非現実的。日本の大学のセミナーで行われる論理展開の訓練はアメリカにはなく,日本特有の優れた教育方法。簡単なことをきちんとわかるように教え,わかることの喜びを経験させることが有益。数学には巨額の研究費はかからないので,好きに研究させて一部でも役に立てば非常に効果がある。
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お抹茶
堀切にある個人豆腐店の家族の物語。初おばあちゃんにとっての息子が五十歳でコロナで亡くなるという災難を乗り越え,嫁と孫の温かい家族で豆腐を売る。家族だけでなく,お客さんも温かい。章ごとに語り手が代わり,八十代,四十代,十代,そして飼い猫・福のそれぞれの年齢の心情がうまく表れている。初が嫁の咲子に店主を譲りたいと言う場面にそれぞれへの愛情が感じられて温かい。この店を継ぎたいというはっきりしたきっかけがなくても,自然と思えるようになる,そんな心の変化が頼もしい。他の小野寺作品より体温が高い。この店に行きたい。
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お抹茶
犯罪心理学の研究成果から特殊詐欺防止を目指す。自分は犯罪に遭わないという楽観的認知傾向が強い人は犯罪に遭いやすいが,脅威アピールで対策を訴求しても効用変容は難しく,ナッジによる介入が注目される。詐欺の電話では,自分事だと動揺してしまいやすく,理性的な判断プロセスよりは他人の支持や行動に盲従するヒューリスティック的なプロセスが発動し,オレオレ詐欺の手口は「いかに他人に相談させないか」のテクニックの進化であると言える。防犯機能や非通知電話拒否設定の固定電話機対策,周囲との会話が望まれる。
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高村正子校長の訃報が届く。先生に縁のある人が彼女と過ごした思い出を振り返る。先生の凛とした温かい人柄がじんわりと伝わってくる。意外と教え子以外が多く出てきて,先生の時とは異なる正子さんの姿が浮かび上がってくる。娘の入学式で正子先生に出会った時,先生は黙って目礼した。教え子にとって小学校の頃は忘れていたり思い出したくないかもしれないからという配慮。退職後に出合った推し仲間に贈った「ありがとう」のうちわにもぐっとくる。どこかの小学校にはいるであろう正子先生。どんな人の背中もそっと押してくれる。会ってみたい。
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お抹茶
韓国の地理教師が韓国の街を紹介する。日本の植民地時代の批判も随所に出てくる。江華島は韓国の地理と歴史を一度に見られる「屋根のない博物館」。四季の景色が美しく,自然もこの上なくきれいな求礼。炭鉱都市だった太白は,夏は涼しく冬は雪を楽しめる観光都市として生まれ変わった。済州には「通りから家の庭先にのびる小道」という意味のオルレがあり,オルレを歩けば済州の人々の暮らしと空間を近くで見られる。
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お抹茶
25か国のレシピを紹介。アメリカ,中国,インドは地方によって複数あり。おそらく本場に近いレシピで,日本では入手しにくい材料もある。粉をメインに作る朝ごはんも国によってバリエーション豊かで,クランペット,バニツァ,ピデ,マナイーシ・ザータル,ロティ,ドーサ,エッグロティなどさまざま。イギリスのシェパーズ・パイを作ったが,羊挽肉が手に入らず合挽で。眺めて味を想像するだけでも楽しい。
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中年棋士の一義が主人公で,令和の天才・源に挑む。主人公以外の登場人物達もいい味を出しているのが特色。天才型とは異なる主人公だが,周りに支えられ,長年の雌伏を経て,己に打ち勝っていく過程に心躍る。夫婦,親子,師弟,先輩・後輩,新旧のライバル,いくつもの関係が一義の棋譜を作っていくように感じる。棋士だけに視える星が鮮烈な光になって盤面やホールに散る。将棋のルールを全く知らなくても問題ない。25歳がピークという厳しい世界を知っている者同士による厳しくも誠実で温かい世界の物語を綴る。
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お抹茶
