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「・・・ふみ子は、気の合った仲間がいっしょに暮らすというだけではなく、その仲間がいっしょになにかの仕事をするということがたいせつだと考えた。」 「けれど私には一つ、初代さんとちがった考えが合った。それは、たとい私たちが社会に理想を持てないとしても、私たち自身には私たち自身の真の仕事というものがあり得ると考えたことだ。それが成就しようとしまいと私たちの関した(かかわりのある)ことではない。私たちはただこれが真の仕事だと思うことをすればよい。それが、そういう仕事をすることが、私たち自身の真の生活である。」
「私はそれをしたい。それをすることによって、私たちの生活が今ただちに私たちと一緒にある。遠いかなたに理想の目標をおくようなものではない。」p222
弱いものがガスに耐えきれず内側からガラスを割ると、トロッコにこごえる外気が流れこむ。 寒さに耐えきれない乗員たちはガラスを割ったものを罪人としながらも、ようやく今までの秩序を守るだけではこの穴を埋めることもガスを抜くこともできないことを認め、トロッコの修繕に向き合わされる。
手紙には、娘に連れられて初めて音楽会に行き感動したこと、自分は父や母の歌声さえ耳にした覚えはないが、お兄さんはどうかとあった。佐代子の記憶では、父は謹厳実直、無口であり唄をうたうような性格ではない。「こうやのねずみ かいくうて〜」とはじまるその唄は、父が子どもをあやすときだけ歌っていたものか、全く佐代子の記憶には残っていない。筆者は、単純素朴なその子どもの遊び唄は今も私の心の中で歌い続けている、生涯忘れることはないだろう、父の遺したたった一つの唄、この佐代子への手紙の返事を思いっきり優しく書こうと思う。
亡くなる3ヶ月前、筆者は悪性リンパ腫の疑いがあるとのことで、岡山の医療センターに検査入院をすすめられる。筆者は「私はこの部屋を出たくないんだ」「この時を大切にするんだ」「自分を表すんだ」と言う。長時間かけて説得され、いったんは入院したものの、また愛生園の自分の部屋に帰ってくる。そして愛生園に帰っても病棟に入ろうとしない。「僕はここで死ぬ。松雄君、僕は弱いよ。これが僕の総てだ」2009年10月5日、筆者は息をひきとる。
自らの奥深くの悲しみを悲しむことができなかった火山は、氷の槍に凝縮された悲しみを与えられ、自身の悲しみを悲しむことができた。火山が流す涙はこれまで凍っていた彼の時間。凍っていた時間が溶け、世界と一体となることで、世界はその全体性を回復し、噴火前よりも広がりある躍動性を得た。しかしこの回復がおこるまでどれだけ生きものたちが世代交代を繰り返さなければならなかったか。個々のちいさな生きものの時間と世界の回復に必要な時間はまるで釣り合わない。ちいさな個にとっては回復もまた遥かな他者なのだ。
絵を変えて復刊されているが、田中さんの絵で読んでほしい。
「それが通じない。それで困りきっているといった感じ。俺が、水俣病患者という集団の一員ではなくて「緒方正人」という個に戻ってしまっていたものだから、相手は役人面をすることもできなくて、自分の個としての顔ってどんなだったかな、と探しているような感じでした。その後十年経って、時々あの役人たちと出会うことがあるんですが、お互いどこか認めあっているところがあるんですよね。妙なものだけど。 」
・被害者であり存在として引き取るものとしての二重性 共苦→ 「毒をもられた人々ではなく、毒を引き取った人々と捉えなおしたい。」 「そして、共生だけでは綺麗すぎる。共苦がある。人の心性は共苦を排除していないか。共生共苦という考え方」
社会環境を「良く」しようとするとき思いをもった人はいつでもそういう目にあいながらそれでもふみこたえたのだろう。耳触りのいい範囲で、聞いた人たちが自分が悪者であるかのように感じない範囲で正義は述べられるべきだ、それが「現実的」な 状況改善だと、きっと当時も言われたことだろうけれど。
ーー中央集権的な大学組織に入って、その中で業績を積み上げ、高い格付けを得てテニュアをとって、それから腰を据えて自分のやりたい研究をするというスタイルが、もう無理になってきているんじゃないかな。個人の資格でいろんな人たちと共同作業して、発信してゆく。本来アカデミアの研究の基本は共同研究であるはずなんだけれど、今は違うよね。成果を査定に使うから、個人についてどれくらい業績があるかはうるさく調べるけれど、その人がいることがある種の「触媒」になって、集団的な化学変化が起きたということについては p26→
→そもそも査定する「ものさし」がない。だから、学術集団のパフォーマンスが低下するのは当然なんだよ。p26 ーーこれまでアカデミアが果たしていた機能を誰かがどこかで継承しなければいけないp26
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