バスマニアか京都市在住者であればくすぐられるマニアックな本。大正時代に鉄道路線の防衛と培養を兼ねて鉄道会社がバスを運営することが活発化し,バスの縄張りができた。バス事業者は競争相手はお互いではなく自動車だという認識のもと,行先案内板やバス停の共同整備,ダイヤ調整,IC定期券による他会社路線の乗車など連携が進む。観光客も利用可能な自家用有償旅客運送は伊根町のいねタクや南山城村の村タク。ガイド付きツアー体験とも言える和束町のグーチャモ。荷物置き場設置バスも登場。市バスは2024年3月に方向幕をすべてLEDに。
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繋がりのない短編集。後味の悪い話が多く,人間の業の溟い面が現れる。「さざなみ」も人を殺める話だが,筋書きやラストの情景が歌舞伎向きだと感じた。「半分」の草太の寂しげな佇まいと十七歳の危うさ。「妾の子」の結末は明るさが感じられて救われる。
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お抹茶
江戸でよろず相談を商いにする千成屋お吟を主人公に,手代の千次郎と與之助,隠居した元同心・平右衛門が探偵の如く依頼主の困りごとを解決していく。秘め事を抱え苦しむ依頼主の心に寄り添い,頼りがいのあるお吟。「ほたる茶屋」では,離れ離れになった夫と妻,母と子の人情が沁みる。「海霧」に出てくる勇三郎の哀しみが滲み出た横顔,深い危惧の念を湛えた目,こうした表情に彼我の埋め難き宿命の昏さを感じさせる。
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お抹茶
逆張りをする人間とされた著者による論考。「人それぞれ」の相対主義はグローバルでリベラルな社会を生き抜く処世術だが,他者への積極的な理解を放棄し自分と異なる考えや生き方に関心を持たず,政治的に無関心な傍観者になり得る。敵と味方の世界観を絶対化し,自らの主義主張と矛盾しても敵の敵は味方という論理がツイッターの世界では日常的。アンチ・リベラルとしての逆張りは正しさや嘘に関心を持たず,主義主張の正しさで議論する気がない。「傷ついた」といった反論不可能な身体的体験と不都合な真実を暴露するエビデンス主義が争っている。
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お抹茶
戦闘下のガザの状況を伝える。2007年以降,人や物資の移動は厳しく制限され,イスラエル側で働けない人が増え,GDPは激減し,失業率は50%近い。ハマースは武装闘争だけのテロ組織ではなく,二国家共存を土台とする国際社会の価値観に適応すべく,イスラエルの正当性を直接的には認めないものの柔軟性を備えたアクターと言える。東エルサレムでのパレスチナ人の土地や開発区域は限りなく制限され,建築許可証のない家屋はある日突然破壊される。ガザで紛争が発生するとNGOや国連で雇用が発生するが,平和では仕事がないというジレンマ。
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お抹茶
プロの仕事ぶりが垣間見える。失敗談も隠さない。殺人事件で捜査結果ではなく弁護士側の主張をふまえると,殺人事件ではない可能性を考慮した見出しが必要。原典に当たったり,似た漢字に注意したり,単位誤りに計算して気づいたり。「ロシア本土とクリミア」と書くとクリミアはロシア領土ととれる。「テロ,移民・難民の流入などの脅威」,「引っ越し難民」と書くと,難民は脅威や軽い存在だと無意識のうちに刷り込まれる。女王を「じょうおう」と読む人が多い理由は,女房や女御の「にょう」に引きずれたからかと推測する。
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ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2022/09/24(877日経過)
記録初日
2016/01/16(3320日経過)
読んだ本
2246冊(1日平均0.68冊)
読んだページ
584560ページ(1日平均176ページ)
感想・レビュー
2246件(投稿率100.0%)
本棚
0棚
自己紹介

読書は無尽蔵。読んでも読んでも,まだまだ読みたい本があるのですから,贅沢な趣味です。

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